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映画館を音楽を体験するプラットフォームとして考えてみる。 ミュージシャン、バンド、アーティストの事務所の方への提案。

アップリンク吉祥寺で上映した『劇場版:優しいスピッツ a secret session in Obihiro』の全国興収が1億円を超えたという報道がありました。
2900円均一料金なので、興収を入場料で割ると、3万4482人です。
武道館4回公演相当かな。2,900円のCDあるいは、DVDを3万枚以上販売したことになります。

映画は、帯広の小学校での無観客ライブで、ライン録りした音を放送時にはステレオ音源だったものを5.1の映画用にミックスし直したとききます。映画館のウーファーからの低音がとても効いているサウンドでした。

通常映画館の一般料金とサービスデーなどの割引料金などを足して入場料を平均すると1300円ほどです。2900円というのは映画館としても通常の入場料の倍以上の売り上げなので商売としては助かりました。入場料の分配は、興行収入の半分を劇場、残りの半分を配給会社と分けるのがアップリンクでは通常です。

アップリンクの映画館、吉祥寺と京都のスピーカーは故田口和則さん(トップ写真)が開発した田口音響の平面スピーカーを世界で唯一取り入れている映画館です。コーン型のスピーカーとの違いは、音の解像度が高いこと、音のスイートスポットが広いので客席のどこでもリアルな音を聞くことができることにあります。

TAGUCHI スピーカーの能力を最大限に引き出すため採用したイタリアのPaowersoft社のアンプとの組み合わせに関してはこちらの記事を参照ください。
https://audiobrains.com/case/uplink-joji/

映画館作りで音に関して重要なことは、吸音材をびっちり壁に貼り、音源であるスピーカーからの音のコントロールによる再生、ようするにダビングスタジオでミックスされた音を忠実にスピーカらの音で再現することです。
世界中どの映画館でも作り手の望む音が再現されるようにという考えからです。
ただ、アップリンクの映画館は、箱の鳴りというのを少し取り入れています。吸音材を通常よりすくし少なめにして吉祥寺では5スクリーンごとに変化を与え、音が壁に若干反響する設計にしています。

また、通常の上映では、上映される映画の音の平均値を想定し周波数特性をチューニングしてあります。上映する映画ごとにチューニングを変えるということはしていません。音量の設定だけは作品ごとに変えています。
やろうと思えば、作品ごとに場内にタブレットを持ち込み、周波数ごとに音量を調整し、またアンプからの音の出力に関して、スピーカー単位でコンマ01秒単位でディレイをかけたりすることもできます。

さて、音にこだわった箱を作ったものとしてオリジナルの音楽映像の上映をやってみたいと思いました。

1)箱の特性を活かした音楽作品の製作から上映。
2)いわゆるPVの上映ではなく、演奏されているその場で聞いているような音場空間を、映画館で再現する。
3)例えば、教会のような空間での演奏、森の中での演奏、ホールやライブハウスでの演奏、ライン採りの音源と、その空間にマイクを立てたエアの音をミックスした音を映画館で聞かせる。
4)上映場所のアップリンクの映画館の音の特性を理解してもらい、映像制作を行う。もちろん、映画館ごとに音の再生環境は異なるのですが、基準値をアップリンクとした映像制作を行う。
5)ミュージシャンサイドにとっては、映画館での上映というのをCD発売のプロモーションではなく、収益をあげるCD、DVD、配信、ライブに加えて、収益を上げる体験型の新しいプラットフォームとして捉えてもらう。
6)映像制作をアップリンクと共同で制作を行い、その映像の権利を共同で所有するような形がとれないかなどと考えました。音の作り手サイドからの産地直送の音楽を映画館というプラットフォームで伝えることができないだろうかということです。

映画館のスピーカーはスクリーンの裏には、左右センターと3箇所にあります。一番音が鳴っているのは常にセンターのスピーカーです。音楽ライブでは、左右にスピーカーが設置してあり、センターにないのは、視覚的な問題があるのでしょうが、前方でライブを楽しむ人は映画で言えばセンターのスピーカーからの音がない、中抜けの音になっているのではと常々思うのですが、映画館でなら、その問題は解消できると思っています。

また、演奏を収録した映像作品のリアルな再現ではなく、映画館のサラウンドシステム、アップリンクの場合は7.1の再生を考えた、ライブではできない、映画館でしか聞くことのできない音楽の体験を作り出すことに挑戦することにも興味はあります。

以上、映画館サイドからの提案です。
ミュージシャン、バンド、アーティストの事務所の方はぜひ映画館を新しい音楽体験の場として考えてみてください。
面白い、可能性があると思われた方はご連絡ください。

 浅井隆(アップリンク代表) asai@uplink.co.jp


一番のサポートは映画館で映画を観てくださることです。 アップリンク渋谷・吉祥寺をよろしく。