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自宅用(DTM用)のモニタースピーカーの選び方とおすすめ

自宅でDAWなど使って音楽を作ったり録音をする場合には、音質が比較的フラットで、細かい音まで聞き取れるモニタースピーカーがあると便利です。

「自分はヘッドホンしか使わないからスピーカーはいらない」という人も増えてきていますがスピーカーとヘッドホンでは把握できる音は違っていて、ヘッドホンだけでミックス作業を行うのは難易度が高いです。

また耳への負担やストレスを考えても、スピーカーはメリットが大きいです。

そこで自宅でDTM用として使えるモニタースピーカーの選び方の基準と、おすすめのスピーカーをいくつか紹介したいと思います。


◆モニタースピーカーを選ぶポイント


◇スピーカーのサイズ

スピーカーのサイズは「4インチ」「5インチ」といった形で仕様に記載されていることが多いですが、基本的にこの「4インチ」や「5インチ」というのはウーハーのサイズです。

スピーカーには「ツイーター」という高音域の音を出す部品と、「ウーハー」という低音域の音を出す部品の2つが前面に付いてることが多いのですが、「ウーハー」は基本的に大きければ大きいほど低音を綺麗に出せるので、ウーハーのサイズを基準にしてスピーカーを選ぶことが大事です。

ウーハーは大きすぎると狭い部屋に置くことができなかったり、低音が処理しきれなくてぼやけた音になることあるので、自宅で使うことを考えると大きすぎても良くないのですが、低音をできるだけ正確に聞くという需要を満たすためには最低でも5インチはあったほうが無難です。

机の大きさなどの制約でどうしても5インチのスピーカーをおけない場合には、3インチや4インチのスピーカーを机の上に置いて、別にサブウーハーを用意するという方法もあります。

◇入力端子について

スピーカーの裏側に音声信号を入力するための端子が付いていますが、端子の注意点としては、①形状と、②バランスかアンバランスかの違いがあります。

①端子の形状には、(ア)RCAプラグ、(イ)フォン、(ウ)XLR(キャノン)の3種類のうちのいずれかがついているか、これらの複数の端子が付いているものが多いです。

(ア)RCAプラグを(イ)フォンに変換するケーブルや、(イ)フォンを(ウ)XLR(キャノン)に変換するケーブルは販売されているので、あまり気にしなくても良いですが、自分が使っているオーディオインターフェイスとスピーカーを繋ぐために、どのようなケーブルが必要なのかは事前に把握しておく必要があります。

もう1つ注意が必要なのが②バランスとアンバランスの違いです。

基本的にはアンバランスよりもバランスのほうがノイズに強いと言われていて

(ア)RCAプラグはアンバランス

(イ)フォン端子のうち黒い線が2本入っているケーブルがバランスで、黒い線が1本しか入っていないものはアンバランス

(ウ)XLR(キャノン)はバランス

というケースが多いのです。

バランスの端子にアンバランスを繋ぐのは基本的にダメ(実際には保護回路が働いて問題ないことも多いのですが)と言われているので、お使いのオーディオインターフィスの出力がバランスの場合には、スピーカーもバランスに対応しているものを選んだほうが精神衛生上は良いです。

◇バスレフの有無、位置

自宅用の小さめのスピーカーには「バスレフ」と呼ばれる穴が空いていることが多いです。

これは小型スピーカーの「低音が弱い」という弱点を補うために、低音を増幅させるための機能です。

バスレフがあることのメリットとしては低音が大きくなるので小さいスピーカーでも低音域の音を把握しやすくなります。

他方、バスレフはその構造上、低音が遅れて出てくるという欠点があるため、スピーカーによってはバスレフがあることで低音域がぼやけて聞こえる場合があります。

その他、バスレフが前面にあるものと、スピーカーの背面にあるものがありますが、バスレフが背面にあるとスピーカーを置く位置に気を遣わなければならないというデメリットがあるので、バスレフは前面にあったほうが良いという人が多いです。

◇周波数特性の修正(イコライザー・EQ)

自宅でモニタースピーカーを使う場合、部屋の環境やスピーカーを置く位置によって、低音が出すぎたりすることがあります。

スピーカーは実際に自分の部屋に置いてみないとどういう鳴り方をするか分からないため、デフォルトの状態で自分の部屋に合わなかった場合でもイコライザーで細かく各音域の強さを調整できる機能があると自分の好みの音に修正することができます。

ただ実際にスピーカーは自宅に設置して鳴らしてみるまで、どのような周波数特性で鳴るのか分からないことが多いので、IK MULTIMEDIAの「ARC」や、Sonarworksの「SoundID Reference」などの補正ソフト(周波数特性を計測した上でできるだけフラットにしてくれるソフト)を使っている人も多いです。


◇見た目

モニタースピーカーは曲を作ったりミックスをしている時に常に視界に入るので見た目もかなり重要だと思っています。

プロのエンジニアの方でも見た目も重視してスピーカーを選んでいるという人もいます。

(プロが使うような高額のスピーカーは、どれを選んでも音が良いという事情もあります。)


◇自動スタンバイ機能の有無

海外のスピーカーには、スピーカーを一定時間使っていないと、勝手にスタンバイ状態する機能が付いてることがあります。

便利な機能に聞こえますが、自動スタンバイ機能が付いているスピーカーは大きな音で音を出し続けていないと使っている途中で音が急に出なくなることがあり、使い勝手が悪くてイライラするものが少なくありません。

スリープ状態になったスピーカーを復帰させるためには一度スピーカーで大きな音を出さなければいけないので、自動スタンバイ機能があるスピーカーを嫌う人のほうが多いと思いますし、スピーカーのレビューでも自動スタンバイ機能があることでマイナスの評価を付けている人は多いです。

最近のスピーカーは自動スタンバイ機能を有効にするか無効にするか選べるものもありますので、有効・無効を選べるタイプのほうが無難だと思います。

◇アクティブかパッシブか

スピーカーにはアンプ(音を大きくする装置)が内蔵されているアクティブ(パワード)と、アンプが内蔵されていないパッシブ(ノンパワード)があります。

PCの出力端子やオーディオインターフェイスに繋ぐ場合には、アクティブ(パワード)のスピーカーを選ぶ必要がありますので、この記事ではアクティブタイプのものだけを紹介します。


◆おすすめのモニタースピーカー

各メーカーとも様々なサイズのスピーカーを出していますが比較の基準を統一するために、5インチのスピーカーの絞って紹介していきます。


◇ADAM AUDIO「T5V」

端子      XLR(バランス)、RCA(アンバランス)
バスレフ    位置は後ろ
EQ      高域3段階、低域3段階
自動スタンバイ機能  なし

ADAM AUDIOが以前に販売していた「A7X」「A5X」などは爆発的に流行したのですが、今はこの「A…X」シリーズは販売されておらず、中古で買おうとしても当時の新品に近い値段で販売されていたりします。

後継機として「A…V」という品番のモニタースピーカーが販売されているのですが、こちらは「A4V」という4インチと「A7V」という7インチがメインで、5インチのラインナップが無いんです。

その代わり「T…V」という品番で「T5V」という低価格帯のエントリークラスの5インチのスピーカーが販売されているのですが、こちらも海外で爆発的な人気となっていて、かなり売れているようです。

ADAM AUDIOの特徴は「リボンツィーター」という解像度が高くて透明感のある高音域を出力できるスピーカーを採用しているところです。

一般的なツィーターはドーム型で円形なのですが、「リボンツィーター」はアコーディオンのように折り曲げられた振動板が振動して音が出るようになっており、見た目的にもハイテク感があってADAM AUDIOの黄色のツィーターを見ているだけでもテンションが上がるというDTMerは少なくないと思います。

音の特徴は高音域に伸びがあって綺麗で、低音はやや控え目な印象があります。

「低音域が強調されたスピーカーは苦手だけど、ヤマハのような高音域の癖が強いスピーカーも苦手だ」という人にとっては、ADAM AUDIOのモニタースピーカーはちょうど良い選択肢になると思います。

また、「T5V」にはアンバランスのRCA端子が付いています。

エントリークラスのオーディオインターフェイスの場合、アンバランスの出力しかないこともあるため、DTMの初心者や、手軽に使えるリスニング用のモニタースピーカーを探している人にとっても優しい仕様だと思います。

ADAM AUDIOの「T5V」の欠点は、奥行きが長く(約30cm!)、しかもバスレフポートが背面にあるために、置き場所に困る場合がある、というところです。

「T5V」の購入を検討する人は買う前に実際に机の上でサイズを計ってみたほうが良いと思いますが、奥行きが30cmもあると、スピーカーの前面が机の前のほうにせり出す形になり、スピーカーと自分の耳との距離を十分に確保できず、リスニングに最適と言われる三角形のポジションを確保できない、という人も多いと思います。

ADAM AUDIOの「T5V」が海外で爆発的に売れているわりに日本では圧倒的なシェアを占めていないのは、海外では十分なスペースがある人が多いの対し、日本では狭い住宅事情の関係で奥行きの長いスピーカーを置くスペースが確保しずらい、という事情があるかも知れないです。

ただ2本で4万円台という価格でADAM AUDIOのリボンツィーター型のスピーカーを自宅で鳴らせるというのはかなり魅力的だと思いますし、「部屋は十分に広いから置き場所には困らないぜ」という人にはADAM AUDIOの「T5V」はおすすめです。

◇KRK 「RP5G4  ROKIT」

https://amzn.to/3wbqZSk

端子      XLR(バランス)、フォン(バランス)
バスレフ    位置は前
EQ      25通りの設定を備えたDSP駆動のグラフィックEQ
自動スタンバイ機能  あり(ただし設定によってスタンバイ機能をオフにできる)


こちらのKRK 「RP5G4  ROKIT」も海外で爆発的に売れているエントリークラスのモニタースピーカーです。

KRKは1980年代にアメリカのエンジニアが「自分の満足できるスピーカーが欲しい」と自作したスピーカーが評判となり、有名なスピーカーメーカーの1つとなった会社です。

雑誌などで海外のスタジオやミュージシャンの部屋に黄色いウーハーが特徴的なKRKのスピーカーを目にしたことがある人も多いと思います。

少し前まではKRKのスピーカーは低音が強めで、ヒップホップ、EDM、DJ系の音楽を作るトラックメーカー向けというイメージでしたが、最近のKRKのスピーカーの周波数特性はかなりフラットに近くなってきていて、ジャンルを選ぶことなく、どんな人にもお勧めできる使いやすいスピーカーになってきています。

バスレフは前面に付いており、サイズも横幅190mm、奥行き241mmと5インチのスピーカーとしては大き過ぎないサイズなので、ADAM AUDIOの「T5V」や、後述のFOCALの「ALPHA EVO 50」と違って、置き場所に困るという人は少ないと思います。

このKRK「RP5G4」の大きな特徴として、背面にDSP駆動のグラフィックイコライザーが付いているという点があります。

DSPというのは「digital signal processor」の略で、簡単に言うとデジタルで音を劣化させずに部屋の特徴などに合わせてスピーカーの特性を調整できる機能です。

しかも「KRK Audio Tools」というスマホ用のアプリを使うと部屋の特性に合ったオススメの設定を提案してくれるという初心者には便利な機能も使えたりします。

理想的な音が出せるように設計されたスタジオと異なり、多くのDTMerが使っている部屋は左右が非対称だったり定常波が発生しやすかったりと問題があることが多く、せっかく性能の高いスピーカーを買っても能力を十分に活かせないというパターンも少なくないです。

そんな場合に、DSPのイコライザーで部屋の状況に合わせた理想的なバランスに調整できるのは便利だと思います。

KRK「RP5G4」には自動スタンバイ機能が付いていますが、自動オフにならないように設定することもできるため、勝手にスピーカーがスタンバイモードになってイライラするということもありません。

また、別売りになりますが、「RP5G4」専用のフロントグリルも販売されています。

ツィーターやウーハーが剥き出しの状態だと猫や子供にイタズラをされて壊れてしまうというリスクもありますが、フロントグリルを付けることでペットを飼っている人や小さなお子さんがいる人も、安心して使うことができます。

正直、KRK「RP5G4」は価格も安く、欠点らしい欠点は無いいように思われます。

敢えて欠点があるとすれば、黄色のツィーターとウーハーが目の前にあると気が散るという人もいるかも、というくらいかなと思いますが、その場合も別売のフロントグリルを付ければ良いので、特にこだわりが無い人にとってはKRKのスピーカーは無難な選択肢だと思います。

◇FOCAL「ALPHA EVO 50」


端子      XLR(バランス)、フォン(バランス)、RCA(アンバランス)
バスレフ    位置は前
EQ      低音域±6db、高音域±3dbで調整できる
自動スタンバイ機能  あり(ただし設定によってスタンバイ機能をオフにできる)


FOCALと言えばスタジオモニターとして超有名なフランスのメーカーですが、そのFOCALがエントリークラスとして出しているのが「ALPHA EVO」シリーズです。

FOCAL はもっと前にはCMSシリーズというスピーカーも出していたのですが、こちらのシリーズは人気で宇多田ヒカルさんが自宅で使っていたという話もあって、そのくらい海外ではFOCAL を使っている人が多いです。

一方で、エントリークラスの「ALPHA EVO」シリーズはそれほど目立っている印象はなく、前記のADAM AUDIO「T5V」、KRK 「RP5G4」のように爆発的に売れている雰囲気もなさそうですが、「ALPHA EVO」は地味ながらも非常に優秀なダークホース的なモニタースピーカーだと思います。

個人的に「ALPHA EVO 50」の優れていると思う点は以下のとおりです。

・ウーハーのサイズは5インチでも余裕のある音が出る

・スィートスポットが広い(適当に置いても、それなりの音質で聴ける)

・小さな音量で聴いても周波数特性があまり変わらない

「ALPHA EVO」は他のスピーカーよりも横幅が大きく筐体がしっかりしているため、余裕がある落ち着いた音に聞こえます。

前記のKRKの「RP5G4」は「頑張って音を出している」という感じがするのに対し、「ALPHA EVO 50」のほうが「どっしり」としていてミックスなどの作業はしやすい音だなと感じました。

個人的にはFOCALの「ALPHA EVO」は「特徴があまり無いのが特徴」という感じで、特にどこかの周波数特性が目立っている訳でもなく、フラットで長時間聴いていても疲れない音です。

ただ、テンションを上げて曲作りをしたいという人にとっては「ALPHA EVO」の音は大人しすぎると感じるかも知れませんし、前記のADAMやKRKのスピーカーのほうが聴いていてテンションが上がるという人も多いと思います。

FOCALの「ALPHA EVO」はツィーターのスィートスポットが広くバスレフも前面にあるため、聴いているポジションによる音の変化が少なく、壁際にスピーカーを置いても低音が出すぎて困る、ということも少ないと思います。

また夜間には音量を絞って作業をする人も多いと思いますが、「ALPHA EVO」は音量を下げても周波数特性が大きく変化しないように設計されているようで、小さな音で鳴らしてもそれほど違和感はありません。

後述のヤマハのスピーカーなどでは大きな音で鳴らさないと本領を発揮してくれなかったりするので、集合住宅に住んでいる人にとっては「ALPHA EVO」シリーズは扱いやすいと思います。

FOCALからは数年前に「Shape」シリーズというモニタースピーカーが発売されていて、エンジニアの方や、聴き専のオーディオマニアの人達からは評判が非常に良かったのですが、「Shape」シリーズでは一定時間経過すると勝手にスタンバイ状態になってしまう(しかも分解しないとスタンバイ機能を無効化できない)ことが問題になっていました。

他方で、「ALPHA EVO」シリーズは背面のスイッチで勝手にスタンバイ状態にならないように設定することができるようになっており、この点では「Shape」シリーズよりも使い勝手が良くなっています。

その他、「ALPHA EVO」シリーズはフロントグリルがセットで付いてくるのも嬉しいポイントです。

個人的にはフロントグリルを付けていないと、ツィーターやウーハーを無性に触りたくなる衝動に駆られることがあるので(おそらく人間としての本能)、別料金を払うことなくフロントグリルを気軽に付けられるのは有り難いです。

FOCALの「ALPHA EVO 50」の欠点を挙げるとすれば、エントリークラスとしては若干値段が高めであること、見た目がゴツいこと(個人差はあると思いますが個人的には見た目はADAM・KRK・ヤマハなどのほうが好きです)、他社のスピーカーよりもやや横幅が大きい(約23cm)ところです。

「これまで5インチのスピーカーを使っていたから大丈夫だろう」とサイズを気にしないで購入すると、これまでスピーカーを置いていた場所に収まらない可能性があるので、買う前にサイズを確認したほうが良いと思います。


◇ヤマハ「HS5」

端子      XLR(バランス)、フォン(バランス)
バスレフ    位置は後ろ
EQ      細かい調整はできない
自動スタンバイ機能  なし


国内外を問わずヤマハのスピーカーは、スタジオ用でも自宅用としても、人気があります。

日本国内では昔はスタジオにNS-10M(通称「テンモニ」)というスピーカーが置いてあることが多かったため、特にテンモニの音に慣れているベテランの人はヤマハのスピーカーを勧めてくることが多いように思います。

ヤマハのHS5というスピーカーはビリーアイリッシュがサブウーハーのH8Sと組み合わせて使っているという話もあり、プロでも使っている人も多くて安心感がありますし、プロユースの製品としては圧倒的な安くコストパフォーマンスは良いです。

ヤマハのスピーカーの音の特徴としては、高音域が意図的に持ち上げられているのに対し、特に5インチ以下スピーカーは低音域は控えめなので、「澄み切った綺麗な音」と感じる人もいれば、「ラジカセのようなシャカシャカした音」と感じる人もいると思います。

昔の邦楽のように低音域をばっさりとカットした曲を多く作る人であれば扱いやすいスピーカーだと思いますが、EDMなど低音域を重視した曲を作る人にとってはサブウーハーと組み合わせないと扱いにくいかも知れません。

それからバスレフは背面に付いているためスピーカーを置く位置によっては、バスレフから出てくる低音の処理に困ることもあると思います。

ただ、個人的にはヤマハのHSシリーズの白が見た目的には最も好きで、目の前にあるとテンションが上がるデザインだと思います。

HSシリーズは価格が安めなので初心者が買う(買わされる)ことも多いと思いますが、前記のような特徴があるためベテラン・職人的な玄人がサブモニターとして使っていることも多いような気がしますし、十分に使いこなすためには一定の経験が必要になってくるかも知れません。

◇JBL 「PROFESSIONAL 305P MkII」


端子      XLR、フォン(バランス)
バスレフ    位置は後ろ
EQ      高域3段階、低域3段階
自動スタンバイ機能  なし


JBLの「305P MkII」は以前にはかなり安く販売されていたことがあり、当時は圧倒的なコストパフォーマンスの高さを誇っていました。

当時は「価格からは考えられない良い音」というイメージでしたが、価格が上がった今では、「値段に見合った、それなり音」という印象を持つ人が多いんじゃないかなと思います。

「305P MkII」のメリットはツイーターの指向性が広く、スピーカーを適当に置いても、それなりに良い音で聴けるという点です。

ハイスペックなスピーカー中にはスイートスポット(ベストな音が聞ける位置)が狭いものもあって、スピーカーの位置・角度をミリ単位で調整しないと能力を発揮できないものもあるのですが、「305P MkII」はあまり細かいことを気にしなくても、一定の音質が確保できるのは良いと思います。

「あまり難しいことは考えたくないけど、適当においてもそれなりに良い音を聞きたい」という人にはおすすめだと思います。


◇GENELEC「8030CP」

端子      XLR(バランス)
バスレフ    位置は後ろ

これまで紹介スピーカーよりも価格帯が一気に高くなりますが、有名な定番メーカーなのでGENELECのスピーカーについても一応紹介したいと思います。

GENELECのスピーカーはコンパクトながら自宅や小さいスタジオでも手軽に良い音を出せるので、多くのアーティストやエンジニアが使っています。

数年前に海外のプロデューサーが自宅のリビングでGENELECのスピーカーを使ってミックス作業をしたということが話題になったりしていました。

雑誌などでミュージシャンの自宅の写真を見ても、GENELECのスピーカーが置いてあるということが多いですし、価格を気にしない人であれば無難な選択肢(オーディオインターフェースで言うとRME的な存在?)だと思います。

GENELECの「8030CP」の特徴としてはコンパクトながら輪郭がはっきりとした低音域が出せることや、ある程度適当な置き方をしてもちゃんとした音で鳴ってくれるところだと思います。

音に関しては正直好みが分かれるところだと思います。

スタジオライクな音に慣れていない宅録派のDTMerにとっては、GENELECのスピーカーの音は派手で扱いにくいと感じる人もいると思います。

GENELECの欠点としては価格帯が高めで他のスピーカーの3倍~4倍くらいの値段がするものの、性能が3倍~4倍になる訳ではないので、コストパフォーマンスという点では他社のエントリークラスのモデルのほうがお得感はあるかな、という点かなと思います。


◆自宅にスピーカーを置くスペース・余裕が無いという人はどうするか?


最初にお話したようにミックス作業をするのであれば、スピーカーは絶対にあったほうが良いと思います。

ただ部屋の大きさの問題や費用的は問題である程度の大きさのスピーカーを用意できないという場合もあると思います。

そんな時に便利なのは擬似的にスピーカー風の音をヘッドホンで聴くことができるプラグインです。

比較的安価に入手できて簡単に使えるのはWavesが出している以下のプラグインです。

CLA Nx

Nx Germano Studios New York

Nx Ocean Way Nashville

Abbey Road Studio 3

これらのプラグインは世界的に有名なスタジオの音をヘッドホンで擬似的に聴くことができるというものです。

使い方はDAWのマスターにインサートして設定を選ぶだけで、Wavesらしく簡単です。

通常ヘッドホンで音を聞いた場合、音は左右の耳元や頭の中で鳴っているように聞こえますが、スピーカーで聴く時は音は目の前で鳴っているように聞こえます。

しかし、上記のプラグインを使うと不思議なことにヘッドホンで聴いても音が目の前で鳴っているように聞こえます。

これはスピーカーで音を聞いた時は

・右のスピーカーから出た音は右耳に先に届き、少し遅れて左耳に届く

・左のスピーカーから出た音は左耳に先に届き、少し遅れて右耳に届く

という状態になるのですが、人間の脳はこの僅かな音のズレで距離感を感じとって、「音が前から鳴っている」と認識することができるんです。

Wavesの上記のプラグインも、おそらくR側にL側の音を少し遅らせて混ぜて、L側にR側の音を少し遅らせて混ぜるという処理をしているのではないかと思います(たぶん)。

説明が少し長くなりましたが、プラグインを使うことでヘッドホンを使いながらスピーカーで音を聞いているような擬似的な環境を作ってミックスなどの作業ができるようになるんですよね。

しかも、世界的に有名なスタジオのスピーカーの特性が再現できるだけでなく、スタジオのアンビエンスがIRとして入っていたりと、使ってみるとミックス作業時のテンションも上がると思います。

ただ、あくまでもプラグインを使った擬似的な体験なので、音の解像度などは落ちますし、設定や扱う曲によっては低音域が割れたり不自然に聞こえることもあります。

なので、上記のようなプラグインは様々な環境で音を鳴らしてみて自分のミックスが不自然ではないかということを確認してみるために使うほうが良くて、やはり実物のスピーカーがあるに超したことは無いと思います。

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