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217.シイタケを最もおいしくするスパイスは何か? 問題

そろそろシイタケの季節が終わるのだろうか。
乾燥シイタケは常備していて水で戻しては出汁を取っているが、生のシイタケを食べるなら、煮込みよりも焼くのが好き。オーソドックスな蒸し焼きがいい。傘をひっくり返すようにして、塩をふって焼けばエキスがこぼれずに口に入る。
事前に塩をふってシイタケの中まで塩味を入れ込む方法もあるけれど、粗塩を振って食べるほうが気分が出る。
今回の問題は、オイル部分をどうするか、だ。オリーブ油やごま油もおいしいけれど、スパイスの香りとの相性を試すなら、香りの弱い油のほうがいい。日常的に使っている紅花油や米油にしたいところだが、「シイタケだからなぁ」とぶつぶつ言いながら、我慢できず、日常料理には滅多に使わないバターを採用することにした。

『風味の事典』(楽工社)では、「きのこ」とまとめて記されているため、「シイタケ」だけで合わせているスパイスはない。シイタケの登場する記述を探し、併記されている素材を抜き出してみた。

・  エビ(甲殻類)……日本のシイタケとエビのギョウザ、とあるが、そんなにメジャーな料理なんだろうか? ほかにはロブスターもあるが現実的ではない。
・  サーモン……みじん切りにしたシイタケはサーモンの切り身から最良の味を引き出す、とのこと。興味はあるが、積極的に惹かれるわけではない。
・  栗……意外な素材。シイタケは栗と同じ科に属する期から名付けられているそうだ。栗ならポルチーニとか松茸の方が合いそう。
・  にんにく……間違いないとは思うが、ブースト素材なので割愛。
・  玉ねぎ……シイタケの香気成分、レンチオニンという有機硫黄化合物はにんにくや玉ねぎなどネギ属にみられるスルフィドに似ているそうだ。
・  ベーコン……生シイタケよりも干しシイタケの方が合うとのこと。生と乾燥は香気成分に違いがあるようだ。

スパイスについては提案がないため、今回は香気成分を元に独自に選出することにした。シイタケの持つ香気成分としては、主にトリチオラン、レンチオニン、オクテンあたりがあの独特の香りに貢献しているようだ。生シイタケを調理するが、乾燥シイタケにみられる香気成分で目立ったもの、βピネン、リモネン、オイゲノールの3成分を加えてみる。
すなわち、それら3つの香気成分をメインに持つスパイス(βピネン:カレーリーフ、リモネン:キャラウェイシード、オイゲノール:クローブ)を合わせることにした。

●シイタケのバター焼き
【材料】
シイタケ 大3個
塩 少々
バター 少々
スパイスA
 ・カレーリーフ 1枚
スパイスB
 ・キャラウェイシード 3粒
スパイスC
 ・クローブ 1粒

【作り方】
小さなフライパンにシイタケを逆さにしておき、傘の中にバターとスパイスを入れて塩をふり、ふたをして5分ほど蒸し焼きにする。前半強火、途中から中火。

スパイス塩A、B、Cすべて、どれもおいしく仕上がった。『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみたい。

◆カレーリーフの香気成分
カレーリーフは産地によって品種が違い、確か世界的には3種類に大別される。そのため、含まれる香気成分にも差がある。βピネン、αピネン、フェランドレン、カリオフィレンあたりが強い。柑橘系で甘い香りに特徴があるが、加熱によって香ばしさが際立つ。

◆キャラウェイシードの香気成分
リモネン(45.3%)とカルボン(51.4%)の含有比率が圧倒的に高い。カルボンはイソブレンがふたつ結合したモノテルペン化合物でミントに煮たスッキリ冷涼感のある香りを持つ。個人的にはキャラウェイリーフが気になっているが、どこかで手に入るのだろうか。

◆クローブの香気成分
クローブの香気成分と言えば、オイゲノール(73.95%)が代表格。漢方薬の成分とも共通する奥深い香り。これが乾燥シイタケに含まれることが興味深い。シイタケの香りの一面を増強させたような仕上がりに。好き嫌いは分かれるかもしれないが、「香りの強いシイタケを食べた」という感覚で、言わなければスパイスに気づかない可能性もありそう。

どれもおいしかった。3種のスパイスを合わせてバターソテーをしてみたが、これも素晴らしい。しょう油の使用を我慢した自分をほめてあげたい。

もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。

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