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それぞれの一日、『ねこと私とドイッチュラント』

12:26

昨日はじめてみたハッシュタグでのアドベント日記に何人かの方が参加してくれている。
嬉しいな。
それぞれの方の日記を読んで、遠い返事をするようなかたちで何か書きたくなったけれど、ふくらみすぎてきっと一日潰してしまう。なので何度かにこにこしながら眺めるに留める。

14:35

みなさんのアドベント日記がすごく良い……

19:10

仕事のために過去の自分の舞台の映像をピックアップ。
改めて見ると、私の舞台の映像はどれも暗い。輪郭だけを照らしたり、炎の影を主役にしているもの、皮膚の毛穴や呼吸の蒸気だけを見せたい場面があったりしてこの照度なのだけれど、カメラに収めようとすると圧倒的に光量が足りない。
舞台を映像にするのはむつかしい。

21:41

今日はながらりょうこさん『ねこと私とドイッチュラント』の最新刊が届いた。
ネットで読んではいたが、やはり紙に印刷されたもののほうが線や、影や、色の手触りを味わえる。
ページの最初のほうに出てきたテレビ塔のふもとのビルの絵につかまれて、見入ってしまった。

駅からカリーヴルストの売り子を横目に広場へ渡り、テレビ塔に向かって右側にあった小さなネットカフェ、今はあるはずもないのだけれど、2006年当時のわたしのベルリン生活には欠かせない場所だった。ネットカフェといっても現代のような本や漫画が読める場所ではなく、ネット環境を使うためのカフェ。まだ今のようにはネット環境が普及していなかった時代、ポータブルで情報を受け取る環境がなかったので、旅先からメールや情報を送受信するためにどこの国の、どの町に行ってもまずはネットカフェを探した。
受付にお金を払うと金額分のポイントをカードにチャージしてくれて、カードの暗証番号でコンピュータに接続する。私はヨーロッパのどこかの国で踊るためにオーディションめぐりをしていたので、情報を検索し、メールを送り、返事を受け取った。必要なやり取りが終わったら、余った時間でブログを書いたりして友人に無事を知らせたりして。
いちどネオナチの格好をした男の人が「外国人は出ていけ!」と長い棒を振り回しながらガラスを叩き割って入店してきたことがあった。今はどうかわからないけれど、当時のアレキサンダー広場にはネオナチの格好をして怖そうな犬を連れた若い人がうろうろしていた。

漫画の感想を書き留めたいのに、自分の思い出にばかりかえってしまう。
テレビ塔のふもとが今どんな風になっているかgoogle mapで見てみたが、わたしがこんな風にむかしのことを色濃く思い出すのは、写真じゃなくて絵だからなのだということに気づく。

テレビ塔の1階にはカフェがあって、体が冷えると熱いショコラを飲みに入った。私たちはいつもカフェをはしごするのがならいで(貧乏旅行だったがベルリンのコーヒーは安かったし、私たちにはいくらでも話すことがあった)、あのカフェにいつまでも入り浸って、いつのまにか雪がやんだり、薄陽が差してきたりするのを大きな窓越しに眺めた。
(『ねこと私とドイッチュラント』にも出てくるのだけれど)じゃがいものオーブン焼きフレッシュチーズのせを頼んだことがあるけれど、家族で食べるの?というような量がやってきてそのことだけで3人でいつまでも笑った。
シュプレー川沿いのドームに向かう道の描写にも、からだが漂い出すような感触がする。
川沿いに良いカフェがあると教えてもらったのに見つからなかったことや、区画の工事車両がVOLVOだったこととか(当時は工事の仕事をしていたので会社の友人に写真を送った)、寒い日なのに橋の上で誰かが演奏していたこと、友達とライプニッツに行って凍った噴水のところで「白鳥の湖」ごっこをして、アイスバインを食べてほろ酔いで帰ってきた夜のこと。

ながらりょうこさんの漫画を好きなのは、ベルリンの思い出があるからではないので、でもそれを今日は言葉にできそうにない。
読むたびに胸のそこからあたたかさに満たされる。

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