露出狂の気持ちを片方のすね毛を剃ることで疑似体感する話

とある日、わたしは思い付いた。

「すね毛を片方剃ったらどうなるんだろうか…」

思い立ったが吉日と珍しく行動力を発揮した私はその日の夜、風呂場にてカミソリを手に取った。

どうということもない、ただ妙てけれんな両足が出来上がっただけである。
しかしここで、私にふと邪な知的好奇心がふつふつと沸き上がっていた

「これで外出してみようかな…」

十日ほどたった今からしたら単なる狂気の沙汰としか言い様がないが、風呂の中でそう思った私は期待に胸を躍らせて床に入った。

翌日
私は駅前の本屋まで歩いていくことにした。無論七分丈のズボンである。
少しばかり注力して見れば明らかにおかしい私のすねが眩しくきらめき、私は駅にたどり着いた。
幸か不幸か、人々の往来はそこそこだった。
少し立ち読み等をしながら目当ての新刊を探していると、とあることに気付いた。

「露出狂ってこんな気分なんだろうな」

足をさらけ出して歩き、人々の目線がこちらを見るたびにすねが気になる。
「店員さんはカウンターにいるから見えないか」
「あのカップル、こちらのすねに気付いているんじゃないか」
と常にドキドキしながら私は新刊を買い、家に帰った

すね毛を片方剃ったスタイルという何かはわからないが恐ろしく何らかの罪に問われそうな格好で外に出るスリル、人の目を気にしながら歩く感覚。
これは凄い。露出狂の人の更正プログラムとしての趣味に組み込むべきではないか。

そうして私は1日の外出で多大な収穫を得たのである

後日
私は再度駅前の本屋まで外出することになった
しかし、まだ片方のすね毛が生えていない。あのチャレンジングな外出はしばらく控えようと思っていたので、私は困り果てた。
そこで、私は夏物の長ズボンを棚から出し、それを履いて出掛けることにした。

※再現された服装

これで安心である。私は本屋に行き、新刊を買って帰った

しかし、私はこの外出にも何やら妖しいものを感じずにはいれなかった
この感覚はなんだろう、見られる可能性はほぼ無いとはいえ、私の長ズボン一枚したにはモノトーンのすねが隠れているのだ

しばし思考を巡らせた後、私はひとつの結論に至った。

これはスーツの下に亀甲縛りを着込むサラリーマンと同様の心理ではないか。

なんということだろう。「すね毛を片方だけ剃っている」という事実はこうまで私を狂わせるのか。

終わりに

私は今回、片方のすね毛を剃ることによって大きな経験を得たと信じている。
休日に、平日に、バレても「なんやこいつ」で済まされるようなリスクでこうまでスリリングな体験が出来ることというのは他に無いのではなかろうか。
ぜひとも興味が湧いた時はやって欲しい。

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