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独断と偏見によるテイラースウィフト全アルバムランキング

うぃーあーねばーねばーねばーと言えば、ねばーる君最近見かけなくなったよね、どうも〇代目です。

いやぁ2024年になってからというものの、毎週東京ドームで話題のイベントがずっと行われてますね。Bruno Marsが6日間くらいライブやったのを皮切りに、Billy Joelの久しぶりの単独公演、King Gnuのツアーファイナル、私は存じ上げませんがEd Sheeranという謎の男の来日公演、テイラーの来日公演、みんな大好きで仕方なくて泣いているクイーンの来日公演、BAD HOPの解散ライブにオードリーのANNと、まぁ巨人が宮崎でキャンプやっている隙を狙ってここぞとばかりにイベント詰め放題ですね。それにしてもオードリーのANNも武道館の時点でだいぶやりすぎだべって思いましたけど、リトルトゥースさんの力もとうとう東京ドーム埋めれるレベルまで来ましたかと。筆者自身はオードリー自身は好きだけど、一昔前の若林に自分の幻影を重ねているタイプのリトルトゥースが苦手なのでなんだかなぁって感じです。俺趣味読書なんだぁ~って言って、一番好きな本は?と質問したら即レスで「斜めの夕暮れ」挙げるタイプの人間は読書が好きなわけでは無くて、オードリー若林に自分を投影して屈折している自分を肯定しよ(ここからは心の下書き)

さてそんな2月初頭ですが、筆者の彼女がお友達とテイラースウィフトのライブに行ったそうでして、テイラーやべぇというお話をここ最近小耳にはさむ機会が多かったわけなんですよ。でしかもスーパーボウルなんかもあったりして、連日テイラーのニュースをよく見かける今だからこそ彼女の作品を振り返るいい機会なんじゃないと思いまして、ここ数日テイラーの作品ばっか聴いてました。さすがに以前実施したデヴィッドボウイマラソンなんかと比べたら作品数も少ないので比較的楽でしたけど、やっぱ同じアーティストの曲ばっかを聴いていると疲れちゃうね。

そんなわけで今回は久しぶりの脳筋アルバムランキング企画ということで、世界経済までも傾かせるテイラースウィフト編です。

(追記)
この記事、2月くらいからだらだら執筆していたら、まさかの4月に11作目のオリジナルアルバム「The Tortured Poets Department」がリリースされてしまいました。グラミーの時には出ること発表されてましたし、新作出るまでにはこの記事完成させてしたいとは思っていたものの、テイラーのやる気に完全敗北しました。なので今回のランキングは1作目「Taylor Swift」から11作目「The Tortured Poets Department」までを対象とします。


テイラースウィフトに対する雑感

ランキング発表の前にテイラースウィフトに対する個人的な見解というか雑感について述べさせてください。

皆さんはテイラースウィフトについてどういうイメージを持っていますか?

恋多き魔性の女性、USカントリー出身の最大の成功者、あのMatty Healyの元カノ、パステルカラーのアコギ使ってる、一人でアイス食べてるところをパパラッチされてる、ライブの時なんであんなムチムチなスク水みたいな衣装なん?、あのMatty Healyの元カノ、体力お化け、やっぱりあのMatty Healyの元カノ。

色んなイメージが思い浮かぶと思うが、今回のアルバムマラソンでわかったことが、キャリアを通じて一貫して優れたメロディメイカーであり続けているということ。ここに関しては本当にずっとぶれていないというか、2006年デビューなのでほぼ20年近くずっとグッドメロディを作り続けているんですよね。特に「Red」ぐらいの作品までは、手癖というか自分の得意なメロディラインを確立している感があって、そういう意味ではポールマッカートニーやノエルギャラガーなんかに通じる要素はあるかと思います。

(手癖の権化ことポールマッカートニーのアルバムランキングの宣伝)

だけど彼女の特異なところというのが、いわゆるそういった歴代のメロディーメイカーたちと違ってバリバリのポップスターという立ち位置にいるところなんですよね。そういった点では自分の見え方に意識的なのか、「1984」以降はそれまでSSW風情の曲調からさらに創作の幅が広がったようにも感じます。どうしても彼女の場合は優れたメロディメイカーという点以上に、半ばゴシップのヒントにもなるような歌詞の部分に注目が行きがちなきらいはあるんですけど、ただ歌詞の部分にしても非常にストーリーテラーとしての能力がめちゃくちゃ高いので、世界中のリスナーの胸をときめかせるのも凄く納得です。

あとこれも彼女の特異な性質ではあるんですが、同年代のポップスターと比較するとリズムに対するアプローチが乏しいというか、結構一辺倒なリズムパターンでゴリ押す感じがある気はします。これ多分、テイラーの出自がカントリーっていうのもあると思ってて、あまりブラックミュージック的なバックグラウンドがほかのポップアクトと比べると下地が少ない影響によるものだと思います。マックスマーティンと組んでいた時は彼がメインストリームのダンスポップの最前線の人だったから何とかなっていたけど、アントノフと組み始めた最近の楽曲はリズムへのアプローチ弱いなって感じる部分はありますね。

あとこれは意外だったんですけど、偏屈音楽メディアとして名高いPitchforkのアルバムレビューでテイラーの作品結構点数高いんですよね。7点を下回っているのが2作品しかなくて、「Red」なんかは9.0で再録盤にいたってはBNMまで獲得しているという。ポップスターの作品には辛めの印象だっただけに、本国アメリカでもアーティストとしての地位をしっかり確立している感があるのは驚きです。

雑感は以上として、早速ランキングを見ていきましょう。


11位「Speak Now」

個人的テイラースウィフト全アルバムランキング、残念ながら最下位委に輝いたのは2010年発表の3作目「Speak Now」となりました。これが多分対処にテイラースウィフトを認知した作品なんで、オープニングを飾る「Mine」なんかは当時スカパーとかでよく聴いていた記憶があります。次作「Red」でポップな方向に舵を切るので、カントリー時代の最後の作品なんて言われ方したりしますが、個人的にはん???どこがカントリー???っていう感じでして笑。これはわいの想像するカントリーがウィリーネルソンとかドリーパートンあたりのイメージで止まってるのがいけないんですけど、でも結構最近のカントリーって割とロックと親和性高い印象はあるんで、当時流行りのポップパンクに音楽性が寄った作品って感じはしますよね。

というわけでこの「Speak Now」なんですけど、基本的には前作「Fearless」のロックな部分をさらに肉付けしていった作品といった感じで、先ほども申した通りで内容としてはポップパンクな一枚です。後ろにアリミノのワックスでツンツンに束作って前髪だけベットリ下したアシメのギターと、オールシーズン白黒ボーダーシャツと半ズボンのベースと、どこにでもいそうな大学生みたいなドラムによるバックバンド(俗にいうaik〇のバックバンド)従えてそうなポップパンク(「The Story of Us」や「Better Than Revenge」とか)が展開されています。なんなんでしょうね、この作中から漂うディズニーチャンネル感の正体は。これ単体でもいい作品だとは思うけど、このまま進化が無かったら子供っぽいチャイルドスターで終わって今の飛躍もなかったろうなとも思う一枚。


10位「Midnights」

結構直近の作品でござんすね。2019年の「Lover」からプロデューサーにジャック・アントノフを迎えてアーティスティックな性質を押し出してきた印象がありますが、個人的にはアントノフと組んでからの作品の中では一番好きじゃないんですよね。曲単位で言えばテイラー流ナイトファンクな「Lavender Haze」とか、意外とNice!の掛け声がライブだと野太い「Bejeweled」とか好きな曲はあるんですけど、しっとりとしたシンセポップ集にしたいのか、はたまた「Anti Hero」などのように大衆の期待にも添えるようなポップスターでありたいのか。正真正銘のミスアメリカーナとなってしまった彼女にとってどちらかだけを選べというのは難しいわけで、そういったとこも加味してどっちつかずなプロダクションになってしまった感は否めません。

この作品発表後に超大型ツアーに打って出たことでアリーナ向けの曲をそろえる必要があったのもあってか、「Anti Hero」や「Bejeweled」、「You're On Your Own, Kid」みたいなシンガロングしやすい曲もあります。でも一方でこの時の彼女がおそらくロールモデルとしてるのは、同じアントノフ門下生で今作でコラボもしているラナデルレイさんですね。ラナも音楽性だけで切り取ったらあんな売れなそうなアーティスティック全開な音楽性でバカスカ成功してるわけで、同じくアメリカーナ的な意識が根強いところも含めて今作に落ち着いた曲が多めに収録されたのもそういう無意識的な反動があったのかなと。そんなわけで今作割とパキっとした曲調としっとり系の曲調の二つの側面がありますが、これをメリハリと捉えられる人は好きになりやすい作品じゃないかなと思いまっせ。


9位「reputation」

これリアルタイムで先行シングルの「Look What You Made Me Do」聴いたとき、テイラーも意外とおもんない曲だすんやなぁと思った記憶がありますね。この時のテイラーってさしてそういう海外ゴシップに疎い筆者ですら、恋愛拗らせた女子の嫌なとこを煮詰めた(女友達で囲ったりするところとか)権化=テイラーみたいなイメージがあったんで、そういった当時の彼女へのバッシングに対するカウンターみたいなのが作品に色濃く反映された感はあります。

そんなわけで内容としては歴代テイラーの作品の中でも詞も音も非常にアグレッシブなものになってます。前作に収録された「Bad Blood」もそういったアグレッシブさが見られましたし、事実ケンドリックラマーともコラボしてましたが、まさかFutureとエドシーランという謎の一般人とコラボしてゴリゴリのダンストラックを作るとはっていう。誰ですかエドシーランって、僕そんな人知りませんよ。全体的に重低音でぶばばばぁぁぁぁんって感じでアジるような楽曲が多く、これも当時のEDM文化の名残りと来るトラップブームの境って感じがします。筆者自身はマックスマーティン期の作品は聴きごたえのあるポップな曲が多くて好きですが、誠実にマイクに向かって歌うストーリーテラーとしてのテイラーが好きな人からすると確かにこのアルバムが不人気なのは納得です。


8位「evermore」

2020年夏にリリースされた「folklore」から4か月くらいの短いスパンでリリースされた一枚。ロックダウン期間を活用し弾丸的に制作された「forklore」で手ごたえをえたテイラーが、その勢いのままに前作同様The Nationalのアーロンデスナーを共同プロデューサーに迎え「forklore」の姉妹作として制作されましたが、逆にその勢いが災いしてか前作ほどアルバム全体の空気感が固まってない感じがあるというか、単純に前作ほど強い訴求力のある曲が少ないんですよね。多分彼女の全作品の中でも単発で強い訴求力のある楽曲が一番少ない作品だと思います。

収録曲を見ても前作ががっつりインディーフォークにがっつり寄ったのに対し、今作はどちらかというとカントリー時代の明るさみたいのものが曲調に表れている感はありまして、「dorothea」なんかはカントリー時代のアコースティックナンバーの再構築みたいな作風になってます。あと節々にアーロンデスナーが手掛けた癖が見えるのも面白くて、「tolerate it」で後ろで鳴る打ち込みなんかはThe Nationalの「Guilty Party」ですし、「long story short」なんかはモロThe Nationalですもんね笑。その他にも前作同様重要な曲でコラボするBon Iverや、テイラーとも仲のいいHAIM姉さん達とのコラボもありと、USインディー好きは聴いて損ない作品じゃないかな。


7位「Taylor Swift」

若干16歳にしてリリースされた記念すべきデビューアルバム。彼女がカントリー畑から出てきたというのも納得なくらい、バンジョーやフィドルといったカントリーを彷彿とさせる要素がふんだんに取り入れられており、そもそも最初の曲名がカントリー界の大御所から拝借されたものです。日本でいえば16歳の女子高生がロキノンっぽい感じでデビューして、アルバム最初の1曲目でいきなりサビの冒頭で「あなたが向井秀徳について考えるとき~」なんて歌われたらロックおじさんたちホイホイしちゃうでしょ。てか向井秀徳について考える彼氏なんているのか???そう考えると割かしマッチョの極みのようなカントリーというジャンルから、等身大のティーンエイジャーの歌を乗っけて登場したテイラーの存在はある種の革命だったと思われます。

さてさて肝心のアルバムの中身ですが、一言でいえばまさに宝の山。アルバム1曲目を飾る「Tim McGraw」の時点で、16歳にして卓越したソングライティングを垣間見ることができます。そして今作はテイラーのキャリアの中でもかなりカントリー的な要素が強いため、非常にまったりとした落ち着いた空気感がアルバム全体を構成しているのもポイントです。また彼女の作詞家としての才能も「Teardrops on My Guitar」なんかでの表現を見ればこの時点で完成されており、この時点でアーティストとしてはかなり完成された型を持って登場したアーティストなのが分かります。日本でも宇多田ヒカルがそうですけど、1stアルバムの時点で完成された型を持ってる人で、そこを起点にして音楽性の拡張やスクラップアンドビルドを繰り返すので、その後の彼女のキャリアを知ったうえで聴くとといろいろな発見ができる一枚になってます。


6位「Red」

世間一般ではカントリーからポップへ移行した一枚として、ポップスターとしてのテイラー像を打ち立てたと捉えられている作品。ピッチフォークのレビュー9.0点とめちゃくちゃ高評価で、かつテイラーが程よく万人受けし始めた時期の作品なので本作を最高傑作と捉える人も多いかなという印象。でも個人的にはこの作品は良いところも悪いところも両方持ってる作品だと思ってて。良いところに関しては前作「Speak Now」の時点で若干頭打ち感があったカントリー路線から、マックスマーティンの起用により曲のバラエティ性が出てきて彼女のソングライティングの魅力がさらに増したとこ。悪いところは手癖で作ったような似通ったアコースティックナンバーが多いのに加え、収録時間も長いことから若干ダレた印象が残るところ。

収録曲で見てみるとやはり目に付くのはテラハの主題歌になったタイトルが長ぇ曲やごっつEDMな「I Knew You Were Trouble」、ライブでちびっこに足上げながら防止プレゼントする「22」などなど、マックスマーティン起用による相乗効果が生んだポップなナンバー。このいかにもイオンモールに入ってるWEGOの店内BGMで流れてそうな親身なキラキラ感が良いんですよね。同じキラキラ感でもアリアナグランデとかケイティペリーの楽曲って、やっぱTHE パ☆リ☆ピって感じですけど、テイラーがこういうキラキラ感あるポップス歌ってもなんというか前者二人と比べても普通の女子大生があこがれるキャンパスライフ的な風景で収まるじゃないですか。この圧倒的な親身で庶民的なポップスター像っていうのが彼女の良さであって、彼女がその資質を開花させた最初の一枚なんです。


5位「The Tortured Poets Department」

本記事執筆時点で、ほんとに最近リリースされたばっかの最新作。巷だと結構賛否わかれてるらしいっすね。詞の内容の良し悪し?というかジョーアルウィンがボロクソ言われて意外とMattyは好意的に言われてみたいなことについては、個人的に歌詞あんま歌詞気にしない人間なのでどうでもいいんですけど、確かに前作での「Lavender Haze」や「Anti Hero」みたいなスタジアム映えしそうな曲が無い点はファン受けが良くないのも納得ですね。まぁこればっかりは好敵手のラナのデルのレイがあんな感じの曲調で売れちゃってるのがいけない!テイラーだってラナみたいなシリアスなアーティスト像を打ち出したいお年ごろなんだからさ。

とまぁテイラーの作品の中でもかなり落ち着いた作風となったわけだが、今作を一言で表すならジャケ写の雰囲気とかも含めAORなテイラーの新境地です。20年代になってから肥大化するポップスターとしてのテイラー像に相反するかのように、作風としてはかなり内にこもってくようにインディー寄りな音像になったというか、今作は全体的にビターかつ大人なテイラーになった感はありますね。作中でも言及されていますが、テイラー版Blue Nileの「Hats」ですよ。あんまこういうと贔屓目みたいになりそうだから言いたくないんですけど、一聴したときにシンセの音使いの感触とかアントノフ繋がりなだけあってThe 1975っぽいソフトな感触はありますしね。


4位「Fearless」

まごうことないカントリー時代のテイラーのベストアルバムが今作です。今作に収録されている「Love Story」や「You Belong With Me」の特大ヒットを以てしてスターの仲間入りを果たすわけですが、今作の次の次に当たる「Red」でポップスターとしてのテイラーを確立するのとは違い、今作の特徴はカントリーの視点から見たテイラーのポップス観ってのがうかがえる一作なんですよね。その中でやはり彼女が特に力を入れた部分ってのが詞の部分で、やはりヒットした上記の2曲は”ごく普通のティーンエイジャーの恋愛像”を赤裸々かつロマンティックに清純なカントリー少女は歌うっていうのがウケたわけでして、そこに第1作の時点で手癖が確立されている作曲術が合わさるので、彼女のディスコグラフィの中でも最も彼女の本質をとらえた作品になっている気がします。

アルバムの内容としては実直かつまっすぐな彼女の魅力が最大限発揮されており、ここから憶測交じりのゴシップの世界に身を投じ揉まれていくことを知っている身としては、リリース時18歳という状況を見ても一番何不自由ない時代に作られただけあってのびのびとしている印象はうかがえます。これぞストーリーテラーとしてのテイラーとも言うべき「Love Story」、やっぱり否めないディズニーチャンネル感の「You Belong With Me」、お得意のアコギバラード「White Horse」、力強い「Fearless」や「Change」など、ここまで強度の高いポップソングを18歳で作り上げたというだけでも底知れぬ才能なのがうかがえます。


3位「1989」

完全にカントリーの人からポップスの人となった象徴的な作品ですね。そんなわけで古くからアコースティックギター持ってまっすぐ歌うテイラーが好きな人からすると、そんな歌って踊るマドンナみたいなテイラーは見たくないんやって声が挙がるのもわかるし、こんなほかの誰がやっても変わらんやんけって言いたくなる人の気持ちもわからなくはないです。ただ、ぶっちゃけ純粋に歌モノのポップスのアルバムとして、ここまで捨て所がないくらいどの曲も抜け目ないアルバムって中々無いっすよ。同年代のシンセポップ系のアルバムで飽きずに走り抜けられる作品ってこれとWalk The Moonの「Different Color」ぐらいしか無いんじゃないですか?それだけテイラー自身のソングライティングが抜群な証拠なわけで、また今作でのポップスへの開き直りが彼女の作家としての引き出しをさらに広げたのは事実。

当時はEDM全盛期、しかも当時のテイラーの彼氏はいやお前歌えるんかいでお馴染みカルヴィンハリスなわけで、サウンド面もEDMの影響がうかがえるバッキバキのシンセサウンドでコーティングされてます。でも不思議なことにここまでギラっとした感じの音楽性になったにも関わらず、先述の「Red」で書いたようなイオンモールに入ってるWEGOの店内BGMで流れてそうな親身なキラキラ感が損なわれていないんですよ。強いていうなら入学時はデニムジャケットにロングスカートの芋っぽい大学1年女子が、サークルに入って革ジャン黒スキニーに変化したぐらい程度の変化で収まっていて、この垢抜けない洗練されてない彼女の魅力が楽曲に普遍的な良さをもたらしている感があって今聴いても良いんですよね。


2位「Lover」

現在までタッグが続くジャックアントノフを迎えた最初の作品。前作「reputation」ががっつり闇落ちセレブ的なアグレッシブな作品になったが、今作はジャケ写の時点でもわかる通り一転してカラフルな作風へと回帰したもの。だがしかし音像としては「1989」のようなパキパキのシンセポップというよりは、HAIM姉さんなんかを彷彿とさせるようなドリームポップ的な夢見心地なヴァイブスで鳴らされている。また彼女の意識下の中でアメリカーナ的なマインドが芽生えてきた作品という印象もあり、親LGBTQとも捉えられるメッセージ性のある楽曲が目立つようになったのも今作の特徴。

PATDのブレンドンユーリーを迎えた会心のポップスの「ME!」、インディーポップのヴァイブスへ上手く消化されたアコギバラードの「Lover」、屈指のサマーアンセム「Cruel Summer」など、カントリーに培ったまっすぐなソングライティング、ポップスターとしての映えるソングライティング、二つのソングライターとしての側面をちょうどよい要領で使い分けつつ、アントノフによるハッピーかつドリーミーなサウンドで仕立てるというもの。今作が2019年というパンデミック前の狂騒じみた時期の夏にリリースされたという観点においても、テイラーが政治スタンスを明らかにし自信をミスアメリカーナとして再解釈し始めた点でもターニングポイントな一枚だ。


1位「forklore」

テイラースウィフトというアーティスト像を確立させた「Fearless」、ポップスターとしての自信の価値を確立させた「1989」、そして「Lover」にて自らをミスアメリカーナとして再解釈し作家としてのテイラースウィフト像を確立させたの今作「forklore」である。パンデミックによるツアー中止とロックダウン生活により、比較的プロモーションにも力を入れなくてもよい環境下となったことが彼女の創作意欲をさらに掻き立たせることとなった本作は、アントノフに加えThe Nationalのアーロンデスナーをプロデューサーに迎え、コラボ相手にはBon Iverを招へいするというインディーフォーク人脈をフル活用。結果として8月にサプライズリリースされた本作は、事前告知なしという驚き以上に、非常にSSW作品としてテイラースウィフトがアメリカで屈指のソングライターであることを証明するものとなった。

タイトルにある通り本作の楽曲はこれまで数々のロマンスを紡いできた彼女が、より"物語"という側面に重きを置いて作詞がなされている。「cardigan」「august」「betty」のような3つの曲を通じて描かれる三角関係の模様や、石油会社の富豪と結婚した女性の物語を描く「the last great american dynasty」など、まさに伝承というタイトルにもふさわしい卓越した作家性を発揮している。また今作におけるインディーフォークへの接近により、自然と自己のルーツであるカントリー、つまりはアメリカン・フォークロア・ミュージックに回帰するよう動きを見せたことも、ある意味テイラースウィフトという一人のアメリカ人女性のアイデンティティの探求の過程を示すこととなる。まさにこの後その一挙一足が経済レベルで影響力を持つこととなるテイラーがここでアメリカ人としてのアイデンティティを示したことこそ、彼女がミスアメリカーナたる所以であり、TAYLOR LIKES AMERICA & AMERICA LIKES TAYLORになるわけなんですよ。今同時期にラナのデルのレイさんとかビヨンセみたいにアメリカの女性として自国や社会に対して批評的な眼差しを向けるアーティストが増えてきたけど、このムーブメントってレーガン政権下の強いアメリカを推し進めようとした中で戦後の豊かな時代とベトナム戦後の疲弊した70年代末を対比させ悲哀で描いたビリージョエルやブルーススプリングスティーンのような動きと同じ感覚がある気がしましてね。だからこそ未曾有のパンデミックの中、BLM運動などの価値観のパラダイムが起こる自国に対して、自身も含めたアイデンティティとはという意味合いを図らずしも孕むことになった、まさに時代の潮流と合致した奇跡の一枚が本作なのかもしれませんね。




これを機にみんなもテイラー聴いてみよう~
というわけで最後に個人的にお気に入りのテイラーの15曲を貼っ付けて終わりにしまーす。



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