218.ポロネギを最もおいしくするスパイスは何か? 問題
ポロネギを畑で収穫した。ポロネギとはリークとかリークとかポワローネギとか西洋ネギとか言われるもので、地中海沿岸原産。ユリ科ネギ属の二年草。
ポロネギを使ったレシピでおそらく最もメジャーなのはビシソワーズだろうか。ほかには、グラタンやスープなどがあるが、豚肉やベーコン、じゃがいもと合わせる料理がとにかく多く親しまれ、紹介されている。
この実験シリーズでは、できる限り単体の素材とスパイスとの相性を合わせることにしているから、合わせたいジャガイモや豚肉を我慢して、ポロネギだけで作れる料理を考えることにする。その前に、他の素材の相性を見てみたい。
『風味の事典』(楽工社)では、「ポロネギ」自体をまとめた記載はないが、索引からリーキの登場するすべて記述を探し、併記されている素材を抜き出してみた。
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・ ブイヨン……ブイヨンやコンソメは定番。スコットランドの伝統料理「コッカリーキ」というスープが紹介されている。
・ ブラックプディング……イギリス料理で「血のソーセージ」と呼ばれることもあるもので、豚の血にオーツ麦や豚の脂肪分を混ぜ合わせたソーセージ。これ自体にスパイスやハーブが使用されているが、これを使ったパテのレシピが紹介されている。この中でマスタードパウダーが使われていて、興味を持った。
・ ローズマリー……山羊のタルトの材料にローズマリーとリーキがある。ちょっと遠い関係だが、相性はよさそうだ。
・ パセリ……トマトとじゃがいものスープにリーキを使っていて、仕上げにパセリ(他にはチャービルも)がトッピングされている。
・ ベーコン……ベーコン&玉ねぎ、ハム&リーキは、ステーキ&キドニーパイに負けないぐらいおいしい、とのこと。肉の燻製香がリーキと相性がいいのは想像しやすい。
・ グリーンピース……プティポワという甘みの強いグリーンピースを使った「プティポワ・ア・ラ・フランセーズ」のレシピが紹介されている。甘みの強い食材とリーキは合うし、リーキ自体の甘みも強い。砂糖を少しだけ加えるのはちょっとずるいけれどありかもしれない。
キーワードとして挙がったスパイス(ハーブ)の中から、気になったマスタードパウダーと(イタリアン)パセリをチョイス。地中海沿岸原産の野菜だから、トルコで入手したケキッキというハーブも。ミックスペッパーもあったから、今回は4種を試作することにした。
ベーコンや塩漬け豚肉などの肉類は使わないが、スモーキーな香りを演出するために、あえてポロネギの表面を焦がすスタイルで調理してみることにする。
●ポロネギのポタージュ
【材料】
ポロネギ(リーキ・3センチ幅に切る) 440g
オリーブ油 大さじ1
砂糖(なくてもOK) 5g
水 400g
生クリーム 200ml
塩 5g
スパイスA
・イエローマスタード(石臼でつぶす) 少々
スパイスB
・ケキッキ(手で揉んで粉にする) 少々
スパイスC
・ミックスペッパー(ミルで挽く) 少々
【作り方】
1. 鋳鉄鍋にオリーブ油を熱し、ポロネギを入れて両側の断面、側面を転がしながら中火で7分ほど焼く。ふたをして3分ほど蒸し焼きにする。
2. 水を注いで煮立て、砂糖を加えてふたをして、弱火で20分ほど煮る。
3. 粗熱を取ってミキサーでピューレにし、鍋に戻す。生クリームを加えてふたをあけたまま3分ほど煮る。
4. 器に盛ってスパイスA~Cと塩をトッピングする。
スパイス塩A、B、Cすべて、どれもおいしく仕上がった。スパイスDとして試作したイタリアンパセリだけは相性があまりよくなかったため、割愛。『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみた。
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◆マスタードの香気成分
世界の産地ごとにブラック、ブラウン、イエロー、ホワイトマスタードの大きく4種に分類される。イエローマスタード単体の香気成分の記述はない。独特のツンとした香りと辛味は、すり潰すことによってシニグリンという成分が共存するミロシナーゼの作用によって加水分解し、アリルイソチオシアネートが生まれることによるものだ。この香りと辛味にポロネギの甘みを引き立てる効果があった。南インド式に高温の油で加熱したナッツ香も相性はいいと思う。
◆ケキッキの香気成分
トルコで取材したときには現地のスパイスの専門家ですら、「オレガノのようでもあり、タイムのようでもある」とその存在を説明し難いものと捉えており(ケキッキはケキッキである、と解釈すべきなのだろう)、香気成分の参考文献にもさすがにケキッキについては記述なし。手元のケキッキはオレガノに近い香りを持つため、オレガノをチェック。carvacrol および thymolの配合比率が高いが、これはオレガノとタイムに共通する香気成分。ケキッキの香りがどちらとも言えるのは納得がいく。さわやかでありながら少しほろ苦さもある香り。トマトやチーズなどに合うから、リーキのポタージュに応用するのもよさそう。乳製品は生クリームで補っているから、トマトをリーキと一緒に煮込むのがいいかもしれない。
◆ペッパーの香気成分
香気成分で目立つのは、αピネン、βピネン、リモネン、サビネン、カリオフィレンあたり。辛み成分としてのピペリン。ペッパーは何とも相性がいいスパイスなので、考察は省略。
3種のスパイスを混ぜ合わせたが、今回はブレンドについてはあまりいい効果を発揮しなかった。
もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。
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