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同期のTはいつも僕の前にいた。席順が名字順だったから。

同じグループではないし仲良くなることはなかった。
スポーツ好きできっと中高はカーストⅠにいたのだろう。接点はそこまでないが陽キャというものは誰にでも声を掛ける。唯一の接点は研修テストの点数。彼の頭の出来は僕と同様に良くなく、研修所のテストの張り出し順位でよく争っていた。

なぜ死んだのか?葬式を開かったのか?誰も教えてくれなかったし、会社を辞めた僕にはもう関係のない人。たぶん二度と会うことはないだろう人間。だけど半年間同じ研修所で同じ釜の飯を食った。それだけで十分メンタルに来た。

悲しむ筋合いなんてないだろう。なのに。それが問題だ。悲しむ権利の無い人間の気持ちはどこに仕舞っておけば良いのだろう。

おそらく死因が開かされていないのが大きな原因だ。覚悟が出来ていない。25歳がいきなり死んでしまって葬式も無い。疑ってしまう。
死んだと聞いて『自殺』しか選択肢が脳裏に浮かばないのは立派なPTSD。

去年の4月も友人が1人死んだ。そんなに遊んだ友人でもないのに僕は壊れた。会社も辞めた。

春の訪れは桜でも暖かい風でも新しい出会いでもなく、いつだって死だ。


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