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221.ラム肩ロース肉を最もおいしくするスパイスは何か? 問題

近所のスーパーでラムの肩ロース肉を常に置いているため、よく買って焼く。普段は、塩をふって2時間以上置き、完全に中心まで塩味が入った状態で焼くが、今回は、スパイス塩をテストしたいから、塩は振らずに焼くことにした。

『風味の事典』(楽工社)では、「ラム」のページがある。様々な食材との相性が記されているが、その中からスパイスやハーブなどに関するものを抜き出してみた。

・  アーモンド……仔羊丸ごと一頭に米や香辛料、アーモンドを詰めるというモロッコの伝統料理があるそうだ。食べてみたい。モロッコにはお他にもラムのミートボールもあって、トーストしたアーモンドを散らすそうだ。
・  アニス……「仔羊肉とペルノ プロヴァンス風」のレシピを紹介している。仔羊のロインチョップ8本に対してペルノ45mlを注いで強火で1分加熱。アニスの温かい香りをまとうことになる。
・  カルダモン……インドとパキスタンにまたがるカシミール地方にあるゴシュタバというミートボール料理があり、どっさりカルダモンが入るという。カシミールにはまだ行ったことがない。ぜひ現地で体験してみたい。
・  クミン……中国南西部のウイグル遊民の料理としてラム肉と唐辛子とクミンで風味付けした料理が例に出ている。確かにその辺りの料理店ではラムとクミンは定番の組合せ。
・  香菜……レバノン料理のヤフニットザーラというメニューが記載されている。レバノン料理はパリで何度も食べているが、それらしきものを食べたかどうか記憶にない。カリフラワーのシチューだが、仔羊肉と香菜が主役を演じているという。
・  サフラン……イランの国民食「チェロウ・ケバブ」がサフランライスと共に親しまれている、というちょっと相性を検討するには弱めの理由。
・  シナモン……モロッコでの食シーンが紹介。シナモンを振りかけたラムチョップをグリルで焼く。仔羊肉のタジン、挽き肉のケバブなど。肉500gに対してシナモンパウダー小さじ1と具体的な表記もある。なかなか大量のシナモンだが、ラムにシナモンを合わせるとき、怖がらずにふりかけるのは、トルコで伝統料理を習ったときに体験している。

他にもセロリ、タイム、ナツメグ、ミントも紹介されている。
今回は、トルコで体験しているシナモンとミント、国内の中国南西部料理で体験しているクミンを合わせてみたい。

●ラムステーキのスパイス塩風味
【材料】
紅花油 小さじ1/2
ラム肩ロース肉(厚さ1.5センチ) 2枚(
塩 少々
スパイスA
 ・クミンシード ひとつまみ
スパイスB
 ・スペアミント(ドライ) 10枚
スパイスC
 ・セイロンシナモン(削る) 少々

【作り方】
1.    ラムを常温に戻し、表面を拭いておく。
2.    フライパンに油を熱々になるまで熱し、ラムを加えて強火で焼く。片面1分30秒ずつ。
3.    火を止めてラム肉を取り出してホイルに置き、塩とスパイスをふる。
4.    空いた鍋に余った温かい油をラムの上にかけ、ホイルで包んでタオルで巻き、15分ほど置く。

前から感じていることだが、たとえば、先の例に出ていたモロッコのグリルだったり、ジャマイカのジャークチキンだったり、肉にパウダースパイスをまぶして焼く料理が世界中にあるが、あの方法は、スパイスそのものの香りよりも肉の表面でスパイスが焦がされ燻されたスモーキーな香りが強まってしまう。それはそれでうまいけれど、スパイスと素材の相性を管区人するときには、香気成分の揮発条件を考慮しても、あくまでも「温かい油とスパイスが加熱しすぎない状態で融合する状態」がベストだと思う。

スパイスA、B、Cはどれも香りよく仕上がった。最もラム肉の味わいを引き立てたのはシナモンだったような気がする。
『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみた。

◆クミンの香気成分
香気成分の代表は、クミンアルデヒド。30%以上の含有比率を誇る。メジャーなスパイスでクミンアルデヒドを含むものを他に知らない。セリ科のスパイスは多いが、そういう点では唯一無二の香りを持つと言える。中国料理でマトンとクミンを合わせるものがあるから、相性のよさはお墨付き。他にβピネン、pシメン、γテルピネンなども10%前後と多い。βピネンはブラックペッパー、ビッグカルダモン、ナツメグ、カレーリーフなどと共通する成分だから、これらの組合せでラムに合わせてみたい。

◆スペアミントの香気成分
「一様にハーバル・スパイシーでいくぶん苦味、青臭みのある特徴的な風味を有する」とある。代表的な香気成分はリモネンで5.9%というDATAもあれば、11.4%というDATAも。テルピネン、カルボンなども高い。リモネンは共通するスパイスが多く、フェンネル、キャラウェイ、ホワジャオ、ブラックペッパー、メースなど。これらもブレンドしたらスペアミント単体よりも相性が良さそうだ。

◆シナモンの香気成分
部位によって特徴的な香気成分が違うのが、シナモン。葉ではオイゲノール、樹皮ではシンナムアルデヒド、根ではカンファーが主成分。今回は樹皮を使ったため、シンナムアルデヒドが75%と圧倒的。他は比率は少ないが、リナロール、カリオフィレン、オイゲノールあたり。リナロールを55%も含むのはコリアンダー。カリオフィレンはブラックペッパー、クローブ、カレーリーフ、オールスパイス。オイゲノールはクローブで有名だ。

今回、3種類のスパイスはどれもラム肉をおいしくしたが、香気成分での共通項でブレンドしたパターンはさらにおいしくしそうな気がする。スパイスは基本的に単一で使用するよりも複数をブレンドした方がより効果を発揮するからだ。

スパイスミックス塩A
……クミン+ブラックペッパー+ビッグカルダモン+ナツメグ+カレーリーフ

スパイスミックス塩B
……スペアミント+フェンネル+キャラウェイ+ホワジャオ+ブラックペッパー+メース

スパイスミックス塩C
……シナモン+コリアンダー+ブラックペッパー+クローブ+カレーリーフ+オールスパイス+クローブ

もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。

https://airspice.stores.jp/items/5d37cf2d2e89b70d41f61f8d

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