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相対評価や承認欲求から解放されるには「経験」が必要

昨日、甥っ子にスキーを教えたついでに、スキーをやる理由について聞いてみた。

彼がいうには
・スキーは好きだけど、何のためにやっているのかは分からない
・自分がスキーが上手いのか下手なのかが気になる
・競走したいとか順位をつけられたいとかいう訳でない、バッジテストや大会に出たいとは思わない
・練習するのも、ただ楽しく滑るのも、楽しさは同じくらい

これを口にしたのが大人だったら、
「努力しなくていい理由を探してるだけじゃないのか」
「人に評価されることだけに目を向けるな」
「ただ楽して承認欲求を満たしたいだけなんだろう」
とバッサリ斬れるのかもしれないが、相手は小5、そうもいかない。

そして同時に、彼の言ったことは結局、人間の素直な本音なんじゃないかと感じた。

「苦しいことをやらずに上に立てるなら、それを選びたい」
「社会の中で生きているから、相対評価は気になるし、人から承認されたい」


わかる。わかるよ。

好きなことだけで生きていく、苦手なことはやらなくていい、ラクに人から認められる、などの情報が豊富な時代だ。
やりたいことが好きなことで、かつ最小の力で人から認められる結果になるのなら、それが一番だ。
だけどそれは、何をやってもうまくいくスーパーエリートでなければ、やりたいこと以外を捨てる勇気をもち、「決断」する「覚悟」が必要だ。
自分が決めた世界の中で主体的に生きていく強さが大前提だ。
そこに踏み切れないからこそ、主体的な目的や明確な目標も見出せず、相対評価や承認欲求に囚われてしまっているのではないか。


相対評価ほど不確かで不安定なものはない。
どれだけ求めても承認欲求が完全に満たされることはない。

どんなにスキーが上手くても、もっと上手い人は世の中にたくさんいるし、時代という点を超えて見れば、一番というものは永久に存在しない。
もし今日何かひとつを褒められ「満たされた」と感じたとして、それで充分と満足できるか。「明日も褒められたい」「もっと褒められたい」と欲求が続いてしまうのではないか。

順位やライバルとの差などの絶対評価に目を向けているなら、ひとつ目標が満たされても、次の目標に向けて歩き続けることができるだろう。
しかし元々が不安定な相対評価や承認欲求を目的にしてしまうのは、非常に危うい。
実際に、ここに陥ってしまっているために、悩み、苦しむ人は少なくない。

じゃあ、どうすればいいんだ。

自分の軸をもち、点を打つしかない。

人との差分でなく自分自身の差分で生きるしかない。


目標はどんな小さなことでもいい。
これができるようになる、だったり、このコミュニティで◯◯になる、だったり。
まずはそこに、自分の核となる「これだけは」があること。
どうしてもこだわりたい大切にしたいことや、逆に、絶対に嫌なことでもいい。
どうしたいのか、なんのためにやるのか、どこに向かうのか。
自分の軸をしっかり持つことで、判断の基準ができる。
できているかできていなか。はたまた、次にクリアすべきことが何なのか。本当にこれでいいのか。
絶対評価でマイルストーンを設定しクリアしていくか、「人」ではなく「自分の成長」を相対的に評価し自分自身を満たしていくしかない。
そのために自分がどのようにやるのか、何をやるのかを決めるしかない。


甥っ子にはまだ、これらのことは伝えていない。
なぜなら、自分で軸をもち点を打てるようになるには、自分自身と真摯に向き合う経験が必要だから。

自分の中にたまった感情や経験がないと、絶対にやりたいこうなりたい、という強い目標には巡りあえない。
目標には、動機がある。
動機が強ければ強いほど、目標が濃く深くなる。
何があってもそこにある、ブレない指針になる。
大きさが重要なのではない。
目標や動機の、点としての力強さこそが、自分自身の核となり、評価基準となる。
そして動機には必ず、経験や知識が必要だ。


人は自分が理解できる中のことしか想像できない。
見聞きしたり体験したりしたことが想像の枠を決める。

自分自身と真摯に向き合い、濃密に得た思考や感情や体験が、自分の理解を太く深くしていく。
何かひとつ一度でも真摯に向き合ったことがあるかないか、その違いは大きい。


何のために何をやりたいのかがわからないという甥っ子には、まずはひとつ、「本気で頑張った」「全力でやり切った」経験をしてほしい。
それがスキーであってもなくてもいい。
自分の軸を作るための経験。
これをやり切ったと胸を張れる自分、そこで得た思考や体験、自分自身に対する評価基準を持ってほしい。

明確な目的や目標がないと焦らなくていい。
人との相対評価や承認欲求に囚われ苦しまなくてもいい。
目標の前に、目標の元となる動機や自分軸を強くもつこと。
ブレない目標や軸を作るために、向き合い、考え、喜び苦しみ、自分の価値観を広げていくこと。

目標がわからないのであれば、まず、何かひとつ、これを本気でやり切ると決めて、自分自身と真剣に向き合う経験を刻んでみてほしい。

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