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MENA(中東・北アフリカ)専門家によるイラン解説 XVI

 読者の皆さまが四択のイラン検定に飽きてしまったかもしれないので、今回は趣向を変えてさらに簡単な三択のアラブ検定を出題してみます。

アラブ検定10級:練習問題

<設問1>次の中からアラブの国を選んでください。
A. イラン
B. トルコ
C. サウジアラビア

<設問2>イランでは屋内でも、屋外でも茶を楽しむ習慣がありますが、次の中から、珈琲よりも紅茶がポピュラーな国を選んでください。
A. イラン
B. トルコ
C. サウジアラビア

#コーヒー の主要な栽培品種には、ドリップコーヒーなどで利用される #アラビカ種 と、ベトナムコーヒーや缶コーヒー用の豆として栽培されるロブスタ種があります。高級コーヒー豆として知られるのはアラビカ種で、この豆は #中東 地域において豊かな歴史と深い文化的意義を持ちます。

 コーヒーの歴史は特にアラビア半島との関連で非常に興味深いものがあります。コーヒーが世界中で愛される飲み物になる過程で、アラビアは中心的な役割を果たしましたが、日本国内ではコーヒーに関して多くの誤解が存在します。

 コーヒーと言えば、『 #コーヒー・ルンバ 』という曲があります。この曲は西田佐知子、荻野目洋子、井上陽水、工藤静香、福山雅治など多くのアーティストによってカバーされていますが、一部の人々はこの曲が日本のオリジナルだと誤解しています。しかし、原曲は『Moliendo Café』というスペイン語の曲で、歌詞の中に #アラブ やお坊さんの言及は一切ありません。

 さらに、この曲は『コーヒー・ルンバ』という名前がついていますが、実際には #ルンバ 、サンバ、ボサノバのいずれのリズムも使用していません。なぜ半世紀以上も『それってルンバのリズムではありません』と指摘されなかったのかが謎です。

コーヒーの起源
 コーヒーの起源は、一般にエチオピア高地とされています。9世紀頃、山羊の飼い主が自分の山羊がコーヒーの実を食べた後に異常に活発になるのを発見したという伝説があります。しかし、コーヒーが広く認知されるようになったのは、それがアラビア半島、特にイエメンに伝わった後のことです。

コーヒーのアラビアでの栽培
 15世紀には #イエメン のスファーという地域でコーヒーの栽培が始まりました。イエメンの港町 #モカ (現在のアル・ムカ)は、コーヒー貿易の中心地として有名になり、『モカ』という言葉は高品質なコーヒーを指すようになりました。イエメンのスーフィー修道士たちは、夜通しの祈りに集中するためにコーヒーを使用していたとされ、これがコーヒー消費の拡大につながったと言われています。

 代官山にある『MOCHA COFFEE』は、日本で本格的なイエメンコーヒーが飲める数少ない店舗の一つです。

 このカフェの店長はイエメン出身で、彼の兄が元々イエメンの産地で部族長のために栽培していたコーヒー豆が、イエメン内戦により現地での販売が困難になったため、日本への輸出を始めました。その結果、日本でもこの希少なコーヒーを楽しむことができるようになりました。

 イエメン、サウジアラビア、 #イラン は複雑な紛争状態にあります。この詳細は別の記事で解説します。

コーヒーハウスと文化的影響
 16世紀には、コーヒーハウスがアラビア半島で普及し始め、その後ヨーロッパや他の地域に広がりました。これらの『 #カフェ 』は、人々が集まり、情報を交換し、音楽やゲームを楽しむ場となりました。しかし、当時の政治的・宗教的リーダーたちは、コーヒーハウスが社会的な議論や批判の場になっていることを懸念し、何度かコーヒーの禁止を試みましたが、その人気は衰えませんでした。

コーヒーの拡散
 アラビアからヨーロッパに伝わった後、コーヒーは世界的な現象となりました。オスマン帝国を通じてコーヒーはバルカン半島に広がり、その後、ヨーロッパ全域に急速に普及しました。オランダ、フランス、イギリスを始めとするヨーロッパの国々は、その後、自国の植民地でコーヒーを栽培し始めました。このように、コーヒーとアラビアの関係は、経済的、文化的な影響を世界に与え続けています。

珈琲と茶の語源について
#アラビア語 #トルコ語 #ペルシャ語 でのコーヒーと紅茶に関連する興味深い情報を共有しましょう。

 ピーマンのような野菜は名詞でありながら、世界中で異なる語源から多様な呼称が存在します。

 しかし、 #茶 #珈琲 は、その語源が世界中で一貫しています。まず、茶についてですが、日本や中国では『茶』を『チャ』と発音し、インドからイランにかけては『チャイ』と発音されます。これが英語では『ティー』と呼ばれています。19世紀に入るまで、日本からイランにかけてのアジア諸国では主に茶が文化的に重要な飲み物であり、コーヒーはそれほど頻繁に飲まれていませんでした。

アラビア語
 コーヒーはアラビア語で『قهوة』(カフワ)と呼ばれています。この言葉は、『興奮またはエネルギーを失う』ことを意味する『قهي』から派生しているとされます。これは、コーヒーを飲むと眠気が消える効果に由来しており、イスラム教の神秘主義者たちが長時間祈りを続ける際に眠りを避けるために使用されたと言われています。

トルコ語
 トルコ語ではコーヒーを『kahve』と呼びます。オスマン帝国時代には、コーヒーハウス(kahvehane)が社会生活の中心となり、政治から文学に至るまで様々な議論の場として機能しました。トルココーヒーは非常に細かく挽かれたコーヒー豆を砂糖とともに水で煮ることで作られ、独特の泡を楽しむことが特徴です。この淹れ方は『トルコ式コーヒー』として国際的にも有名であり、カフェの起源がトルコであるとされています。以下のYouTubeビデオでは、直火を使わず、砂を熱して遠赤外線で加熱する淹れ方が示されており、この方法はユネスコの無形文化遺産として登録されています。

ペルシャ語
 ペルシャ語ではコーヒーを『قهوه』(ガヴェ)と呼びます。ペルシャ文化においても、コーヒーハウス(قهوه خانه)は詩の朗読や音楽の演奏など、文化的交流の場として重要な役割を果たしています。伝統的にイランでは #チャイ #紅茶 )が一般的ですが、20世紀に入り都市部でコーヒー文化が広まり、トルココーヒーの影響を受けた熱した砂での淹れ方がカフェでよく採用されています。現代では、特に若者の間でエスプレッソやカプチーノなどの洋風コーヒーが人気を博していますが、トルココーヒーを提供するカフェは減少傾向にあります。

 今回、中東諸国のコーヒーについて突然話を始めたのは、2024年5月10日に浅草橋で開店する『アラビアの朝ごはんカフェ』についての記事を見つけ、非常に興味を持ったからです。このカフェでは、MENA諸国のコーヒーや紅茶、茶菓子や軽食が楽しめそうです。

#武智倫太郎

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