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226.牛ヒレ肉を最もおいしくするスパイスは何か? 問題

ローストビーフはよくやる料理だ。フライパンで焼いては休ませ作る場合もあるし、表面だけ色づけて低温オーブンで焼くときもあるし、低温調理機を使うこともある。いずれにしても肉の重さに対して1%の塩をまぶして(肉のサイズにもよるけれど)3~4時間以上置くことには変わりはない。ただ、スパイスの香りがローストビーフの中まで浸透しないことは、100時間マリネの実験で確認済みだから、スパイスの香りを肉に漬けようと思ったら、肉の表面の油脂分に溶け出させるしかない。スライスにして口に運べば香りは感じるからそれで問題ないのだけれど。

ただ、「表面を焼き付ける」という定番のプロセスは、そのタイミングで肉の表面にまぶしたスパイスが焼けてしまって、思うようなゴールを迎えられないから、焼くなら焼いた後にスパイスをまぶすのがいい。

今回、スパイスはオーソドックスなものを選んで作り比べることにした。もっとも定番のブラックペッパー、アメリカンな「バーベキュー味」を醸し出すスモークドパプリカ、ジャマイカのジャークチキン、ジャークポークのニュアンスに近づくオールスパイスの3種。
互いの香りが混ざってしまわないよう、真空にして低温調理器を使った。

●ローストビーフ
【材料】
牛ヒレ肉(ブロック) 1500g
塩 15g
スパイスA
 ・ブラックペッパー
スパイスB
 ・オールスパイス
スパイスC
 ・スモークドパプリカ

【作り方】
1.    牛肉に1%の塩を刷り込み、4~5時間ほど置く。
2.    スパイスをまぶし、袋に入れて真空にし、低温調理機で適切な加熱をする。

『食べ物 香り百科事典』(朝倉書店)を元に香気成分をチェックしてみた。

◆ブラックペッパーの香気成分
主要成分はサビネン、βピネン、リモネン、βカリオフィレンあたり。サビネンで共通するガーリックはブースト素材だが鉄板のおいしさ。リモネンとカリオフィレンで共通するカレーリーフは微妙。

◆オールスパイスの香気成分
ブラックペッパーと同じくβカリオフィレンが主要成分のひとつ。相性はよさそうだ。圧倒的に多いのはオイゲノールで、クローブにもかなりの比率で含まれている。オールスパイスとクローブは両方を使う必要はないだろうから、やはり、ナツメグやシナモンのニュアンスを併せ持つオールスパイスは重宝しそうだ。

◆スモークドパプリカの香気成分
βエレメン、をはじめ、いくつか主要成分があるが、他のスパイスと共通するものが見つかりにくい。ただ、チリとは共通項が多いため、チリをうま味と香りのブーストアイテムと設定している僕の感覚からすれば、パプリカの香りもかなり有効。問題は「スモークド」の部分で、スモークしたことによって生まれる香り成分についての表記が見つからなかった。
「バーベキュー味」という不思議な表現の風味に最も貢献するスパイスは、ガーリックとスモークドパプリカじゃないかと思っていて。そういう点では、おいしさの一端を担っていると言えそう。ローストビーフはやはり表面を焼き付けたときに生まれるメイラード反応による香ばしい風味が大事だと思うから、今回のように焼き付けをしない手法を取る場合、スモークドパプリカに頼る部分は大きくなると実感した。

今回については、すべて抜群の香りを生んだし、3種はブレンドすればおそらくどの1種類よりもいい香りになったはずだと思う。
試作中に新しい香りを思いついた。微量の「コーヒー豆の粉」を混ぜ合わせてみたらどうだっただろうか。次回の課題にしたい。
もっと他に相性いいスパイスがあるかもしれないし、ないかもしれない。
ま、僕には何もわからない。

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