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215.ジャガイモを最もおいしくするスパイスは何か? 問題

じゃがいもは何してもうまい素材のひとつ。
今年の2月に原産地のペルーを訪れたが、現地には何千種類ものじゃがいもがあるそうで、ペルー様様だ。
シンプルにじゃがいものおいしさを味わおうと思ったら、皮つき丸のまま蒸すか茹でるかするのがいいんじゃないかな。フライドポテトも定番だけど。

『風味の事典』(楽工社)で合わせているスパイスは以下。

・  クミン……相性はインド料理で実証済み。
・  セロリ……ローストしたセロリシードを砕いてポテサラに入れる。おいしそう!
・  サフラン……サフランの黄色がにじみ出た液体で調理したジャガイモはこの上なく食欲をそそる、という。今回のように茹でる場合、液体調理ではもったいないため、バターに溶かす方法を取ってみる。
・  香菜……アーシーな香りに共通点。ラテン系、特にコロンビアで親しまれるスープ料理、カルド・デ・パパを例に挙げている。
・  ローズマリー……相性はローマのピッツァ・ビアンカで実証済み。
・  ディル……ポーランドではディルのないポテサラは「もじゃもじゃの口ひげを生やしていない組合長のようなもの」とのこと。面白い。
・  パセリ……ポルトガルのヴィーニョヴェルデと蒸かしたジャガイモに刻んだパセリはイワシの炭焼きにピッタリ、と。ポルト旅が懐かしい。
・  唐辛子……唐辛子というよりスモークドパプリカとの相性。確かにそれはよく合う。
・  ナツメグ……ジャガイモの土臭さをナツメグが消す。
・  にんにく……ギリシャ料理のスコルダリアを例に。ブーストアイテムなので割愛。
・  ピーナッツ……府一袋分の塩味のピーナッツをポテトチップスのソルト&ビネガー風味の袋に入れて振る。ラガービールに合うそう。
・  ミント……イギリスの作家ジョージ・オーウェル曰く「新ジャガイモをミントと一緒に煮てバターで和えた料理はフライドポテトよりも優れている」とのこと。

さすがのじゃがいも、何でもいけてしまう。

●ほくほくジャガイモ×スパイス塩
【材料】
じゃがいも 大4個(640g)
水 たっぷり(適量)
スパイス塩A
 ・セロリシードパウダー 0.5g
 ・塩 1.5g
スパイス塩B
 ・サフラン ひとつまみ
 ・塩 1.5g
スパイス塩C
 ・ドライスペアミントパウダー 0.5g
 ・塩 1.5g
バター 各10g

【作り方】
鍋にジャガイモとひたひたになる程度の水を入れて強火にかけ、沸騰するまで7~8分、沸騰後、そのまま20分ほど煮る。ざるに上げて粗熱を取り、皮をむいておく。
耐熱皿にバターを入れてレンジで溶かし、スパイスと塩を混ぜ合わせ、ジャガイモの上からかける。

スパイス塩A、B、Cすべて、どれもおいしく仕上がった。『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみたい。

◆ジャガイモの香気成分
ベイクドポテトとボイルドポテトの香気成分は違うそうだ。表にはボイルドポテトの香気成分一覧がある。ヘキサナールが60%という高い数値で目立っているが、ヘキサナールについての記述はない。一方で、cis-4-Heptenal(0.2%)、trans-2-trans-4-Nonadienal(0.3%)などの不飽和アルデヒド類が重要な香気成分とのこと。
香気成分の含有比率と香りの貢献度は必ずしも比例しないそうだが、ヘキサナールの貢献度は気になるところ。大豆や草などの青臭さの原因とされているらしく、料理として好ましい香りではないということだろうか。ただ、ヘキサナールも不飽和脂肪酸から生成した揮発性アルデヒドらしい。
専門家のヌマボーイに尋ねると「じゃがいもにおける揮発性アルデヒドをまとめて表現すると、揚げ油の匂い」とのこと。「加熱されたジャガイモにある揮発性アルデヒドは、ツンとした刺激があります。その酸化した油脂的な香りが、油と合わされることで、一体感をもたらすのかも?」との追記があって、そういう意味では、バターを合わせるというのが理にかなっているのかもしれない。ポテサラのマヨネーズも。

◆セロリシードの香気成分
リモネンが圧倒的に多い。フェンネルやブラックペッパーにも多い成分だ。他にはβセリネン、セダンノリド、セダネノリド。ちょっと香りへの影響は把握しにくい。セロリソルトというミックス塩が昔から存在するだけにジャガイモとの相性もいい。

◆サフランの香気成分
サフランは少量の牛乳を温めて色と香りを抽出してからバターと混ぜ合わせた。香気成分はサフラナールが60%と圧倒的。今回最もじゃがいもと合うフレーバーだったかもしれない。

◆スペアミントの香気成分
ドライミントパウダーは意外にもかなり有効に機能した。成分としてはリモネンが多く、セロリシードと共通している。他にカルボンはキャラウェイに多く含まれる。テルピネンはクミンやメースに多く含まれる。

ちなみに合わせている食材は以下。

ウォッシュチーズ、貝、甲殻類、きのこ、キャビア、キャベツ、牛肉、グリーンピース、スウェーデンカブ、卵、玉ねぎ、トマト、トリュフ、ビーツ、ベーコン、仔羊肉

やはり、何でもいける。アンチョビや塩辛みたいなものも合うしね。バリエーションを持たせるときに合わせる素材のヒントになりそうだ。たとえば、ポルトガルのスープ、カルド・ヴェルデ(僕が好きで『クリスチアノ』で毎回かならず頼んでいた)風の料理を作ってみる。縮みキャベツは手に入らないから青菜類がないし、ドライソーセージもなかった代わりに塩漬けにしておいた豚肉があったので、それで応用。ハーブでうっすら香りづけ。

●カルド・ヴェルデ風スープ
【材料】
茹でたじゃがいも 400g分
塩漬け豚肩ロース肉(スライス) 35g
湯 400ml
スパイス塩
 ・セロリシードパウダー 4g
 ・ドライミントパウダー 3g
 ・サフラン ひとつまみ
 ・塩 2g
バター 20g

【作り方】
鍋にバターと豚肉を加えて表面全体がカリッとするまで炒める。その他の材料をすべて入れて煮立て、極弱火にしてふたをして25分ほど煮込む。適宜、ジャガイモはつぶしながら。

これが一番うまかった、かも。パルメジャーノレッジャーノを削ってふりかけたら、大変な満足度だった。けど、さすがにチーズはやりすぎたかな。
もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。
 

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