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音調140字小説まとめ③

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【No.-017 ベル】
水彩絵の具で手紙に絵を描く。小窓を開けて鈴を鳴らすと、青い鳥が飛び込んでくる。青い鳥は手紙を咥えてどこかへ羽ばたくと、やがて多くの感想や感情を持って帰ってきた。毎日、毎日、鈴を鳴らして絵手紙を誰かに送る。顔も、声も知らない人達に向けて。今、五十回目の鈴が辺りに鳴り響いた

【No.-027 流線形に象る】
十年前、海岸沿いに『エンディング・ピアノ』が漂着した。誰でも弾けるように整備されたピアノは、見た目は酷く寂れているのに、その音色は聴くものに安らぎと終焉を与える。波風が私を流線形に象った。もし、波を切り取ることができたら。なんて笑って。どこからか、うみねこの鳴く声がした

【No.-046 線香花火】
恋の病を患って入院することになった。病室の窓から覗く線香花火の木を見つめる。パチパチと燃える花火が全て散ってしまったら私は死んでしまうだろう。ドキドキする度に花火が落ちていく。ふいに好きな男の子がお見舞いに来て心臓が高鳴る。蝉が鳴く。ラムネが弾ける。線香花火が淡く光った

【No.-077 声の形】
いつも無口なあの子は、お昼の校内放送が好きだった。放送委員に立候補したときはみんな驚いたけど、今では誰もが楽しみにいている時間だ。かろやかな声は聞く人の心を弾ませる。話すのが苦手なだけで伝えたいことがいっぱいあるのだ。人見知りな僕も、いつか、本当の声であの子と話せたら。

【No.-079 クロデンワゼミ】
ジリリ、ジリリ。と電話が鳴ったので取ると、受話器の向こう側は静かだった。窓の外にはクロデンワゼミが網戸に張り付いている。今年は猛暑のせいで、例年よりも大量発生しているらしい。ジリリ、ジリリ。電話の鳴き声を聞く度に懐かしさを感じていく。世界は『昭和』に侵食されつつあった。

【No.-091 青春花火(藍煩い⑧)】
人生最期の日だというのに、高校の友人達が私を河川敷に連れ出す。電話越しにカウントダウンする友人の声がゼロを告げると、打ち上げ花火が夜を裂いた。後ろから「逃げろ!」と背中を押す友人達と一緒に、青春のくだらなさの中を走る。午後九時、藍色の夜に、藍色の花火と笑い声が上がった。

【No.-100 花うたい(藍煩い⑰)】
朝方の河川敷でケースからアコースティックギターを取り出すと、あたしの瞳に気付いた人達が寄ってくる。始めは同情の気持ちで聞いていたお客さん達が、次第に体を揺らしながら声を上げた。午前六時、お別れの曲をアップテンポで歌う。なんとも素晴らしく、アンコールのいらない人生だった。

【No.-116 誘いの声】
取り壊しが決まった百貨店に訪れる。中は人が多いのに暗い。『××ちゃんのお母様、娘さんがお待ちです。一階までお越し下さいませ』亡くなったはずなのに、店内放送から流れる娘の幼い声に涙が伝う。ふらふらとした足取りでサービスカウンターに着くと、虚ろな目をした人達で溢れ返っていた。

【No.-119 美しい鳥達】
ラジオを聴いていると二人の女性が創作の話をしていた。スランプ撃退法。作品タイトルの名付け方。小説執筆論。ゆるっとしたおはなしは気持ちが軽くなる。「みんな、ではなく。だれか、の心に残る一文を」縋るようにどちらかが呟く。光だって、闇だって、後ろ向きに肯定してくれる気がした。

【No.-137 朝焼けと雀】
下北沢のライブハウスで歌っていたインディーズバンドも、今や恋愛ドラマの主題歌に起用されるまで有名になる。誰のものでもない抽象的な曲が、誰かの物語になってしまうのがこわかった。あれは確か、別れの歌詞のはずなのに。厄介な僕の感情をあざ笑うように、朝焼けの中で雀が鳴き始めた。

【No.-161 ノーチラス】
集落では年に一度、空っぽのコップから透明を飲む仕草をする儀式があると話す。満たすのではなく、失うのを目的にして心に流し込む。遥か昔、この場所は街だったらしい。集落を襲った『何か』を忘れるための所作だと言う。「風化するのは悪いことじゃないよ」溢れた涙から、潮騒の音がした。

【No.-172 残響の街(正しい街の破片②)】
誰もいないはずの路地から会話が聞こえてくる。驚く私に老夫婦のおばあさんが『この街は声が遅れて届くのです』と紙にペンを走らせた。そのとき――「ジジイになってもお前のこと好きだからな!」どこからか無邪気な男の子の声が響く。咳払いを一つして、おじいさんが恥ずかしそうに笑った。

【No.-175 退行の街(正しい街の破片⑤)】
小学校のチャイムが鳴り響く。駄菓子屋、塩素の匂い、ラジオ体操。どこか懐かしさを覚える。大人はいないのか、街は子供で溢れていた。景色が遠のく。きづけば私のからだがちいさくなっていた。こども達がてまねきする。はやくここからにげないと。わたしはよちよちとつぎのまちにむかった。

【No.-177 疑声の街(正しい街の破片⑦)】
蝉の声、祭囃子の喧騒、花火の音。「楽しんでいってくださいね」「……ありがとうございます」会話を交わす度に眩暈を起こしそうになる。猫の鳴き声や工事音には辟易していた。辺りを見回しても街は更地だというのに、私は誰と話していたというのか。まるで音だけが生活しているようだった。

【No.-179 雨鳴の街(正しい街の破片⑨)】
雨が降ると美しいメロディーが広がった。街に存在する全ての物体は、硬度や材質、温度の違いによって様々な音を生み出す。濡れるのも厭わず、住民達の慣れた手つきによって物体が動かされていく。「旅の方にプレゼントだよ」不規則だった音はやがて、盛大なファンファーレに変わっていった。

【No.-188 潮騒の街(正しい街の破片⑱)】
地面を歩けば波の音がする。空には魚が泳ぎ、景色が揺らめく。感覚がないだけで、この街は確かに海底なのだ。気付いた瞬間、泡を吐いて溺れそうになる。意識が微睡むほどに潮騒が大きくなった。流される私の体を人魚の手が掴む。「大丈夫。落ち着いて」深呼吸をすると、ふわり、海を纏った。

【 No.-196 時計の街(正しい街の破片㉖)】
街の至る場所に時計が飾られていた。その人にとっての大切な時間や、固執している日付を指しているという。花時計、水時計、振り子時計。無数の時計の中から自分のものを見つけたとき、止まっていた『何か』が動き出すそうだ。チクタク、トクン。心臓の音を頼りに、呼応する時間を探し出す。

【No.≠013 リプレイ】
夜の海に浮かぶ観覧車に私は思わず足を止めた。網目状に広がる骨組がまるで蜘蛛の巣のように思えて、さながら私はこの美しい光景に絡め取られた蝶にも似ていた。そういえば、別れた彼が好きだった歌に観覧車をイメージしたものがある。今にして思うと、あれは失恋の歌だったのかもしれない

【No.≠018 名前のない関係】
彼が私の名前を呼ぼうとして、少し気まずそうに苗字で呼び直す。「そんな関係じゃないよな」と、間違ったみたいな顔をして笑う仕草が嫌いだった。私の名前をちゃんと呼んでよ。透明じゃない色にして。あなたの声で、私の存在を呼んでほしかったのに。この関係の名前は未だにわからなかった

【No.≠023 通心解約】
『お掛けになった心は現在、使われておりません。ご確認の上、もう一度、心をお繋ぎください』疎遠になった友人はどうやら、感情変更したことを知らせてくれなかったらしい。心が最新になる度に、大切な何かが抜け落ちていく。『お掛けになった心は現在、使われておりません。ご確認の上――』

【No.≠028 誘我灯】
地面に寝転がって誘蛾灯を仰ぐ。チカチカと明滅を繰り返す感覚に合わせて、羽虫達が音を立てて飛び回る。光が消えるのを合図に、羽虫が私のおでこに落ちる。それを掬って静かに口に含む。ゆっくりと噛むと、わずかな粘り気と苦みが広がる。私は救いを求めるように、次の誘蛾灯を探し始めた

【No.≠031 ボイジャーレコード】
録音された彼の声を再生した。繰り返し、繰り返し聞いて、だいぶ古い機種だから声が劣化している。けれどもう、この声しか届かない。あの日、私が怒って家を飛び出さなければ。『「もしもし。今日は君に大切な話があるんだ。僕さ、本当は君のこと――」一件の、メッセージを、終了、します』

【No.≠035 あいのれきし】
今日で彼とはお別れだ。旅立つ彼を見送りに駅のホームまで付き添う。 警報が鳴る。遮断機が沈む。赤色灯が夜を浮かび上がらせる。電車と共に終わりが迫った。寂しいけど、彼が決めたことなら受け入れよう。すぐに私もいくからね。「さよなら」「さよなら」彼の背中を、私の手でそっと押した

【No.≠039 雨に結う】
雨の日にだけ現れる女の子がいた。一緒に歌ったり、絵を描いたり。ひとりぼっちの僕は女の子と遊べる雨の日を心待ちにしていた。「雨が止んだらさよならね」中学生になって、友達ができてからは彼女と会うことはなくなった。今にして思えば、寂しかった僕が生み出した幻想なのかもしれない

【No.≠044 代心機】
この目は監視カメラじゃないので、多くの不幸は見えません。この耳は集音器じゃないので、小さな不幸は聞こえません。この口は拡声器じゃないので、弱った不幸は言えません。この手は掃除機じゃないので、散らばった不幸は拾えません。この心は映写機じゃないので、隠した不幸は見えません

【No.≠045 生命の音】
生きている音を探しています。街灯はチカ、チカ、と音を立てて死んでいきました。生きている音は、死んでいく音と同じなのだと思います。私も、心のゼンマイがジリ、ジリ、と消耗しながら生きています。死んでいく音は、生きている音と同じなのだと思います。生きている音を探していました

【No.≠052 忘れ声】
亡くなった人に繋がる電話番号があった。数回、コール音が鳴り響く。「もしもし」誰の声だろう。なんとなく懐かしさを感じた。「久しぶり」「……あ」心臓が跳ねる。私が好きだった男の子だ。そっか。君、死んじゃったんだね。話したいことは沢山あるはずなのに、言葉の代わりに涙が溢れた

【No.≠055 真夜中の歌】
寝苦しい夜、窓を開けるとやわらかな風が流れ込んできた。遠くで鳴る踏切も、木々の擦れる音も、隣の家の女の子が歌う「る、る、る」という声も、朝を迎える度に薄れてしまうのだろうか。起きていても、眠っていても、いつか明日が来てしまうのならば、どうしようもない不安も愛したかった

【No.≠065 彩花】
妻は三年前から目を覚ましていない。いわゆる植物状態というやつだ。娘にはママは枯れ木になったと話している。それから、娘は「かれきにはなをーさかせましょー」と病室で繰り返す。「かれきにはなをーさかせましょー」娘の声と僕の涙が、再び妻に花を咲かせる力になることを願い、祈った。

【No.≠070 欝降りの歌】
目の前で女の子が車に轢かれる。晴れの日でも雨靴を履いている近所の子どもだ。いつも「る、る、る」とメロディーのない声で歌っていた。ふいに、ウイスキーとタバコに興じる生活保護の女を思い出す。「命は不平等なんだって。だから私は生きてんの」と笑っていた。命は平等なんて嘘だった。

【No.≠076 鳴き声問題】
「『ンメ〜』これは羊の鳴き声です」「はい」「『メェ〜』これはヤギの鳴き声です」「なるほど」抑揚の位置で見極めればいいのか。「では次に上級問題です。『ンメェ〜』これは誰の鳴き声でしょうか?」「……ヤギ、ですか?」「いいえ。これはおいしい物を食べたおばあちゃんの鳴き声です」

【No.≠088 淀んだ席】
音漏れ。駆け込み。転がる空き缶。押し退けて、突き出して、抜け出そうとして。足組み。飲酒。背中のバッグ。誰もが、みんな。どれもが、煩わしくて。香水。割り込み。怒鳴り声。電車の中に閉じ込められたのは、乗客だけじゃなかったのかな。隣の席には悪意が座っているようで哀しくなった。

【No.≠089 繋がる、隔てる。】
私の住む街に同級生の女の子が遊びにきた。「まだ公衆電話があるよ」緑の受話器から私の携帯に電話をかける。「私の声は届いていますか?」彼女がおどけながら笑う。「私の思いは届いていますか?」なんて、透明な箱を隔てて言葉が消えていく。私もおどけながら、打ち明けてしまいたかった。

【No.≠099 ねこギター】
河川敷で『ねこギター』を弾く。ねこのヒゲで作られた弦を、肉球型のピックで掻き鳴らせば、にゃにゃーん!と鳴き声が響いた。へたくそな歌声に人は集まらないけど、気付いたらねこの大軍に囲まれていた。にゃにゃーん!僕のギターにふんわりとした合いの手が加わる。かわいいお客さん達だ。

【No.≠113 音信不通】
「もしもし。こっちは思ったよりも良い場所だよ。懐かしい人達にも会えたし、美しい景色ばかりだしさ。だから、あなたは何十年後かにおいで」『お掛けになった電話番号は使われていないか、電波の届かない場所にあります。お掛けになった――』あぁ、そっか。天国って電波が届かないんだね。

【No.≠129 クレジット】
音ゲーの順番を待つ間、友人から「実際に楽器を弾いてみたらどうだ。費やした金と時間で上達できるだろ」と揶揄されたのを思い出す。ゲームが得意でも楽器が上手くなるとは限らないのに。プレイしている人の動きを「真似したい」と感じる。それでも、あの人みたいにはなりたくないと思った。

【No.≠135 退廃都市⑤】
ロケット発射場に訪れる。人類の願いや希望が、灰色の煙を吐き散らしながら上昇していく。この世界に彼女がいなくても、大気圏の外には存在するのだろうか。『グッドバイ グッドバイ バイバイ――』彼女と聴いた歌を思い出す。色彩を失うように僕達の思い出も、空高く打ち上げてほしかった。

【No.≠136 退廃都市⑥】
電車に揺られながら、彼女のいない街へと帰る。窓の外では橙色の空をひこうき雲が割いていた。開いた窓から秋の気配が漂う。今、二基目のロケットが飛び立つのを見送る。宇宙の果てで、再び彼女と巡り会えることを願う。未来が揺れた。原因不明の涙が、轟音のうねりと共に過去へと流れ出す。

【No.≠137 夏の残り音】
裏通りにある風鈴屋を二人で覗く。夏の残り音を背に、店主から「彼女かい?」と訊ねられる。照れながら肯定すると、なぜか彼女が不機嫌になった。「なんで『はい』なんて言ったの?」大きなお腹を優しくさする。あぁ、そうか。「もう彼女じゃないでしょ」意味に気付いて、小さく笑った。

【No.≠138 心倣し】
嫌な記憶がこびりつく実家を飛び出した。カメラ、財布、ギター。持ってきたのはそれだけ。制服のまま知らない海岸へと行き着く。父さんが好きだった海のようになれたのならば、母は私を愛してくれたのだろうか。ザザン、ザザン。と寄せては引いていく波のまにまに、私の心は深く凪いでいた。

【No.≠143 優良音階】
その不良は指を鳴らすと音階を生み出します。今日は気分が良いのかパキ、ポキと高音が響きます。調子が良いとカエルの合唱を奏でました。けろ、けろ、けろけろけろ。敵の不良も間の抜けた曲を聞くと戦意喪失します。みんなもにこやかな顔になります。街は今日も、不良のおかげで平和でした。

【No.≠149 渡り鳥達】
冬が訪れる度に、彼女との思い出が蘇ってくる。流れない噴水の絵ばかり描いていた左手には、多くの吐きダコができていた。白紙を塗り潰していく彼女の横顔が、なぜだかとても悲しそうに見えた。今ごろ、君は、あの公園で泣いていて。今ごろ、渡り鳥も、あの公園で鳴いているのかもしれない。

【No.≠155 声の行先】
ひと夏の恋なんて呼べば聞こえは良いだろう。実際は欲に身を任せただけである。持て余した命を抱えて山へと踏み入った。あれから数年後、罪を償うために山を歩いていると、鹿の鳴き声が彼方から聞こえてくる。その度に悲しそうな誰かの泣き声と重なって、身勝手にも私の心は苦しくなるのだ。

【No.≠201 泡沫の恋】
憧れの人と話をするために、魔女の力で人魚から人間にしてもらう。秘密を漏らすと私の身が灼かれるそうだ。でも、なんともおかしな話なのだろう。憧れの人を前にすると、誰にも話していないのに声が出なくなって、夢の中みたいに足が重くなって、体の内側から身を焦がすほどの熱を生むのだ。

【No.≠204 ボイジャーレコード】
この世界では思いを声にした瞬間、記憶から言葉を失ってしまう。愛の告白も、出会いの称賛も、別れの挨拶も交わすことは叶わなくなる。それでも、君はまっすぐ「好き」と言ってくれた。きっと、君の、気持ち、きらきら、消えちゃうのに。口を開く。私も、最後の「好き」を最後の人に捧げた。

【No.≠205 羅心盤】
祖父の家から古いレコードを見つけた。針を落とすと鈴を転がすように歌う女性の声が流れてくる。その人のことなんて知らないのに、なぜだか懐かしい気持ちになった。繰り返し、繰り返し聞いて。声には雑音が混じる。レコードはすり切れて、繰り返し、繰り返して。本当の声を忘れてしまった。

【No.≠212 亡き真似】
孫を騙る男性から電話がかかってきた。もう亡くなっているのに、声が孫にそっくりで思わず涙が流れる。男性が私を心配してくれるほどに、孫はこの世にいないと思い知らされてしまうから。私より先に旅立ったあの子が優しいはずないもの。だから私も意地悪く、あなたには会ってあげませんよ。

【No.≠223 凪ぎ声】
雀の鳴き声で目が覚める。カーテンを開けて目が合うと雀は電柱から飛び立った。寝起きの悪い僕を叱るように、毎朝同じ時間に起こしてくれる。このひとときが好きだけど、街の景観のために電柱は埋め込まれてしまった。今でも雀の鳴き声が聞こえる度に、無意識にカーテンを開けてしまうのだ。

【No.≠228 魂の行く末】
もの悲しい鳥の鳴き声に目を覚ます。茫然としながらも灯台守が鐘を鳴らすと、住民も祈るように手を合わせた。この島では亡くなった者を全員で偲ぶ風習がある。魂が迷わず彼岸に辿り着けるよう光を照らす。何十年も鐘を鳴らし続けてきた灯台守は、その夜、息子の死を知って静かに涙を流した。

【No.≠230 乾き渇く】
美容師である彼が私の髪を梳く。ふいに「私の髪が綺麗じゃなかったら別れる?」なんて聞くと無言のまま髪を乾かす。「君はさ――」彼の言葉に棘はあったけど、私も、ドライヤーの音で聞こえなかったことにする。知らない女を抱いた彼の手が、浮気に気付いてないと思っている私の頭を撫でた。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652