"YouTubeディレクター"によるYouTuberのテロップについての考察。
皆さん、初めまして。赤津です。
軽く自己紹介をすると、今年でYouTuber歴6年目に到達し、現在は主に裏方業である"YouTubeディレクター"と、Minecraftをメインに扱っているゲーム実況者として活動している2001年生まれ18歳の現役男子高校生です。
今まで編集した動画の総再生回数は1億回を超え、まだチャンネルすら開設していない所から、登録者数百万人台のチャンネルまで幅広く編集やフォーマット作り、専門学校の講師などのお仕事をさせて頂いております。
ここ数年でYouTube業界は大きく変化をしました。
YouTuberは組織化・業務のアウトソーシング化が進み、より高クオリティな動画配信が求められており、その中で僕は"表の世界"である、YouTuberから"裏の世界"であるYouTubeディレクターにシフトしました。
"YouTubeディレクター"という仕事柄、新規チャンネルの設立や編集体裁の見直し業務もペースでいうと1ヶ月に1本以上携わっており、コンセプトのヒアリングから編集フォーマットの作成をしています。その為、テロップの研究にもかなり時間を掛けています。
このnoteでは『YouTuberのテロップ』についてフォーカスし、YouTuberの方、YouTuberを目指す方、また僕と同じようなYouTubeの編集者の方に向けて考察・解説をしていきたいと思います。
YouTuberのテロップ解説については他の方も記事にしており、参考にさせていただいたため、1番最後に紹介させていただきます。
編集ソフトから見るテロップの主な分類
主にYouTuberのテロップは大きく分けて2つに分類されます。
YouTuber黎明期に多く使用されたApple社から発売されているFinal Cut Pro X(以下 Final Cut)と、Adobe社から発売されているPremiere Pro、この2つの動画編集ソフトを用いて多くのYouTuberの動画は制作されていますが、上記画像のような特徴があり、見分けが容易に可能になっています。
"ヒカキンの名前の由来と発音!"
一見するとFinal Cut側にデメリットが多く存在するように感じますが、スマホの初期状態からインストールされているiMovieとの互換性や、Premiereに比べて操作が直感的でなおかつある程度高度な編集が可能なことから、黎明期に広く普及しました。
"【超巨大】跳び箱20段にヒカキンが挑戦!余裕だろ!【モンスターボックス】"
Final Cutを使用している有名なYouTuberさんは、HikakinTVさん(HikakinGamesはPremiereを使用)や、東海オンエアさん、禁断ボーイズさんなどがいます。
"最強のフォント「モリサワフォント」買ってみた!"
それに対し、Premiere Proは瀬戸弘司さんを筆頭に、ヒカルさん、はなおさんなどがいます。
Premiere ProはFinal Cutに比べて、複数人でのデータ共有が容易であるという特徴があります。
プロジェクトデータの容量が数十GBを超えるFinal Cutと比べ、Premiere Proは数MBで収まることや、Gigaファイル便などでの送受信が簡単に出来るため、近年の組織化の流れからPremiere Pro勢が多くなってきていると感じています。
※ Final CutはMacのみでしか使用出来ないという背景もあります。
テロップの変化と業界トレンド
ここ2〜3年でYouTuberのクオリティは毎年上がってきており、今年は"1週間シリーズ"でバズを生み出した『だいにぐるーぷ』がYouTubeシーンに登場。
"心霊スポットで1週間生活してみた。【1日目】"
クリエイティブアーティストとしても活躍するYouTuber『あさぎーにょ』さんも、以前のYouTubeシーンで流行していたグラデーション、アウトライン。といったようなテロップとは異なるシンプルなテロップ設計を積極的に行なっている印象があります。
"ハロウィン雑貨がカオス過ぎる【フライングタイガー】"
2014年代から「ヒラギノ角ゴ」系列が多く使用され、現在もYouTube上で散見されますが、2017年代以降明朝体やモリサワ・フォントワークス系の有料フォントや、高品質なフリーフォントを使用しているYouTuberさんも増えてきました。
キャッチーでカラフルなテロップが主流のYouTubeですが、シンプル、スッキリ。
といったテロップも一定の牌を持ち始めた印象です。
恐らく今後こういった系統のテロップも増えていくと予想されます。
クオリティを低労力で底上げするテロップベース時代の到来
YouTuberも組織化の時代となり、企画のプロ、編集のプロ、そして事務所と数段階のバッググラウンドが存在する環境下で動画投稿を行うようになりました。
編集者も毎日高いクオリティーで投稿する上で、編集者が1人だけの体制だと投稿時間に間に合わなくなってくる状況に陥ることになります。
そうなってきた時に必要になるのが"編集の低労力化"になります。
"世界の果てまでイッテQ!"
テロップベースは言葉の通り、テロップ(字幕)の下に敷いてある画像のことです。テレビだと「座布団」と言われています。
このテロップベースは毎回0から作る訳ではなく最初に数枚作ってしまえば、後は作ったテロップベースを使い回しするだけになります。
しかも、このテロップベースは敷くだけでただのテロップの見栄えが格段にアップする為、労力に対しての効果がかなり高く編集方法の1つとして広がりを見せています。
このテロップベースを効果的に使用されているYouTuberの代表としてえっちゃんねるさんが有名です。
"【開封】3年間10万円たまる貯金箱に適当な小銭を大量に貯め続けた結果…【500円玉貯金箱】"
上記画像を見ていただければ分かるかと思いますが、かなりクオリティの高いテロップベースを作成し使用されています。
実際の工数としては、基礎テロ(喋り言葉に併せて入れているテロップ)と同じくらいの工数しか掛かっていません。
ただ、多様し過ぎるとYouTubeの"個人感”が無くなってくる為、入れるポイントも重要です。
特に裏方がいない、という設定でやっているチャンネルは、テロップベースで俯瞰的なコメントを入れれば入れるほど視聴者にも見透かされてしまうので、かなり気をつけるポイントだと思います(笑)
※ テロップに入れる言葉選びはまた別の機会に解説させていただきます。
"WEEKLY OCHIAI「人類をアップデートせよ」ダイジェスト"
流行したテロップベースの1つとして、NewsPicks系と呼ばれているテロップベース、それに付随しているエフェクトがあります。
対談形式の動画は"動きが少ない"ため、視聴者が飽きやすくなる傾向があります。
そうした問題をテロップの出入りでカバーすることによって、現場の白熱感やスピード感が伝わりやすく、また非常にシンプルなデザイン、なおかつ色味もあり、優れたテロップデザインになっています。
YouTubeの編集に大きく影響を与えたテレビ番組
話は大きく変わりますが、総務省が発表した、平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書によると、10代〜20代のYouTubeなどのネットメディア利用率は90%を超えています。
今のエンタメ系YouTubeのメイン視聴者層は10代〜20代前半、1990年代後半〜2000年代の人、まさしく僕がその世代なのですが、振り返ってみると小さい頃から数多くのテレビ番組に触れて育っています。
トリビアの泉、はねるのトびら、めちゃ×2イケてるッ!、エンタの神様などなど…。
スマホを持ち始めてからはテレビを見ることは少なくなりました。学校でもテレビよりもYouTuberの話題の方が多いです。
ですが、今でも話題の中に挙がってくる番組があります。
それは、「水曜日のダウンタウン」と「月曜から夜更かし」です。この2つの番組はYouTube業界に強い影響をもたらしています。
"水曜日のダウンタウン"
水曜日のダウンタウン・月曜から夜更かしの編集は編集者にとってかなり勉強になる番組で、コンセプトに対しての色感・フォーマットのセンスがピカイチです。
YouTubeでは主張の激しいテロップを使うのは、正直ごちゃごちゃとした印象を与えるため、そこまで使わないようにしていますが、水曜日のダウンタウン「〇〇説」の部分で使用されているダイナフォントの「ロマン雪」は、特殊系なのにも関わらず、デザイン性、識字性共に優れています。
"水曜日のダウンタウン"
ミスターSASUKE、山田勝己さんが喋る時のみ、特殊な筆文字でテロップが表示されるのですが、上記画像を見て頂いて分かる通り、1番左と、その隣の「こ」の文字が少し違います。
このフォントが欲しくなって少し調べてみたのですが、ネット上で"絶対フォント感"を持つ方々が手書き説を提唱しています。
通称"山田フォント"と呼ばれているこのフォントを知っている方がいましたら教えていただけると幸いです。
”月曜から夜更かし"
月曜から夜更かしは個人的に好きなテロップが多いので、いくつかご紹介させていただきます。
”月曜から夜更かし"
月曜から夜更かしの番組内では、ここぞ、の面白いポイントでかなり明朝体を多用する印象があります。
僕も個人的な好みで、基本的に面白いポイントでは白黒のみの明朝を使う傾向にあります。
演者が発したワードが、言葉だけで面白い、みたいな時は特に効果的です。
"月曜から夜更かし"
例に挙げるとこういうのでしょうか。顔とテロップが最高に良いです。
”月曜から夜更かし"
変化球として、通称"スケベ明朝"もかなりの頻度で出てきます。お年寄りに使えば使うほど面白そうなテロップですが、YouTubeでこれを使うと、少しスベりそうな感じもします(恐らく使い方による)
まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございました。かなり書き殴りしているので、少し読みづらかったり分かりづらい部分もあるかと思いますが、ご容赦ください。
こうして文章にしてみると、普段自分が編集する上で気をつけていることの言語化は難しいなぁ、と改めて痛感しました。
動画編集で美味しいご飯を沢山食べているのにも関わらず、こんなこと言ってしまうと少しおかしいかもしれませんが、極論編集をしなくても面白くて、見やすいのであらば、それが正解だと感じます。
視聴者は面白い編集を求めているのではなく、面白い動画を求めているので、動画編集は、限り無く面白い動画にする、プロセスの一種なだけだと思っています。
数年前からテロップ表現の種類は増えてきましたが、これからは"なるべくシンプルでおしゃれ"と、"テレビ系テロップ"の二極化が進んでいくと思います。
そして、コンテンツ力の高い物がバンバン出てくるでしょう。そうなった時に、負けないようクリエイターとして頑張ろうと思います。
最後に、今回の記事を書くきっかけとなった狭間祐至君の記事を紹介させていただきます。
こちらの記事は10年間のYouTuberのテロップの移り変わりについて考察しており、むちゃくちゃ言語化されているので、是非皆さん併せてご覧ください。
長ったらしく書きましたが以上です。
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