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縄文ファンとして考古館への提言

僕は普段から考古館巡りを楽しむ市井の縄文ファンです。縄文ZINEという雑誌を作り各地で取材をし、考古館の企画のお手伝いもたまにやっていたり仕事でも関わることもあるので、ファンを逸脱している部分もたしかにあるけれど、そのスタンスは縄文ファンでいたいと思っています。

考古館巡りーー日本全国には数限りない考古館や郷土資料館があり、この楽しみは多分尽きることはないだろうと思っています。しかし、こんなことも思う。
いつ行っても考古館は空いていて、貴重な考古資料はいつだって独占状態。ツイッターに「〇〇考古館にヤバい土器あったぞ」なんてつぶやいて、その流れでちょっと気になって「〇〇考古館」でサーチしてみると1年に1回くらい誰かがつぶやいているのみ…。
これは一例で、もっとちゃんと人が訪れている考古館はたくさんあるのを前提に、そんな考古館に行くたびに、このジャンルヤバいなと非常に大きな危機感を感じたりもしています。

「文化財は保護が第一」、人気に左右されるモノではない。のだということはものすごく理解しているつもりなのですが、社会があきらかに「収益=えらい」、に偏っていく様子を見れば、人の訪れないジャンルは文化財と言えども必要ないと切り捨てる人が出てくるのは火を見るよりあきらかで、その時にちゃんと擁護してくれる人がいるかどうかもまたそのジャンルの人気によってかなり変わってくるのではないでしょうか。

昨年のちょっとした盛り上がりで「縄文」のイメージは大きく(良い方向に)変わりました。(下のリンク「タピオカがライバルだと思っていた去年の夏の縄文」)少なくとも誰かの「気になる存在になった」と僕らは思っています。しかしまだ考古館にそれほど多くの人が訪れているわけではありません。

前段が長くなりました。
どんなに小さな考古館でも行けば必ず発見があって、僕たち縄文ファンはいつも考古館に感謝していて、そんな一ファンが提言なんてことは大変に大それた話で、「勝手なこと言いやがって」、「そんなことはわかってるんだよ」と思うかもしれないのですが、せっかく「気になる存在になった」縄文時代。どうせなら相思相愛的に、近くの、遠くの考古館にまで実際に訪れようとする人たちに両手を広げるため。ひとつでも検討してもらえたら本当にうれしいですし、感謝です。

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1・写真撮影を許可してほしい


最近は撮影禁止の考古館はだいぶ減ってきましたし、世界的にもそのような流れになっています。撮影を禁止されている考古館・博物館様、この件ぜひ検討してください。
今回の提言をまとめるために何人かの縄文ファンに話を聞きましたが、全員がこのことにふれていました。文化財は公共の財産。皆で楽しめることが理想です。それらを阻害しない限りであれば出来るだけの撮影の許可をぜひご検討ください。
縄文土器の著作権はすでに切れていて、撮影禁止の大義名分は所有者の意向のみとなるはずですが、寄託資料や借用資料に関してもぜひ交渉をお願いできれば。それでも撮影許可がかなわないのであれば、一律ではなく不可のものと可のものをわかるようにして下さい。


2・写真のSNS投稿を許可してほしい


1とも関連しますが、こちらもぜひご検討ください。もしかしたらルールにすらなっていない可能性もありますが10年前ならいざ知らず、SNS投稿は決して特別なことではなく、どこかに行く「目的」の一つにもなっています。多くの人が、見る。写真に撮る。SNSに投稿する。それらをセットで楽しみにし、そのために出かけたりしています。
それどころか、もし、館に人が来てほしいと考えているのであれば、SNS投稿はメリットしかありません。来館者の意見も吸い上げられるし、勝手に拡散・広報してくれるんですから。
館の意向にそぐわない形での露出もあるでしょう。その時はぜひ「文化財は公共の財産」という大前提を思い出してぐっとこらえていただけたら…。


3・考古館でもSNSを活用してほしい


SNSでもう一つ、できれば各考古館でもSNSを活用してもらいたい。もちろんホームページを充実してほしいのはその通りですが、情報の出し方や共有に、ぜひSNSを活用してください。
通常の休館日、開館時間、臨時休館の情報に、企画展の情報。ここに行ったらこれが見れるんだという「推し」の写真と解説。近くの温泉の情報に、食事処の情報。実はこれらの情報がなかなか探し出すのが難しい場合がけっこうあります。行ってみてしかわからない臨時休業は正直怒りを覚えますが、ここに行けばこれが見れるよという「目的」をぜひ告知してください。SNSは予算がなくてもできる広報ツールです。ご活用ください。


4・開館時間をのばしてほしい


考古館の開館時間は早い所は、ほぼ10時(早い所では9時)から17時(早い所では16時)。考古館巡りをする場合はいくつかをはしごして観に行くことが多いのですが、この開館時間が大きなネックになります。もし16時に閉まる館であれば15時には入っておかないと充分に見ることはできないことになります。人の行動時間は人それぞれで、この閉館時間は旅行者にとっても地元の方にとってもなかなかハードルが高い。いや、狭い。
こちらも勤務の形態やもろもろ難しいことはあるのは重々承知していて、こういうルールを変えることの困難さは並大抵のことでは無いと思いますが、図書館並みとはいいません。たとえば休日の閉館時間をもう1時間だけ長く開けてもらえたら利用者としては本当に助かります。


5・土器の展示キャプションに型式名を


型式名を載せてもどうせわからないでしょ、と言わず、ぜひ明記してほしい。それもざっくりではなくできる範囲で細かく(大木式だけではなく、「大木7a」まで書いておいてほしい)。モノと名前がつながることは、わからないなりに理解の助けになるはずで、それがわかる楽しさが縄文の楽しさの一つでもあります。わかりやすくと目線を下げることも重要だと思いますが、型式名の明記もわかりやすさにつながり、ファンを育てます。これは長い目で見て本当に重要なことです。ぜひご検討ください。
実際問題判断の難しい土器は多いと思いますが…よろしくお願いします!



他にも「常設展もたまには展示替えをしてほしい件」、「企画展のタイトルがいつも無難すぎて記憶に残らない件」とか、「カフェとは言わない、せめて自動販売機がほしい件」とか、「暗くて写真が撮りづらい件」、「ガラスの反射がすごすぎる件」とか、「おさわりコーナーがあるといい件」とか、「免許無し夫たちのためのアクセス情報もほしい件」、「近くの訪れることのできる遺跡の情報もほしい件」、「文化圏が違う地域なのにいろんなところに火焔型と遮光器土偶を登場させるのはやめてほしい件」などなどいろいろ言いたいことはありますが、今回は縄文ZINE編集部の内部や周辺の縄文ファンにも話を聞き、本当に重要だと思うことのみをこのような提言にまとめました。
きっと様々な立場と意見があり、今のままでいいんだという人も、別のアプローチで同じことを考えている人もいると思っています。全部やってるよという考古館もあると思います。考古館に人が来ない理由はもう一つ包括的な大きな問題(その話はまた今度)があるので、これらの提言を採用していただいても即効性はないかもしれません。ただ、この提言は考古館巡りをしながら、いつも思っていたことで、訪れる人、調べる人、縄文が気になっている人たちにとって「確実に有益」で、「縄文」というものが少しだけ僕たち縄文ファンに近寄ってくれること。それだけははっきりと約束できます。

もしこの提言を読んで一つでも採用していただいた考古館の方、ぜひツイッターや各種SNSでお知らせください。こちらでも告知に協力します!
2019・9・12・縄文ZINE編集部
@jomonzine



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