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224.カリフラワーを最もおいしくするスパイスは何か? 問題

フランスでカリフラワーを普及させたのは、ルイ14世だったらしい。彼は、カリフラワーのストックで茹で、ナツメグで風味付けしてから温かいうちにバターを乗せて食べるのが好きだったそうだ。

カリフラワーは好きな野菜のひとつ。そのまま茹でたり焼いたりするだけでうまい。形も好きだ。けれど、煮込みに使う場合は、やさしく火入れしないとボロボロになってしまう。それでもおいしいけれど、リゾットなどならともかく料理によっては細かくなったカリフラワーが浮遊する煮込み料理はビジュアル的に好まない。それならポタージュのようにするか、多めの水分とミキサーをまわし、カリフラワーソースにして溶け込ませたい。
ハッキリ残すか消してなくすか、どちらかが好き。全くもって僕個人の好みに話だ。どうでもいい。今回は形を残せる天ぷらにした。

『風味の事典』(楽工社)に「カリフラワー」のページがある。様々な食材との相性が記されているが、その中からスパイスやハーブなどに関するものを抜き出してみた。

・  クミン……クミンとカリフラワーを一緒にローストすると「両者の本質的な特徴を損なうことなく、ナッツのような甘さが出る」そう。想像がつく。
・  唐辛子……カリフラワーは油で揚げると全く別物のになり、甘く、ムスクのような味となめらかな食感が出る、とのこと。それにチリソースを添えることを推奨しているが、唐辛子はブースト食材なので割愛。
・  トリュフ……トリュフとカリフラワーには共通の香気成分があるそう。カリフラワーのリゾットにトリュフの香り。おいしいでしょうなぁ。
・  ナツメグ……ルイ14世のエピソードの通り。
・  にんにく……ブースト食材なので割愛。
・  サフラン……ミラノ風リゾット(伝統的にサフランで風味付けされる)にカリフラワーを加えたらおいしくなるそう。

どれもおいしくなりそうだが、あまり驚きがないため、今回はインド料理の天ぷらをベースに、ターメリック、ヒング(アサフェティダ)をチョイス。残りのひとつはたまたま手元にあった中華食材の乾燥エビを焙煎して挽き、使うことにした。

●カリフラワーの天ぷら×スパイス塩
【材料】
カリフラワー(小房に分ける) 1個
スパイスA
 ・ターメリック 少々
スパイスB
 ・アサフェティダ 少々
スパイスC
 ・乾燥エビ 少々
てんぷら粉 適量
水 適量

【下準備】
カリフラワーは適量の塩(分量外)と湯で、3分ほど下茹でしておく。ターメリックの場合、この下茹で時に加えて香りと色を付ける。
てんぷら粉と水を混ぜ合わせる。アサフェティダの場合、ここに加えて混ぜ合わせる。
乾燥エビは乾煎りしてミルで挽いておく。

【作り方】
カリフラワーに衣をつけ、180℃の油で3~4分、ほんのり色づくまで揚げる。乾燥エビの場合は、器に盛りつけてふりかける。

『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみた。

◆ターメリックの香気成分
アーシーな香りの素は主要成分のターメロン。ほかにシネオールがあり、グリーンカルダモンやローリエと共通する。インドでは主にカリフラワーを茹でるときの色づけのために(という意識で)使われているスパイスだが、香りの影響が大きいと思う。

◆アサフェティダの香気成分
アサフェティダはセリ科の植物だ。インドでヒングと呼ばれるスパイスは、この植物の茎や根から出る汁のかたまり(樹脂)を固め、乾燥させ、削って粉にしたもの。主要香気成分は、香気成分 (E)-1-Propenyl s-butyl disulfideというもので、58.9%含み、ネギが醸し出す特有の香りのようだ。他の香気成分として、ピネン、フェランドレン、オシメンなどが挙げられる。ピネンはブラックペッパー、メース、カレーリーフなどと共通。フェランドレンはフェンネル、カレーリーフと共通。オシメンはカレーリーフと共通。カレーリーフとアサフェティダは親和性が高いことがわかる。天ぷらの衣にアサフェティダを加え、揚げたてのカリフラワーに生のカレーリーフをまぶしたらおいしそう。

◆乾燥エビの香気成分
DATAには、生の桜エビと1カ月発酵、3カ月発酵の3種について香気成分の分析結果が出ている。乾燥エビは生に近いのだろうか。わからない。発酵の有無で風味はだいぶ変わる結果になっている。トリメチルアミンとアセトアルデヒドは、生から発酵で一気に数値が下がる一方、イソアミルアルコール(バナナ果実の香気成分?)は発酵で一気に上がる。

今回の3種は、使用タイミングがすべて違い、互いの相性も悪くない。下茹でにターメリック、衣の生地にアサフェティダ、揚げたあとのふりかけに乾燥エビ。すべてを使っても当然おいしくなった。ほかにも揚げたカリフラワーをカレーリーフを敷き詰めたざるに上げたりするとよりいい香りが得られそうだ。

もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。

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