2021年予測:テレビ化するYouTube、垂直統合で成長するGAFAMの動き


年末恒例のDIAMOND SIGNALの記事企画、STARTUP TREND 2021からの転載です。

冒頭より引用

激動の1年となった2020年。新型コロナウイルスの世界的流行によって、人々の生活様式は大きく変化し、またそれは大企業からスタートアップまで、ビジネスのあり方も大きく変えることになった。
DIAMOND SIGNAL編集部ではベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家向けにアンケートを実施。彼らの視点で2020年のふり返り、そして2021年の展望を語ってもらった。今回は日米100社のスタートアップへ出資する、起業家・エンジェル投資家の有安伸宏氏だ

https://signal.diamond.jp/articles/-/468

あらゆるもののデジタル化とオンライン化が加速した2020年

新型コロナウィルスという“ブラックスワン”が訪れた2020年、印象的だったことは2つあります。

まず1つ目は、あらゆるもののデジタル化やオンライン化が加速したことです。コンシューマ目線であれば、一番伸びたのはECです。Amazonや楽天などでの「モノ」のコマースのみならず、ヨガレッスンや音楽ライブ、フードデリバリーなど「サービス」のコマースについても、オンライン比率が飛躍的に高まりました。私の支援先企業で言うと、ギフトECの「TANP」、家電レンタルECの「レンティオ」、ペット用品ECの「Doggy Box」などの伸びは目覚ましいものがありました。

コーポレート目線であれば、いわゆるDXの領域の躍進があります。会議や採用面接、日常業務のオンライン比率が増加したほか、「ハンコ廃止」に象徴されるような、政府の姿勢もこれを後押ししました。支援先スタートアップの例で言うと、動画マニュアルSaaSの「Tebiki」、製造業プラットフォームの「キャディ」、保育園DXの「エデュリー」など多くの企業が存在感を増しました。

2つ目は、金融経済と実体経済のデカップリング(分離)です。実体経済がこれだけダメージを受けて失業率が上がっていても、株価は下がりませんでした。極端に言えば「株価はコントロールできる」と各先進国の政府と中央銀行が気づいてしまった今となっては、株価を適切に下げるという政治判断を下すインセンティブが、政治家には存在し得ないと思います。お金がジャブジャブと刷られると、株も不動産も、金、そしてビットコインも全部価格が上がるのだという、経済学の教科書的なことが起きた1年だったのではないでしょうか。

YouTubeのテレビ化、縦に拡張するGAFAMの動き

コロナ禍が沈静化した後の各国の金融政策に注視していますが、緩和、引き締め、いずれの場合でも、引き続きデフレ資産でありデジタルゴールドたり得るビットコインは面白い存在になるのではないでしょうか。ただ去年の寄稿記事でも、「ビットコインは面白い」と連呼していたので、それ以外に現在進行系で注目してることを挙げてみます。

「ググる」減少と、YouTubeのテレビ化

GoogleではなくYouTubeで検索するという消費者行動は、さらに加速すると思います。TwitterやInstagramで検索するよりも、もっと広くて普遍的なユースケースに育ちうると考えてます。それは、文字読むよりも、動画を見る方が楽だからです。

企業や飲食店、芸能人、スポーツ選手が自分のYouTubeチャンネルを開設するのが当たり前になるのではないでしょうか。それはあたかも、90年代に企業がホームページを初めて開設していった動きと同じようにも思えます。それはつまり、かつての「家庭におけるテレビ」のようなポジションをYouTubeが担うということにつながると思います。

個人のエンパワメント、第二章

「もっと競争に勝てるように」「もっと稼げるように」という方向よりも、「より自分らしく」「承認欲求を満たせるように」という方向のエンパワーメントに、ウェブをはじめとしたテクノロジーが活用される動きが一段と強まるのではないでしょうか。

日本が経済的な意味で国際競争力を失い、大多数の人々の実質賃金が上がっていない事実もこれを後押しすると思います。社会的ステータスというものが剥がされて、他人の価値観よりも自分の価値観を重視する人が少しずつ増えていく。コロナ禍により社会的生活が制限され、より自分の価値観や家族に向き合う人が増えたことも影響していると思います。

ハードウェア次第で普及するVR

VRヘッドセットの価格が十分に下がってきたので、アダルト、そしてゲーム及びエンタメ、その後に他領域への展開が待っているのではないでしょうか。すでにあるエコシステムが底上げされて大きくなり、キャズム越えも見えてくるような印象があります。とはいえ、2021年内にはまだキャズム越えまではないでしょう。

巣ごもり消費というトレンドもこれを後押しするでしょうし、コロナ禍の沈静化後も必然的に伸びるはずです。AppleをはじめとしたGAFAMから、格好良くて軽いVRヘッドセットが登場することに期待しています。

バイデン政権によるGAFAMの(ごく一部の)解体

巨大になりすぎたプラットフォームへの国家と世論の風当たりは引き続き強いでしょう。プライバシー、フェイクニュース、独禁法──これに対する必然的な動きとして面白いと思っているのは、独禁法に対するプレッシャーから、Facebookをはじめとしたプラットフォーマーが、Instagram、WhatsAppなどサービスを「横」に広げる戦略行動が抑制され、替わりにバリューチェーンを「縦」に強化する垂直統合が見られることです。

具体的にはAppleは独自CPUのM1プロセッサーを発表してユーザー経験を向上させ、MicrosoftはARMと組んでCPUを内製化することが報じられています。小国の経済をはるかに超える規模感を持つ巨大プラットフォーマーたちが、向かい風をどうハンドルして成長を続けるのか注目してます。





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