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216.豚バラ肉を最もおいしくするスパイスは何か? 問題

豚バラ肉は塊でもスライスしてもうまい。バーベキューで網焼きするのは、脂が落ちるからかなりテクニックがいる。スライスをキャベツと一緒に鉄板で焼いて締めの焼きそばに、みたいなことでも楽しめる。
豚バラ塊肉の塩漬けがあったので(まだ1週間しか経っていないけれど)、大きめにカットしてポトフのように煮込んでみることにした。豚肉単体でやるべきなんだろうけれど、さすがに寂しいので、玉ねぎ、セロリ、ニンジン、ジャガイモというオーソドックスな野菜を一緒に入れてしまうことにする。その代わり、その他のものは一切使わず、水だけで煮る。油もにんにくも、もちろん各種調味料も使わない。

『風味の事典』(楽工社)で合わせているスパイスは以下。

・  スターアニス……スターアニスのストック(紹興酒、醤油、スターアニス、シナモン、にんにく、しょうが、水でとったもの)が例に上がっている。中国料理系であれば、これはよさそう。この方向ならしょうがが欲しくなる。
・  クミン……豚肉にはクミンの持つ土のような風味がある、とのこと。あまりピンと来ないし、「豚肉に対してクミンが特別に合う」とうイメージもわきにくい。
・  クローブ……クローブの防腐作用について言及されている。確かにポトフの玉ねぎにクローブをひとつ、ふたつ刺して煮るみたいなことはあるが、もっと前向きに相性を探したい。
・  香菜……ポルトガル料理の豚の耳とコリアンダーリーフを紹介。今回は豚バラ肉なのでスキップ。
・  セロリ……セロリシードがレバーやミートローフなどの加工食品に使われるそう。ただ、今回は、生のセロリをポトフの煮込みに入れてしまっている。
・  タイム……カスレ風の煮込みが紹介されている。ハーブ系は基本的にどれも合うとは思う。
・  ディル……中国北東部の豚肉とディルの餃子が紹介されている。未訪の地、未食の料理。想像はつくが豚肉との相性として説得力はあまり持てない。
・  唐辛子……ブースト食材で割愛。ブラックペッパーも間違いないが、同じく。あ、でもホワイトペッパーの粗挽きを合わせてみたいと思う。
・  にんにく……ブースト食材で割愛。しょうがも合いそうだが、同じく。
・  ローズマリー……イタリア・ラツィオの名物料理ポルケッタは、骨を抜いた豚肉にローズマリーやにんにくお詰めて串に刺して焼く。豚肉とローズマリーは鉄板だろうから、試作するまでもなさそう。

上記にないスパイスで、ホワイトペッパーの粗挽きとドライセージを加えることにした。豚肉の煮込みでソーセージが登場するケースは結構多い。特にポトフ系だと。すなわちドライハーブ類はたいてい相性がいいことになるが、ソーセージというくらいだから、セージを合わせてみようと思ったのだ。

●塩漬け豚バラ肉のポトフ
【材料】
塩漬け豚バラ肉(3センチ幅に切る) 600g
玉ねぎ(縦半分に切る) 小2個(300g)
にんじん(半割り) 小1本(120g)
じゃがいも 1個(200g)
セロリの茎(適当に折って筋を取る) 1本(60g)
水 適量
スパイスA
 ・スターアニス 1/2個
スパイスB
 ・セージ 小4本
スパイスC
 ・ホワイトペッパー(粗挽き) 
塩 適量

【作り方】
鋳鉄鍋で沸騰したらアクを引き、弱火でふたをして60分。塩で味を調整する。完成後、器に豚肉とスープを取り分ける。スパイスAとBは加えてラップし、1分加熱。スパイスCはふりかける。

スパイス塩A、B、Cすべて、どれもおいしく仕上がった。『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみたい。

◆スターアニスの香気成分
アネトールが71%とダントツ。続いてフェニクリン、エストラゴール、リモネンの順。アネトールは甘い香味に特徴がある。同じアネトールを含有するスパイスの代表はフェンネル(31%)で、確かに風味の事典にはバリエーションの例としてフェンネルの文字がちらほら。

◆セージの香気成分
「近年ではセージの持つ肉の臭みを消す効果が着目され、もっぱらスパイスとして肉料理(特に豚肉料理によく合うとされる)、ハムやソーセージなどの加工などに使用されている」とある。香気成分は含有比率が多い順にツジョン(Thujone)、リナロール、カンファ―、シネオール、カンフェン、α-ピネン。グリーンカルダモン、ローリエ、コリアンダーあたりは同様の香気成分を持つ仲間と言える。改めてハーブとしての香りは臭み消しを越えた優秀さがあると感じた。

◆ホワイトペッパーの香気成分
ブラックペッパーの香気成分しか記載がない。ペッパーの香気成分は外皮に多く含まれるらしく、製造工程で外皮を取り除くホワイトペッパーの香気成分が未知数。だが、ブラックペッパーとはだいぶ違う香りがある。香りの専門家、ヌマボーイが探してくれた別DATAを参照すると、ホワイトペッパーの香気成分で目立つのは、αピネン、βピネン、リモネン、カリオフィレンあたり。ブラックペッパーと似ているが、香りは明らかに違う。その点が不思議。製造工程に発酵も含まれるため、豚肉に深みを感じさせる成分が生まれているのかもしれない。

どれも非常においしかった。セージが特に素晴らしい働きをしてくれた印象があるが、3種のポトフを混ぜ合わせたスープが最もおいしかった。
そして、傍らのお供にバジル主体の自家製アイスハーブティを飲んだが、これも素晴らしい後味を残してくれた。
もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。


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