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2016年〜2019年予測:日本のVC・エンジェル投資家が予想するスタートアップ・トレンド

普段、私たちは無意識のバイアス・非合理的な思い込みに囲まれて、日々の意思決定を行っています。そういったバイアスにどうすれば自覚的になれるのか?一つ、効果があると私が信じて日々行っているのは、自分の意思決定を後から振り返ることです。具体的には、ちゃんとメモに落としておいて、後から見返す。それだけ。

過去のある時点において、「自分がどれだけ正しかったか」ではなく、「どれほど間違っていたか」に関して自覚的になることは、とっても大切だと思うんです。

ということで、ふと思いたち、マクロトレンドについて自分が過去にどう考えていたかを振り返ろうと、TechCrunch Japanのトレンド予測の記事を見ようと思ったら、web上になかった!

そうだ、TechCrunch Japanは2022年3月末でサイトが閉鎖されたのだった。

誰かがサイトを丸ごと買うとか買わないとか、そういう噂も聞いたけれど、結局サイトは跡形もなく消え、そこには、TechCrunch本国サイトへのリダイレクトが機械的に残るのみ。寂しいねぇ。

ということで、主に自分のために、2015年12月〜2018年12月のTechCrunch Japan年末企画「日本のVC・エンジェル投資家が予想するX年のスタートアップ・トレンド」に寄稿した文章を下記に貼り付けます。著作権の問題もありそうなので、自分が回答した部分だけ。

日本のVC・エンジェル投資家が予想するスタートアップ・トレンド
起業家・エンジェル投資家 有安伸宏

2019年

2018年の振り返り

マーケットプレースやバーチカルSaaSなど、ネットワークエフェクトが効く事業中心に出資した一年でした。スタートアップ目線で言えば、今年も非常に資金調達しやすい環境だったと思います。出資先のVC行脚に同行してみて、5年前、10年前とは隔世の感がありました。

2019年の展望

一つは、Blockchain x hogehoge。Blockchainを何に活用して、どんな信用創造をするのか。ハイプ・サイクルの幻滅期真っ只中ですが、冬の時代の今だからこそ事業の仕込み時期だぜ!という気概でありたい。日本固有の「ガラパゴス規制」によって産業成長が阻害されないこと、有力な起業家が海外へ逃げるようなことがないことを祈ってます。

第二に、日本について言えば、Software is eating the world的な文脈での、既存産業の構造転換、SaaSへの置き換えです。先日10億円調達がリリースされた、製造業の受発注プラットフォーム「キャディ」はその典型例。その他の業界もジリジリとソフトウェアに「食われていく」と考えてます。「手書き・FAX・対面営業」が残る非効率な産業のうち、生き残りをかけたコスト構造転換が必要なところから、改革が進むと考えています。

最後に、FinTech領域の拡張。既存金融が十分に提供できない残りの領域、オルタナティブ・ファイナンスは全般的に面白い。小口の融資全般、ファクタリング(請求書の売却)、ABL(動産担保ローン)など、与信モデルの発明や既存ユーザベース活用によって参入余地は多く生まれるモデル。まだまだやりようがあるな、と思っています。

来年も、TwitterのDM経由で多くの起業家と出会うのが楽しみです!


2018年

2017年の振り返り

※一年前のトレンド予測の記事を見てみたら、びっくりするくらい、誰も暗号通貨に言及してませんでした。ガックリ。なので、もう少し短めの半年先くらいまでのトレンド予測を国内市場に限定して考えてみたいと思います。一年後は結構予測できないものだな〜と思うのと、半年くらい先の国内市場と限定すれば解像度が多少はマシになるかな、と。

2018年のトレンド予測

第一に、ICOとその周辺領域。プロダクトがちゃんとある事業and/or VC-backedの「詐欺ではない」まともな会社がトークンを発行する事例が増える。単なる資金調達ではなく、トークンセールを行うことでユーザー獲得につながる、ネットワークエフェクトが強化される等の王道的な良質のICOも少しずつ増えてくる。ICOに投資するファンド、ICOコンサル、ICO格付け機関、ICO比較メディア、等々。既存の金融業界に存在する機能のICO版、が形を変えて色々と出てくる。

ICOの全体観についてはシナリオは2つあって、一つは資金流入がどんどん加速する、バブルが続くという今のまま路線。もう一つは、象徴的な「事件」が早くも起きてしまいバブルが弾ける。規制強化。マスメディアには「ICO詐欺」などの文字が踊る。しかし、ネットバブルが弾けた後にも、粛々と成長して巨人へ成長を遂げた企業がいくつもあったという歴史が証明するように、資金調達手段の分権化という大きな流れは止まらない。

第二に、キャズムを越えたBitcoin取引所の競争激化。スプレッド縮小。規制がかからない限り、取引所のテレビCMをたくさん目にする年に。今、Webスタートアップ界隈の起業家で集まると、bitFlyerとcoincheckの二社の名前は、高い頻度で議論にあがります。日本の起業家の「健全な嫉妬」の対象は一年前はメルカリだったが、今はこの二社へ移りつつある感じ。メルカリと比較して、この二社がどこまで成長するか、伸び代はどれくらいあるのかという思考実験は色々な意見が出てくるので面白いです。

第三に、政府 VS. 暗号通貨スタートアップ群、という対立構造がハッキリしてくる。成長期をむかえた取引所をのぞいて、雑多なスタートアップ同士の競争はそれほど激化しない。規制当局である政府とスタートアップの世界観の違いをどう埋めるか、法律的・会計的な落とし所をどこに見据えるか、という議論になる。デジタルコインというアイデアは昔からあったが、Bitcoinがこれほどマーケティングに成功してキャズム越えに成功したのは、リバタリアンの思想を援用したから。blockchainは、分散型のプロトコルとして、権力や機能の分散化、民主化、無政府化を促すものなので、政府との対立構造が生まれてしまうのは不可避。

もちろん、色々と他にもトレンドはあるとは思うのですが、自分が今完全にこのあたりの領域に興奮しきっているので、これくらいにしておきます。暗号通貨まわりの話をネタにとりあえずお茶したい方、起業したい方、スタートアップ参画したい方からのコンタクトをFacebook MessengerやTwitterのDM経由でお待ちしてます!

2017年

2016年のキーワード

トレンド、あまりなかったですね!ニュースは色々あったけど・・・

2017年のトレンド

技術トレンドとしては、machine learning、自動運転、ロボット、VR/AR/MR、などは引き続き面白いと思います。(マクロ感把握したい方には、「Mobile is eating the world」というBenedict Evansの記事がオススメ。インスパイアされます)。日本国内での起業ネタ探しと言う意味では、みんなが飛びつくようなわかりやすいトレンドのない状態が2017年も続くと思います。

個人的に注目しているマクロトレンドは、日本の少子高齢化です。より具体的には、就労人口の強烈な減少。働く人が減るので、人件費が上がる。人件費が上がるので、AIやロボットなどの自動化・無人化テクノロジーの商業化のチャンスが高まる。2016年も、そういった会社複数にご縁をいただいて、シード期にエンジェル投資させていただきました。

このような領域は、数年後にGoogleやFacebookなどの巨人に殺されないように、レイヤー選択と参入障壁作りを慎重にやる必要があるので、初期の市場選択にかなり気を使うのですが、そういった議論を創業間もない起業家とさせてもらえたことは大変刺激的でした。日本国内で起業して、より上を目指すのであれば、シリコンバレーの文脈で競争するのではなく、日本ならではの機会と資源をベースにして頑張るしかないよな!と思う今日このごろです。僕もがんばります!

2016年

2015年のキーワード

FinTech

2016年のトレンド

“動画の消費スタイルの変化”が面白いと思っています。例えば、musical.lyのタテ動画を数秒間単位でスワイプすることに慣れてしまうと、YouTubeをはじめとしたテレビのメタファーを引きずっている動画サービスが非常に古臭く感じられます。ユーザーの時間の使い方が全くの別物であり、全く異なるユーザー体験なので、「動画」と呼ばない方がいいくらい。Facebookがプロフィールに動画をアップロードできるようにしたように、様々なサイトが動画に侵食されていくと思います。「◯◯のスマホ動画版」の、◯◯の中に、大手サービスの名前を入れてみるだけでも、色々なチャンスがあることに気づきます。

そして、たった今、大企業の中の偉い人へ、上記の文章をチャットで送りつけて「何かコメントある?」と聞いてみたところ、次のような声をもらいました。

「タテ動画やりたいんだよね。社内の動画ツールが縦対応してないんだけど、いい加減やれよーという話をしてる。そういう、技術的負債みたいのが残り続けてるのが悔しい。あんなの体験してみれば、すぐわかるのに。友だちから送られてくる写真だって大半が縦なんだもの。スマホ最適化されてるコンテンツに囲まれてるはずなのに、作る側に一歩回るとなぜか忘れてしまう。」

そう。気づいていることと、事業を立ち上げられることとは大違い。ということで、スタートアップの皆さん、チャンスですよ!(この領域についてフリーディスカッションしたいので、お気軽に連絡ください!

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