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140字小説 No.-211‐215

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【No.-211 食材の声】
私は食材の声を聞くことができた。初めこそ楽しかったけど、仲良くなった野菜達は調理するのが憚られるし、ご飯をよそえばお米達が「たった一粒の妹だったのに…」と涙を、いや、でんぷんを流すから食べにくい。プリンに愚痴をこぼしながら「僕でも食べて元気を出しなよ」のお言葉に甘える。

【No.-212 音泳ぐ】
「今日の天気は晴れのち音でしょう」夕方から夜にかけて騒がしくなるらしい。濡れる代わりに雨の音だけが街を打つ。傘を差すとメロディーが弾けて、踵を鳴らせば雫が躍る。イヤフォンを忘れてしまったけどたまにはいいだろう。どんなに足取りは重くても、たんたんとたんと階段を駆け上がる。

【No.-213 混ぜ淀む】
湯切りの苦手な彼が、茶こし付きケトルにカップ焼きそばと水を入れて沸騰させる。注ぎ口から熱湯を捨てて、やかんの中でかやくとソースを混ぜれば完成だ。そのまま食べれば容器でゴミ袋が汚れる心配もない。「君に手間はかけさせないよ」笑う彼を無視する。ケトルを洗う私の苦労も知らずに。

【No.-214 巡礼者】
鍵のかかった檻に小説や絵が届く。誰かの物語を丁寧に解いては飲み込んで、私の感じた味を嘘偽りなく言葉に直す。閉ざした世界の外は眩しい。鉄格子の間から感想を綴った紙飛行機を投げる。例え夢半ばで塵になっても、まっしろになっても。彼に伝えるために。彼女に見つけてもらうために。

【No.-215 ゆめいっぱい】
「ちびまる子ちゃんの食卓を囲む場面って、いつも一人足りない気がする」日曜の夜にアニメを観ながら彼女が呟く。幼少の頃から側にあった光景だから、自分も家族になった気分なのだろう。幸せそうにご飯を食べる姿を見てお腹が減る。憂鬱な月曜日も笑うために。手を合わせて、いただきます。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652