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214.ナスを最もおいしくするスパイス塩は何か? 問題

カレーの具とスパイスの相性について自分なりの見識を深めたい。
ペアリングとかマリアージュとかいうものは突き詰めれば作り手や食べ手の好みによるという気がするけれど、とはいえ、たとえば自分が作り手としてAIR SPICEのスパイス配合をするときのヒントになるような実験を重ねてみたいと思う。

当面、「素材」×「スパイス」×「塩」の組合せで加熱調理をして試食をしてみようと思っている。スパイスの部分は最大3種。それに塩を合わせて「スパイス塩」とし、進めることにする。初回にナスを選んだのは、キッチンの冷蔵庫に3本、残っていたからである。

ナスは加熱後にとろけるような食感になるのが特徴。
焼いてスモーキーな香りをつけるのもおいしいし、お浸しのように汁気を吸わせるのもいい。
揚げて表面がサクッと中がトロッとさせるのがいい。今回は皮をすべてむいて片栗粉をまぶしたが、皮部分は油を吸いにくいため、縞模様に皮をむく[形だとバランスが取れたかもしれない。

『風味の事典』(楽工社)で合わせているスパイスは以下。

・  しょうが……すりおろして和風の煮物に効かせるレシピが出ているが、千切りにして揚げナスと混ぜ合わせるのが良さそう。
・  チーズ……炭焼きナスとモッツァレラチーズとあるが、揚げナスに削ったパルメジャーノレッジャーノも合いそう。
・  唐辛子……四川料理の「魚香茄子」のレシピが出ているが、唐辛子はブースト材料(万能で何にでも合ってしまう)なので割愛。
・  ナツメグ……揚げナスにすりおろしたナツメグをまぶしたら世界展開できる、とのこと。これは興味がある! ぜひトライしてみたい。
・  にんにく……ババガナッシュ(ババガヌーシュ:中東料理の焼きナスの前菜)が紹介されているが、にんにくはブースト材料なので割愛。
・  パプリカ……トルコのナス料理が紹介されている。ここでのパプリカはホール&ドライを水で戻したものか、生のパプリカが活躍しそう。ドライ&パウダーでまぶしてみたい。

他には、たまたまキッチンにあったピスタチオを採用してみることにした。ピスタチオとナツメグは、クロック(石臼)でつぶして粉にした。

ナスを素揚げするときには、そのままだと油をかなり吸ってしまうし、全体がしんなりしてしまう。ナスのほとんどが水分なうえに加熱によってナスの中の水分が外に出てきてしまうからだ。塩をふってあらかじめ水分を出しておく方法や塩水につけてから水気をふき取って揚げる方法などがあるが、いさぎよく表面に粉をまぶして膜を作る方法を採用した。

●揚げナス×スパイス塩
【材料】
ナス 3本(350g)
片栗粉 30g
揚げ油 適量
スパイス塩A
・ナツメグ 0.5g
・塩 1.5g
スパイス塩B
・パプリカ 0.5g
・塩 1.5g
スパイス塩C
・ピスタチオ 0.5g
・塩 1.5g

【作り方】
ナスの皮をむいて乱切りにし、片栗粉をまぶす。180℃の揚げ油で4分〜4分30秒ほど揚げる。ザルにあげて油を切り、スパイス塩をまぶす。

スパイス塩A、B、Cすべて、どれもおいしく仕上がった。『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみたい。

ナスは、ナス科。トマトや唐辛子も同じナス科だから相性がいいはず。確かに組み合わせた料理は多い。

◆ナスの香気成分
「ナスの特徴香気成分は、2つの環を持つモノテルペンのCar-3-ene(カレン)であると報告されている」とある。カレンを調べてみると、甘く刺激性のある香り。天然のものでは松やローズマリーに確認されているそうだ。ローズマリーも相性が良さそう。最後にほんのり香りづけをするために、ローズマリーを1本、2本しいた器に揚げナスを盛りつける、くらいがいいと思う。

複環式モノテルペンは、カレンの他にピネン、サビネン、カンファー、シネオールなどもあるから、これらを含むスパイスとの相性はよさそうだ。

◆ナツメグの香気成分
αピネン、βピネン、d-カンフェンで精油の約80%を占める。いずれも複環式モノテルペンなので、ナスと同じ香気成分を含み、増幅効果が期待できる。

◆パプリカの香気成分
主要香気成分は、βエレメン、ゲラニルアセトン、βイオノン、β-6-メチル-3.5など。これらの成分とナスとの相性は、ちょっと不明。ただ唐辛子にも共通して含まれるピラジン類。ピラジン類は、揚げ物などに含まれている香ばしい香りを生む成分。アミノ酸と糖質が化学反応を起こすメイラード反応によって発生する。揚げナスには合う。

◆ピスタチオの香気成分
焙焼(200~220℃、20~30分)したピスタチオのアセトン抽出物を蒸留し、得た成分に強いナッツ様の香気を有しており、そのうち最も多く含まれていたのが2.5-ジメチルピラジン(92.91%)。これを特徴成分としている。パプリカと同じくピラジン類が揚げナスと合うのかもしれない。

ちなみにピスタチオについて興味深いDATAがあった。ナッツと呼ばれているものの中で比較すると、必須アミノ酸含量はピーナッツ、カシューナッツに次いで多く、食物繊維含量はアーモンドに次いで多いそうだ。

いずれにしても、ナツメグ、パプリカ、ピスタチオはどれも相性がよかった。が、3スパイスをブレンドしたスパイス塩Xが最もおいしかった。
もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。ま、最終的に、僕には何もわからない。

https://airspice.stores.jp/items/56c561a22b34927f7c0011d1

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