見出し画像

セレッソ大阪・山口蛍選手の移籍に寄せて(長文)

山口蛍が、セレッソ大阪から去る。
幼い頃から過ごし、誰よりも愛したクラブに、大きなNOを突きつけて。

吐き出さないとやってられなかった。自分が発散するため、思うところをまとめておきます。古い記憶も掘り返しながら。思い違いだったらごめんね。でも割と強い確信を持って以下に記す。

***

セレッソ出身、おしゃれ好き、ちゃらい、女子校…世間は単純一律な人物像をイメージし、そこに本人の発言やエピソードを、理解に都合がいいところだけをつまみ食いして、虚像を完成させる。よそ者が語る蛍像は、それにしたって必要以上に軟弱で、バカの嘲笑は拍車をかけていくから、ずっと歯がゆくて仕方がなかった。山口蛍は正直で潔癖で、うまく立ち回ることを是とせず、損をしやすい生き方だと思う。プラス、長く見てきた人は分かるけど、ある意味ファザコン気質というか…笑、恩を感じ尊敬した人にウェットで、情の要素が判断における優先順位の高い人。ここでは「彼がいるセレッソ」とともに歩んできたサポーターとして、世間の悪意への反論を織り交ぜつつ、彼の声にならない叫びを受け取ったつもりで、文章という形で残しておきたい。

2016年・セレッソ復帰~J1昇格

2015年J2初年度、1年での昇格を目指し、キャプテンとしてチームを率いる。前年度、ブラジルW杯に23歳で選出されたことを考えると、普通はここですぐ海外へ行くべきだったのに、J2に残ってくれたことに申し訳なさが先にたつ。この年チームは惜しくも昇格を逃し、蛍はオフに、当時清武が在籍するドイツ1部ハノーファーへ。彼を引き止めるものはない。成功を願い送り出す。日本代表に招集され続けるものの、移籍先クラブでは出場機会を得られず(ちなみに清武は移籍)。そんな折、W杯2次予選シリア戦、蛍は顔に大怪我を負う。術後の姿は今思い出しても背筋が凍る。傷痕が残らなくて本当によかった。その後本人の希望もあり、セレッソへ復帰。蛍は怪我が復帰判断に影響したのではないと語っていたけど、私としてはあの傷を見てしまったら、もう良いから戻っておいでよという気持ちに。口が悪い人は、彼が堪え性なく逃げ帰ってきたなどと嘲る。出戻った柿谷、杉本に続く3人目だったので余計に。ただそれまでクラブが彼に、キャリアの上でも無理をさせた経緯を考えると、他人がとやかく言うものではないし、古巣に受け入れる力があって良かったと今でも思う。スポンサーが払った違約金はかなりのものだったと聞く。批判は当然だと真っ向から受け入れながら、律儀な蛍は語る。「これからのサッカー人生、クラブに必要とされる限りできるだけ長くセレッソでプレーをして、必ず結果を出して恩返しをします」と。

山口蛍オフィシャルブログ|セレッソに復帰します|2016/6/20
http://blog.lirionet.jp/hotaru6/2016/06/post-7134.html

この年のセレッソは、J2反則級の戦力を揃えながらも大苦戦。PO圏に滑り込み、かろうじて涙の昇格。自分たちが落としたチームを、ほぼ同じメンバーで上げた。落とした時の主力が方々から帰り、帰巣本能と揶揄されるけどもこんなチームは他にない。「8番が居て、困った時に下部組織出身選手が戻り力を発揮する…ドラマかよ…これがセレッソ・アイデンティティ」と、その時は私も思ったし震えた。実際は、あくまでスタートラインに戻ったにすぎないのだけど。

今思うと、ここで勘違いの種が生まれていた、あるいは強固なものになりすぎたのかもしれない。昇格させたのは、下部出身選手の力だけではなく、多くの外部からの力があってこそなのに。そこを、クラブと一部選手は曲解したんだと思う。

2017年・ユン監督就任~2冠

大熊さんGM体制。クラブOBの尹晶煥を監督として招聘。清武電撃復帰。クラブは「若手を海外に出し、それを戻すサイクルに入った」と言う。この年の主将は引き続き柿谷。蛍は当初「クラブのエースナンバー8番・9番を、黒子として支えるのが役割」と語る。ユン監督はチームに守備の基本のキを叩き込み、精神面では規律と、全員で粘り強く戦うことの大切さと、勝利こそが楽しさだとする価値観を植えつけようとする。少なくとも表からみた限りでは。リーグは夏場失速するが、蛍は忠実に監督のサッカーを遂行し、「圧倒的な力がないからどこかが歪むと全て崩れる。勝つことを第一し、チームとしてよりどころを作りたい」と語る。発言内容は、ユン監督に呼応したもの。

この年は、ルヴァン組といわれる控え選手たちの活躍と一体感が光った。彼らに押されるように、チームは最高の結果を生む。カップ戦で2冠を達成するが、決勝のピッチに立ったのはリーグ戦の主力。監督は相当熟考し、実力を優先しメンバーを選んだという。ルヴァン組は絶対悔しかったはず。送り出された主力組は当然彼らに何度も感謝を述べ、その功績を称えていたし、チームが勝利を最優先とするならそれは健全な姿だとみんな理解し、サポーターも彼らが作り上げた一体感に涙した。

完全に想像でしかないけど、多分蛍はユン監督に、人として心酔したんだと思う。ポジションも同じで経歴も似ている。筋が通った規律は、蛍の性格的に心地良いもので、おまけにそれまで誰も成しえなかった2冠を、1年目で達成してしまった。だから、言うこともどんどん似ていく。憧れと尊敬は、ここまで何度も見てきた蛍が惹かれるパターン。

ここは蛍と関係ない話で申し訳ないが、なぜかこの栄光の場所に立っても、どうもスッキリしないことを言う選手が…。ずっと不満げだったんだよねサイドハーフ起用と途中交代が…プレー幅を広げるチャンスだったのに。エースナンバー背負う矜持もあるし、結果に興奮しているから仕方ないと思っていた。でも数ヵ月後、『12th(セレッソ公式会報)』と『サッカーキング桜花爛漫』に掲載された「初タイトルはリーグ戦が良かった」「2冠は自分がとったタイトルではない」「昇格POが自分にとっては初タイトル」という8番の発言に、心底青ざめる。これをそのまま表に出すクラブが、第一に狂っているわけだけど。誰かその考えを改めさせてくれ、チームで力のある人って誰?近しいベテランは?サッカー以外の周囲は?誰か、誰か。何度も願った。彼は繰り返す。「僕たち下部組織出身の選手が引っ張っていく」。その気持ちは悪くない。でもそれだけでは栄光を掴めないと分かったはずなのに。セレッソ大阪の成長が、自分の幸せとはならないの?何を持って楽しいとするの?なんで8番背負ってんの?真意を教えてほしい。怒る気持ちよりも前に、ただその理由を知りたい。個人的に、不信の始まり。

2018年・ユン監督2年目~クラブの自滅

主将は蛍に交代。副将は清武と秋山。主将・蛍と聞くと、サポーターは2014降格年を思い出す。彼は当時、背中で語れる主将でありたいと言った。でも直接言葉にしないと分からないこともあるよと我々は危惧した。2度目の就任では、杞憂だったと分かる。実績を伴って言葉と行動は重みを増し、外に向かって発信するようになっていた。潔癖で、実直すぎるところがあって、不器用で損をすることが多く、物事の道理を充分理解しているけど、逃げの表現とバランスがうまくないんだと思う。でも発言を拾い集めたら、誰よりも雄弁で核心をついているのが分かる。悲しいかな、シーズンが終わった今振り返ると、主将としては力及ばずという結果を招いてしまった。「主将として」というのは意思統一の部分を言っている。そりゃそうだ、結果出した監督でもコントロールできてないんだから。強化部に、元祖8番置いても意味ないんだから。

2018はW杯イヤーにつき前例がないレベルでの超過密日程。クラブはポゼッションを高めるオーダーを(の割に、補強した選手が真逆のタイプとはどういうこと)。目標はタイトル獲得(…てそんなん最初から言うてた?)。私にはチームの目標がファジーなまま、スタートしたシーズンに見えた。ACL出場、主力の相次ぐ怪我、FW陣不発。要因はいくらでもあるけど、前年度より低迷。しゃあない、2017年がよすぎた。調子が上がりきらないなかでも中位をキープ。これを続けていくしかない。蓋を開けると、勝ち点30のせても降格するチームがあるシーズンにおいて、前半の貯金はありがたかった(粘った選手達に、このオフは出自関係なく正当な評価がなされることを願う)。ACLはサブメンバー中心で挑む。彼らも頑張ってくれたけど、賭けに少しずつ負けて、グループリーグ突破ならず。サブ組が盛り上げる前年度の再現とはならない。そこでリーグ組が奮起すればよかったけど、失点続くし、決定機ふかすし…。おまけに監督への不満をあからさまにし続ける8番は居るしで、なんやこれ。見て見ぬふりをする周囲。ユンさんもオトナの対応。今思えば拗ねた態度を見せつけたのは、注目を集めてサポを味方にしようとしたのかと勘ぐってしまう。私はこのシーズンも、ホーム&アウェイほぼ全試合現地観戦だったけど、それは推し選手の一人が、実力差でスタメン落ちしたし、年齢もベテラン域だし今年ラストかもと覚悟していたから。こうやって真っ当な競争の中で研鑽する選手たちを応援しているのに、定期的に8番の幼稚な態度を見させられた気持ち、察してくれよ。理由があるにしても、やり方が悪手すぎるでしょうよ。それでもチームは、ドロー沼と言われながらも、悪くない順位をキープ。

ここで蛍はセレッソ大阪史上初、2度のW杯代表に選出される(※後日修正  森島さん2回選出されてたんですね、失礼しました!)。繰り返し言ってきたけど、ここはクラブとして、待遇も金銭面もあらゆる形で最大限に評価し、サポートすべきだった。国内の選手で2回出場よ?他のチームを見てもそう居ない。偉大なチームのレジェンド。ただW杯後、彼自身は代表に対して目標を失ったか、燃え尽きたように見えた。帰国後は発言の端々から、この先はクラブでのプレーに専念していくのだと受け取れた。休みもせずチームのため働く。一方で、チームの目標は依然曖昧なまま。目標が曖昧なら、とりあえず選手たちは、目の前の試合に勝つのが目標としか言えない。何のためにセレッソのもとで戦うの?蛍は、勝つことに第一のプライオリティを置けと、何度も訴える。しかしこれだけ尽くし、クラブで最も実績ある立場を持ってしてもなお、声は届かない。

再びの、蛍とは関係ない個人的な批判。W杯期間中、柿谷ガンバ大阪移籍騒動2回目(1回目は2017年オフ)。チームが上昇しない、ACL突破ならずの結果、ユン監督解任の噂が流れる。クラブは柿谷慰留。擁護勢には耳が痛い話だろうけど、監督に従わない選手は即干す、即切るのが当たり前。たとえ監督に問題があったとしても、連れてきたのはフロントだから。さすがに監督と柿谷を天秤にかけたとは言わないけど、柿谷を出さない判断をしたクラブはアマチュアと謗られても仕方ないと思う。その時はまだまだ上位を狙える位置にいたし、明らかな補強ポイントだったのに、FW補強をせず。前年2冠獲得しても、スタジアム募金が集まらなかったから?やっぱり8番が輝かないとダメって? 万一それが理由なら、スポンサー意向関係なく、クラブ主導でこの判断をしたんでしょう。セレッソ大阪って何なんだ。全権あるはずの監督に、何試合も堂々と反発し続けた選手を、切るどころか特別扱いする。8番に意味づけして、それに乗っかって商いをするなんて、駆け出しと勢いだけのチームがやることだ。柿谷からは、最後の最後まで監督に感謝の言葉すらなかった。こじれきっているから当然か。しかしそれでまた近い未来、フロントに入るんでしょ、知らんけど。もはや8番個人の問題だけじゃない、見て見ぬふりした方が、力を持ち続ける組織。地獄かよ。憧れのエースナンバーを持つチーム、スターシステムは魅力があると思う。でも今の実績を見ず、象徴というだけで評価されたら、他の働きアリたちは嫌になる。過剰な8番商法から脱却してくれよ。このままだと、いずれまた繰り返す。

W杯中断期間後、蛍は「改めて競争が始まる。刺激し合いながら、チームがいい方向に進むように」と語る。一貫して競争を受け入れているし、自分であっても特別扱いを求めず、チームファーストの言動はぶれない。ユン監督の采配・選手選考は、この頃確かに疑問なところがあったし、チームの底上げが出来なかったことも響き(でも2チーム分の人員を確保しといて、若手の底上げは無理だよね)、カップ戦を落とし、リーグ戦も乗り切れない。この展開を見て、「クラブとして次年度の上積みが見込めない」と、強化部がプロの目で見て契約満了を判断したなら仕方ないし、そういう世界だからと理解できる。実際、内容の伴わない酷い負け方もしている。ユンさんを続投しないクラブの判断に口出しはしない。しかし傍目には、クラブが監督をしっかりサポートした上での結論には到底見えない。まあそれは一サポの意見だとして、それなら誰の目にも明らかに、納得できていない選手が多い事実はどう説明するの。ねえ、こんな扱いするなら、何のためにOB監督にこだわったの?OBの未来がこれかと現役も疑心暗鬼になるんじゃないの?OBといっても外様だから? やることがチグハグすぎる。

リーグも架橋に差し掛かる秋口。ユン監督満了報道。もっと前から満了は決まっていたと思う。蛍に限らず、他の選手たちは口を揃えて、ユンさんへの厚い感謝と植えつけてくれたものの大切さを語る(インタビューは主力に集中するから、他の選手の声はわからないけど。少なくとも試合に出ていたメンバーは。書き出したらきりがない)。感謝だけではなく「喧嘩もあったけど、それが普通」と付け足して。また「出場した選手たちが不甲斐なかったから(監督を守れなかった)」とこれも同じことを言う。働きの大きさに見合わない待遇でも、クラブ愛という情の部分で縛ろうとしてきたのに、情の部分で疑問符がつけば、一気にぐらつく。不信としては充分だと思う。自分のクラブ不信を、選手にのせるなという意見もあるでしょう。ただ、どう読み取っても、蛍に関してはユンさんに関するクラブの判断に納得がいっていない。

2018年J1・33節。セレッソ大阪ホーム最終戦。選手を代表してキャプテンが最後の挨拶。私たちはこれまで、こんな風に、涙で言葉が詰まる蛍を見たことがない。ショックだった。

「(残り1試合ですが)2年間、尹さんと積み上げてきたサッカーをもう一度みんなで思い出して、しっかり勝利で締めくくれるように頑張ります」

2018シーズンホーム最終戦セレモニー|キャプテン山口蛍選手、尹晶煥監督がサポーターへ挨拶
https://youtu.be/CSecUCtO-00

続くシーズン最終節、アウェイの試合は勝利で飾る。彼らが「ユン・セレッソの集大成としたい」と語った言葉通りの内容で。監督の続投がないと分かって以来、選手たちだけではなく、おそらくインタビュー質問者ですら、みんなずっと言いたいことを含んで、含んで、遠まわしに伝えてきた。それでも、おそらくクラブには響かない。

***

2018年オフ、クラブの強い慰留にも関わらず、山口蛍はヴィッセル神戸への移籍を決める。

必要とされる限りは、セレッソ大阪に尽くすと語った男が、だ。

私には、彼を国内移籍に踏み切らせる隙を、クラブ自ら作ったようにしか見えない。慕った監督は去る、おそらく守れなかったという自責の念。クラブは彼の地雷を踏んでしまった。選手としても、目標は一応達成した、この先もっと良くしようにも、自分の声は届かず無力で、おまけにサッカー人生をかけて尽くし、愛したクラブは、今や何を目指す何者なのか分からない。圧倒的無力感と脱力。緊張の糸も切れる。2019年は新しい監督のもと一から競争が始まるけれど、本当にフラットなのか、拭えぬ猜疑心。もちろんヴィッセルのオファーは魅力的で、移籍金も発生するし年俸も倍になるらしい。フロントはマネーゲームには勝てないと言うから、事情を知らない人はおそらくこう結論づけるだろう、蛍は金で動いた、銀河系軍団とのサッカーは魅力的……。間違いない、心動かされる要素は多い。ちょうど環境を変えたいと思うタイミングでもある。ただ蛍をずっと見てきたサポーターとしては、今このタイミングで、その理由だけで動かされたとは思えない。この決断を下した蛍に、精神面でよほどのことが起こったと察するし、そうなってしまった傷心のほどを想像すると、息苦しい。クラブ功労者を、根無し草にしてしまった。山口蛍を、こんな形で失ってはいけなかった。

清武獲得時、クラブは「若手を海外に出し、それを戻すサイクルに入った」と語った。そこから2年。質的にも精神的にも誇るべきクラブの屋台骨に成長した‘ハナサカクラブ’の一期生が、自ら去っていくこの現状はどうだフロント。形としては、セレッソ大阪のクラブビジョンに合わないのは蛍のほうで、だから出ていったとなる。それで終わる。あまりにきつい。蛍は何度も訴えていた。競争は苦しいけど、その分勝利につながった時が一番楽しくてやりがいがある。勝利を第一とし、平等に競い合ってチーム内を循環させることがクラブとしての在り方で、過去の実績ではなく、今こそが大事だと。ならば、クラブファーストの考えはその上で成り立つもので、セレッソ大阪にはそうであってくれ、これからは人に依存しない、クラブ・アイデンティティを構築しようということじゃないのか。世代交代はいずれ来る道、それは理解している。しかし世代がかわったとして、クラブの体質がこのままであれば、いずれ同じ道をたどる。だって、今と、さらに少し見据えた先の勝利を第一にしない人たちが、今のフロントであり、また将来のフロントを約束されているんだから。そんなんと一緒に仕事できる?フロントが掲げるクラブ愛ってなんやねん。いい加減にしてくれ。

蛍が、自分の家と信じて疑わなかったクラブは、長く問題の火種を抱えていて、それが一気に表面化した。それを正そうとしてくれていたのに、クラブは判断を誤った。君が理想としたクラブの形は、間違ってないしプロクラブとして健全だ。この移籍は、もしかすると自身の去就を賭けてクラブに残した言葉なのかも、とすら思う。なんて不器用なんだろう。このオフ期間、セレッソはJ1上位レベルの質的優位選手を相当数手放し、クラブ愛という砂糖菓子みたいなものも溶けかけている。所属期間の長短関わらず、今年残ってくれる選手たちも、顛末を見てどう思ったか想像するとしんどい。私も選手たちに愛着があるし、彼らがクラブのため戦う限りは心から応援するけど、正直クラブ本体については、すぐに、はいそうですかとはならない。少し時間をくれ。蛍の移籍を重く受け止めて、彼に限らず他の選手たちが訴えてきたことを直視して、残る選手、新たに来る選手、未来を担う若い世代のためにも、情を勘違いした歪みだらけのクソ体質を悔い改めて、誰に対しても平等で真っ当なプロクラブに生まれ変わることを、切に願う。

追記。アマチュア戦術クラスタが涌いて出て、「山口蛍の使い方」を語るのを見るたび、ぶん殴りたくなる。齧った知識ごときで、それで飯食ってないのに偉そうに。口泡飛ばして語られる選手論は、正誤に関わらず権威の後ろ盾を下層に与え、寄って集って人ひとりを簡単に殺す。私たちが愛し、ともに歩んだ大切な選手を、「使い方」などと言って勝手に駒扱いして、汚い手で触るな。

個人的には、もし選手を攻撃の人と守備の人で二分するのなら、蛍は間違いなく攻撃の選手だと思う。本人は守備の人だと思いこんでいるけれど、型にはめて自分の可能性を狭めないでほしい。まだまだ手元で見たい選手に、こんな形で去られる口惜しさ、つらすぎる。

これまで本当にありがとう蛍。感謝の言葉が尽きない。相当の覚悟で出ていく。今度こそ戻ることはないだろう。コメントからは決別の意志を強く感じる。ただセレッソ大阪が、正しい道を歩こうとする日が来たなら、あるいは見かねて手を差し伸べる情が残っているのなら、願わくは戻ってきてほしい。それは選手としてでなくても。君が理想とし、実現しようとしたクラブのあり方こそ、道理にかなって、正当で、美しい。セレッソ・アイデンティティというものが本当にあるならば、ここで外に出たとしても、君はそれをいつまでも失うことはないと信じたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?