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4年勤めたメルカリを退職し、社員30名のベンチャーでチャレンジしたいこと

2019年2月14日を最終出勤日として、4年間勤めたメルカリを退職しました。退職後は、社員数約30名のヘルスケアスタートアップにジョインします。メルカリで学んだことや、今後のキャリア・チャレンジしたいこと、また、妊娠中の転職を通じて考えたことなどについて書いてみたいと思います。

大手法律事務所の弁護士から、4年前にメルカリに入社

そもそも私のファーストキャリアは、国内大手法律事務所でのM&A・コーポレート弁護士という、スタートアップとは全くかけ離れたものでした。
そんな私がメルカリに転職したのは、米国留学がきっかけでした。2013年夏からスタンフォードのロースクールに留学し、シリコンバレーでスタートアップ関係者と触れ合う中で、社会課題の解決のために新しい事業・サービスを作りたいというmission drivenなカルチャーに、大きな刺激を受けました。スタートアップの中でその成長を支える業務に携わりたいという思いから、2015年3月にメルカリに入社しました。

メルカリへの転職経緯については、従前下記記事でも取材いただきました。
https://careerhack.en-japan.com/report/detail/704
https://president.jp/articles/-/23595?page=3

メルカリでの業務~従業員80人から1,600人超の成長を経験

メルカリには、79番目の社員・初めての弁護士として入社しました。当時はまだ知名度も低く、友人に「メルカリに転職する」と言っても「何それ」「聞いたことない」という反応も多かったです。そこから4年経った現在では、従業員数は連結で1,600名を超え、2018年6月には上場し、楽天やヤフーなどと並ぶ知名度の会社になるまでの成長を経験しました。
メルカリでは、リーガル業務として、日本・米国の法務全般を担当しました。それに加えて、純粋なリーガル業務とは異なる、FinanceやIR関連の業務にも携わらせていただきました。
具体的には、2016年3月(84億円)・2018年3月(50億円)の大型資金調達案件を担当しました。メルカリでは、非上場の頃から、将来の上場を見据えて海外・国内投資家とのリレーション作りを続けており、こうしたIR活動も行ってきました。
2018年6月のIPO(調達額600億円超)では、プロジェクトマネジメントを担当し、上場審査対応、開示書類(英文・和文)作成、ロードショーを含む投資家向けマーケティングといった上場プロセス全般を経験しました。その成果もあり、大変有難いことなのですが、2018年6月にはFinancial TimesのGlobal General Counsel 25に選んでいただきました。

IPOロードショー最後のミーティングを終え(in SF、皆ほっとした笑顔)

上場日に、IPO実務メンバーで記念撮影

IPO業務について
https://mercan.mercari.com/entry/2018/09/04/120000
https://mercan.mercari.com/entry/2018/07/04/113000
FT GC25
https://www.ft.com/content/868f5f1a-6d55-11e8-92d3-6c13e5c92914

なぜ転職を考えるようになったのか

メルカリでは、飛躍的な成長を会社の一員として経験すると共に、資金調達やIPOといった非常に面白い業務を担当させていただき、かけがえのない経験をさせていただいことにとても感謝しています。
ただ、少しずつ、新しいチャレンジをしたいという想いも強まっていました。
具体的には、自分の担当領域をより広げてみたいという思いです。元々弁護士という純粋なリーガルキャリアから、メルカリにおいて資金調達・IPOなどの案件を担当させてもらい、チャレンジングでしたが同時にとても楽しかったというのが素直な感想です。これらの業務でも、契約関連など、リーガルの経験が役に立ったところもありました。他方で投資家へアピールするストーリー作りなど、初めての分野も多く、最初は全く初心者の自分が本当に役に立てるのか不安に思うことも多々ありました。ただ、手探りながらも、案件を成功させたいという一心でチーム全体で前に進んできた結果、最終的には成果を出すことができました。このことは自分の中でも大きな自信につながっていると思います。今後も、今まで体験したことのないような新しい領域、コーポレートのより広い領域や事業面にもチャレンジしてみたいという思いが強くなりました。
また、メルカリに続くようなスタートアップがもっと増えてほしいと感じていたこともあります。会社のフェーズでいうと、メルカリでは創業2年目~上場という期間を過ごし、いわゆる10→100、100→1,000という成長フェーズを経験することができました。現在メルカリは、従業員が連結1,600名を超える大きな組織となり、1,000→10,000…という更なる成長を目指して進んでいます。ここまでの成長ができる存在は、日本のスタートアップ業界の中でも非常に稀有だといえます。日本のスタートアップは、メルカリのような中長期的・かつ大規模な成長を目指す会社はまだ少ないのが現状だと思います。上場ゴールなどと揶揄されることもあるように、短期的・小規模のexitを目指すところばかりだと日本のスタートアップのエコシステムが育っていかないと懸念されています。メルカリの中で経験させていただいた多くのことは、10→100、100→1,000という成長を目指すスタートアップにとって非常に役立つことが多いと感じています。この貴重な経験を生かして、他のスタートアップがメルカリに続く成長をしていけるよう、支援したいと考えるようになりました。

転職先Triple Wとの出会い

実は、Triple Wの代表者中西さんと出会ったのも、米国留学中でした。私がスタンフォードロースクールに留学している時、中西さんはUC Berkeleyに留学していました。約5年半前のある日、起業についてのアイディアがあるということで、Stanford内のサンドイッチ屋さんで中西さんから事業についてのプレゼンを受けたことは今でもよく覚えています。その時から、法律顧問という形で契約書のアドバイスを行ったり、資金調達や重要な事業提携といった場面でリーガル面の相談に乗ったりと、外部からではありますが継続してTriple Wの事業をサポートしていました。
Triple Wは、DFree(ディー・フリー)というヘルスケアデバイスを提供しています。超音波により膀胱の大きさの変化を測定し、連動するスマートフォンアプリでトイレに行くタイミングをお知らせすることで、ユーザーの方々が自らトイレにいくことをサポートするデバイスです。個人的にTriple Wの事業が面白いと感じている理由は大きく2つあります。
1つは、大きな社会課題の解決に役立てる事業だと思ったことです。高齢化社会が進む中、介護の現場では人手不足をはじめとする様々な問題が発生しています。おむつを替えるなどの排泄ケアは、介護をする側が最も困難だと感じているケアの1つだと言われています。DFreeにより高齢者が自らトイレに行けるよう支援することで、少しでも介護の負担を楽にできるのではないかと思います。また、介護される高齢者にとっても、おむつの使用は悪影響が大きいと言われています。「おむつをしている」という羞恥心から自信を失ってしまったり、そこから食欲や意欲の低下を招くことも少なくないそうです。「おむつゼロ」の介護を目指そうという動きも広がっており、DFreeを通じてそのサポートができるはずだと思っています。
もう1つは、日本だけではなく世界中の人々の役に立てる事業だと感じたことです。メルカリもそうですが、日本のみならず世界がターゲットとなると、より多くの人の生活をより良くすることに貢献できます。特に介護領域では、高齢化社会・介護先進国という意味で日本は一歩進んだ存在であり、同様の状況が世界の他の国々でも今後確実に起こっていきます。日本発のDFreeの技術やノウハウが、世界の他の国でも役に立つポテンシャルがあると感じています。なお、DFreeは2019年1月のCES(ラスベガスで開かれる国際的な家電ショー)で、Best of CESをはじめ4つのアワードを受賞するなど、国際的な注目を集め始めています。

CESでの受賞について
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000019617.html?fbclid=IwAR0ruE5nfbku8HFiC3HiRBVzPeIHMtTB9ZLdvgLCQ_e4D6nQis61L4JwO0c

転職を決めるまで~妊娠中の転職

上記のとおり外部からサポートしていたTriple Wでしたが、次のキャリアについて悩み始めたという話を中西さんにしたところ、それではうちに来てはどうかと声をかけてもらいました。
個人的な話になりますが、実はその頃ちょうど妊娠が発覚した頃で、転職については色々と悩みました。家族や親しい友人に相談すると、出産・育児のタイミングでわざわざリスクを取るような転職をせず、もう少し待ってもいいのではないかという意見もありました。特にメルカリにはmerci boxという出産・育児を支援する仕組みがあり、しばらく会社に残って産休・育休を取ってから辞めたらいいじゃないかと自分でも思ったこともありました。また、他に話を聞いていたスタートアップからは、妊娠中と伝えると「(すぐ産休・育休に入ってしまうのであれば)このタイミングでの採用は難しい」と言われたこともあり、妊娠中の転職の難しさも感じました。
そうは思いながらも、同時に自分としては、出産や育児を理由に、キャリアのやりたいことを先送りにしたり我慢したりというのは、少し違うのではないか・何らかの形で両立できるやり方を探したいとも思っていました。もちろん、出産・育児は親としての大きな責任を伴うものですし、同時に職場にも迷惑をかけるわけにはいきません。幸いにもTriple Wでは、こういうライフイベントがあることもわかった上で新しいチャレンジをさせてもらえるという有難い機会をいただくことができました。Triple Wは、介護や健康をテーマにする企業ゆえに、ライフイベントと仕事との両立について、特別なこととしてではなく自然に受け入れうまくワークさせていこうという前向きな文化が醸成されつつあります。創業約4年・社員30名程度の会社ですが、すでに時短で働く子育て中の女性も6名、子育て中の男性も多いそうです。
今後実際に出産・育児を体験すると、予想以上の大変さで見積もりが甘かったと嘆くことになるかもしれません。ただ、やらずに諦めるのではなくまずやってみるという決断をしたことはきっと後悔しないと思いますし、出産・育児とキャリアの両立を悩んでいる女性の方々にも、恐れずにチャレンジし続けるという方が増えるといいなと思っています。同時に、企業側でも、そのような女性の状況を理解し受け入れるところがより増えるといいなと思います。どうしても短期的には稼働時間が限られるなどマイナス面があると思うのですが、Diversityの重要性が注目される中、女性ならではの視点が取り入れられるなど、長い目で見ると企業にとってもプラス面は多いはずだと思います。時短勤務やリモートワークといった、マイナス面を補いつつもプラス面を取り入れられるような制度整備など、働く女性と企業の双方にとってメリットが得られるような仕組みがより普及していくといいなと思います。今回の個人的な経験をきっかけに、このような状況の改善のために何かできることがないか、まずはTriple Wの職場環境から考えていきたいと思っています。


終わりに

メルカリを退職しましたが、事業・カルチャーともに、改めて素晴らしい会社だと感じていますし、メルカリが大好きな会社・サービスであることは今後も変わらないと思います。決して他ではできない貴重な経験をさせていただいたこと、退職についても温かく送り出していただいたことに、改めて感謝しています。

本記事をお読みいただき、もし少しでもTriple Wに興味を持っていただいた方がいらっしゃいましたら、下記リンクのWantedlyページも見ていただけたら大変嬉しいです。また、退職後も、Triple Wでの業務はもちろん、個人で弁護士として続けていたスタートアップの法務相談なども続けていきますので、お気軽にご連絡をいただければと思います。まだ新しいチャレンジのスタートラインに立ったばかりで、今後も公私共に多くの方々のサポートをいただいてしまうかと思いますが、少しでも前に進めるよう頑張っていきたいと思っています。

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