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219.ごはんを最もおいしくするスパイスは何か? 問題

島根県益田市から新米が届いた。いつも佐原ご夫妻の作る「小田又の米」を使わせてもらっている。せっかくだから土鍋で炊くか、と思ったのだが、ほんの出来心でスパイスを加えてみたくなった。米を炊くときに最適なスパイスは?
大分県竹田市で入手したサフランがある。最近、「八世屋」の長谷川ご夫妻の作るサフランを取材させていただいたからだ。まあ、米とスパイスならこの組み合わせがとにかく有名な印象がある。
米にも世界中、いろいろとあるが、今回は、ジャポニカ米(日本の米)を炊く前提で検証してみたい。

『風味の事典』(楽工社)では、「米」自体をまとめた記載はないが、索引から米の登場するすべて記述を探し、併記されている素材を抜き出してみた。

・  ラム……「仔羊肉とアーモンドと米のスープ」のレシピが紹介されているが、中で使用されているのは、サフランだった。パセリとミントも使用しているが、こちらは米とというよりもラムとの相性だろう。
・  ナス&生姜……和食のレシピが紹介されている。しょうがは、確かに合う。炊き込みご飯などでも活躍する。
・  ビーツ&山羊のチーズ……リゾットとしての紹介だから、米の種類が違いそう。さすがにチーズはちょっと。とはいえ、カレーライスのトッピングなら人気上位に必ずチーズがあるし、欧風カレー専門店では溶けるチーズをジャポニカ米と合わせている店もある。
・  シナモン&クローブ……あくまでもインドでバスマティ米を炊くときの方法としての紹介だが、このエッセンスはジャポニカ米でも共通して使える点がありそう。僕自身、シナモンリーフを加えて炊くことはよくある。
・  マンゴー&ココナッツ……これはタイでよくみかけるもち米の料理。
・  レモン&サフラン……パエリア調理時のアイテムとして登場。パプリカにも言及している。パエリアであれば、ローズマリーもありだが、この場合も米の種類が違う。
・  セージ&ベーコン……またもやリゾットの紹介。セージは面白そうではあるが。

「香り百科事典」にはコメの香気成分にも言及しているが、コメの香気成分は難しい。炊飯されたコメの香気成分の「濃度」、「閾値」、「アロマバリュー」について言及されているが、どうも大事なのは閾値のようだ。
専門家のヌマボーイに聞いてみたところ、「閾値とは、人の嗅覚で感じ取ることのできる最小濃度で、よくその匂いの強さをイメージさせるために、学校のプールの水の量が例に出されたりする」とのこと。図解してくれた。
数式までは理解できないが、濃度と閾値の関係としては、濃度が低くても閾値が高ければ結構香る、みたいことと解釈。そうか、香気成分の配合比率が低くても香りへの貢献度が高い場合があるとは聞いていたが、このことだったのか。

ともかく、コメの香気成分から相性のいいスパイスを導くのは難しそうだから、サフラン以外に僕がよく炊いているシナモンリーフとメースを改めて炊いてみた。

●スパイス塩の土鍋ごはん
【材料】
米 3合
水 650ml
塩 小さじ1/2
スパイスA
 ・サフラン 20~30本ほど
スパイスB
 ・シナモンリーフ 3枚
スパイスC
 ・メース ふたつまみ

【作り方】
1.    米を洗って(研いで)、土鍋に入れ、30分~60分ほど浸水する。
2.    塩とスパイスとを加えて強火にかけ、沸騰したら弱火にしてふたをし、15分ほど炊く。
3.    ふたを開けて状態を確認し、ふたをして10分ほど蒸らす。

スパイス塩A、B、Cすべて、どれもおいしく仕上がった。『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみた。

◆サフランの香気成分
サフラナールが60.3%と圧倒的。続いてイソホロンが8.79%。Trimethylcyclohexという成分も出てくるが、これは調べてみると茶に見られるものでもあるらしい。紅茶とサフランでご飯を炊く、みたいなことも面白いかもしれない。
サフランライスは香りがいい。スペインのパエリア、インドのバスマティ米などのイメージが強いが、ジャポニカ米でもとてもいい香りになる。が、先日、イベントでサフランライスを炊いたときに誰かが悪気なく「ちょっと消毒っぽい」と言っていて、確かに角度を変えればそう感じなくもない、と思った。消毒っぽいライスがおいしいのだから不思議だ。

◆シナモンリーフの香気成分
シナモンリーフは、国内で手に入る輸入乾燥モノは、ほとんど使う意味があるのかな、というくらい香りが弱いため、カレーを作るときには、それがインド料理のレシピであっても省くことが多い。ただ、ご飯を炊くと甘いあのシナモンの香りが漂う。そのくらい、ある意味、繊細な香りなのだろう。
葉と樹皮、根でそれぞれ香気成分が違うが、葉はオイゲノールが主力。これは、クローブと共通している。シナモンリーフには70.1%、クローブには69.8%と支配的。独特の癖があって奥深く甘い香りはここから生まれている。

◆メースの香気成分
昔からよく炊いている。メースライスと僕は勝手に呼んでいる。主な成分は、αピネン、βピネン、テルピネン、リモネンあたり。他のスパイスだとクミン、ブラックペッパー、カレーリーフあたりが似たような香気成分を主要としていることもあって、このあたりのラインナップを合わせて炊くのもいいかもしれない。

3つのスパイス塩は、どれもおいしくご飯が炊けた。ただ、たけたご飯を何とどう食べるかによって、味わいも変わる。ごはんは主食だから。ということで、炊きあがったときに味見し、そこから連想して勝手に相性のいいものを合わせてみた。これが3つともどれも大正解だった(あくまでも個人的な好み)から、最後に紹介したい。

★サフラン塩のごはん……鮭フレークと!
★シナモンリーフ塩のごはん……(ちょっと甘味のある)梅干しと!
★メース塩のごはん……生卵としょう油

もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。

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