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どこまでも青い夏至のスウェーデンへ

一昨年の夏至の頃、留学先の学校が終わり、友人や先生との別れの寂しさを抱えながら、スウェーデンのヨーテボリへと向かうためにコペンハーゲン中央駅にいた。

コペンハーゲンから約4時間ほど、電車をいくつか乗り継いで滞在先のアパートメントに向かう。隣の国に行くのに、飛行機でも、船でもなく、電車で行けるのだ。島国の日本人からすると少し不思議かもしれない。

学校を終え、ひとりになり、旅を始める。楽しみにしていたはずなのに、全然乗り気じゃなかった。だって、みんなが居ないのだ。

そんな悲しみを抱えて、電車に乗り込み、なんとか落ち着かせようとしたけれど、外から目に飛び込んでくる美しい夏の北欧の景色を見たら、その美しさで余計に悲しくなってこっそり泣いてしまった。青すぎるほど青い空と海、爽やかな風に揺れる木々。

美しいものは、ときどき悲しい。

いくつか電車を乗り換えるうち、どんどんと景色が変わっていった。知らない街で、知らない人たちと電車に揺られる。またわたしは、ひとりで知らない場所に来たんだな、と思った。

その日はなぜか、誘い合わせたように軽やかな水色の花柄ワンピースを着た人たちが、同じ電車に何人も乗っていた。どこか高揚感ががあって、夏至らしいな、と思った。

最後の乗り換えをするため、電車を降りバス停に向かう。周りを見渡すと、夏至祭を控えた街はなんだかそわそわしたような雰囲気だった。

バスが住宅街のエリアに入り、マップが示したバス停で無事に降りる。エアコンがないじめっとした車内から外に出て感じる空気の爽やかさにうっとりした。屋外が暑くて屋内が涼しい日本とはまるで逆みたいだった。

もうデンマークを出発してからずいぶんと時間が経ったはずなのに、空はどこまでも青く、まだまだ夜は来そうにない。夢にまでみたスウェーデンで過ごす夏至。これからの数日に胸が膨らませながら、滞在先のアパートメントへと歩いた。

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