この話を書くことは私を満足させるか。

「どう、Gパン履くのも慣れた?」
ー松浦亜弥みたいな会話の入り方すんなや
「いや、この前さ、飲み屋街歩いてたらさ、めっちゃ中学生いて、」
ーえ、何?修学旅行か何か?
「あ、数じゃなくて、『めっちゃ中学生だなあ』って人がいて、」
ーああ、「まさに」ってこと?
「そうそう。それで、その人に話しかけられたんだよね。『お兄さん、居酒屋どうですか?』」
ーえ、キャッチ?その人中学生じゃなかったんだ。
「そう、そのことは俺にとって即座に返事するにはあまりに驚かせ過ぎたよね。」
ーああ、「びっくりし過ぎてとっさに返事出来なかった」んだ。てかさ、
「何?」
ー和訳しながら喋ってる?さっきから、
「どういうこと?」
ーいや、ちょいちょい日本語おかしいなと思いつつ無視してたけどさ。
「どこが?」
ーいや、「まさに」を「めっちゃ」って言い間違えるのとかさ、典型的な「very」の誤訳の仕方じゃん。
「そうかな?」
ーあと途中下手くそな「too...to〜構文」みたいなのもあったけど。
「その指摘は俺を驚かせるものだね。」
ーそれもだよ。あんま自分を目的語に取って無生物主語で喋るなよキモいから。
「お前がキモいと思うかどうかにかかわらず、俺の喋り方はすぐに治されようとするにはあまりに俺の中で意識されてこなかったものなんだよね。」
ー和訳下手くそすぎて内容全然入ってこないんだけど。和訳して喋るならせめて英語の能力はあれよ。憲法の音声聞いてるみたいだ。
「それは、」
ーちょっと待て、どれだよ。itを無条件で「それ」に変換するな。形式主語の可能性も鑑みろ。
「それは今までずっと俺が使ってきたこの喋り方だ。」
ー強調構文を後置修飾で訳すとバグるんだよいい加減にしろ。

#小説 #短編 #漫才

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?