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2人の定番

今週、結婚する。

結婚生活は、自分が想像していないような大変なことがたくさんあるらしい。お互いを疎ましく感じたり、価値感の違いに悩んだり、思いもよらない事件がおこったりするという。

思いもよらない事件には勃発したときに向き合うしかなさそうだけど(何が起こるんだろう、おそろしい)、先人の知恵に学べば、心の準備くらいはできるかもしれない。

そう思って、わたしと婚約者は何冊かの本を買った。

どれも夫婦ができるだけ穏やかに暮らすコツを書いた本だ。

その中の一冊「夫のトリセツ」に、「定番が2人を守る」というエピソードがあった。

定番が2人を守る

著者の黒川さんは12月生まれ。

ご主人と黒川さんは「黒川さんの誕生日に手袋をプレゼントする」という定番を決めた。「わたしの手を北風から守るのはあなたの役目よ」と言って。

定番を決めれば「今年は何をプレゼントしよう」と悩むこともないし、受け取る側も手袋だったら毎年もらってもうれしい。

そんな2人に、あるとき離婚の危機が訪れた。

離婚に向けた話し合いを進めていたある日、ご主人が黒川さんに「今年の手袋はどんなのがいい?」と聞いた。思わず黒川さんが「なに言ってるの、いらないわよ」と答えると、ご主人は「そうは言っても今年も冬は来る。冬が来れば北風が吹く。手袋がないと寒いぞ~」と飄々と言ったのだそうだ。

それを聞いた黒川さんは「この人は、離婚しようとしてもなお、わたしとの約束を果たそうとしている」と心を揺さぶられた。お2人は、それをきっかけに離婚の危機を回避した。

このエピソードを読んだわたしと婚約者はいたく感動して、さっそく2人の定番を作ることにした。

2人の定番を作る

わたしは朝が弱い。朝は弱いけど、お腹はすく。

彼は、おいしそうに食べるわたしを見ているのが好きだという。

そんな彼からわたしへの定番は、「毎日朝ごはんを作る」に決まった。

実にありがたい。ケンカした朝も、彼が作った朝ごはんが目の前に並んだら、少し怒りが落ち着くかもしれない。

わたしから彼への定番は何がいいか聞くと、「顔をマッサージしてほしい」という。

確かに、毎晩わたしの周りをそわそわと歩いて、こちらの機嫌や様子をみはからっている。「マッサージする?」と声をかけると、まるでボールを投げられた子犬のようにはしゃいで、いそいそと横になって目を瞑る。

彼を疎ましく感じる日が来ても、顔にできた皺や寂しくなってきた髪の毛に触れて、愛しさがこみあげたりするかもしれない。

「毎日はできないよ」と少し逃げ腰で伝えると「それでもいい」と言う。

「疲れてる日は短い時間だよ」と念押しすると「短くてもいい」と言う。

毎朝ごはんを作る彼と、時々マッサージするわたし。かなり不公平な感じが否めないけど、とにかく2人の定番は決まった。

わたしたちは、2人の定番という武器を握りしめて、結婚生活という名の戦場に向かう。いつの日か、この定番が2人を守ってくれると信じて。


「夫のトリセツ」はこちら


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