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わたしのご自愛サプリ

GW明け初日の朝、マンションのエントランスで男の子がわんわんと泣いていた。

小さな体に対してあまりにも大きくて、まだピカピカのランドセル。学校に慣れていないうちに長い休みがあったから、きっと戸惑ったのだろう。


毎年今頃になると、「五月病」という言葉をよく耳にする。なんとなく体調が悪いとか、やる気が出ないとか、心身に不調が現れる状態のことを言うらしい。

心と体は繋がっている。けれど、学校や仕事へ行ったり、連休があったり、ある程度世間と同じスケジュールで過ごしていると、自分の状態は意外と見えづらいと思う。

『ご自愛ください』という言葉があるけれど、これが案外難しい。ご自愛の方法にはマニュアルや特効薬があるわけではなく、それぞれに合う方法や、何をどれだけどんな風にするのかという調合があるのだ。

今回は、わたしが実際にやっているご自愛の方法を紹介してみようと思う。

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私は本が好きだ。読むことも好きだけれど、それ以前に、本と出会い、触れて、本棚へ迎え入れる一連の作業が好きなのだ。

本との出会い方は、自分の状態によって変化する。だから、直感的に手に取った本がその時の自分の感情・思考を教えてくれる気がする。

私は、少し落ち込んだ時や頭が回らない時、”私の、私による、私のためのお買い物券” を自分自身に発行して、決めた予算いっぱいまで本を選び、たくさん買う。

予算的に気になった本を諦める必要が少なくなるから、古本屋さんへ行くことが多い。4月の終わり頃、2000円のBOOKOFFお買い物券を発行して、5冊の本を迎え入れた。5冊それぞれと出会った時を振り返りながら、改めてその時の自分を見つめ直してみる。


アプリの200円クーポンが使えたので、5冊で1800円。残りの200円はコンビニでどら焼きを買って帰った。


  1. 考える練習をしよう / マリリン・バーンズ(200円で購入)

[コメント]
この本の存在は前から知っていたが、今まで特に出会いが無かった。5冊の中で最も「今読むべきだ」と感じた本で、帰った後にすぐに読んだ。
ただ唯一の正解なんて無いのだと、字面では分かっていても、無意識に求めてしまっていた…とハッと気がつける本。論理的思考と水平的思考の重なり合うところを、分かりよい寄り添う物語で語られていて、とても良かった。



2.深く、しっかり息をして / 川上未映子(1200円で購入)

[コメント]
雑誌Hanakoの連載エッセイ「りぼんにお願い」シリーズの完結編。コロナ禍の時にHanakoでこの連載の第234回「あることの難しさ」を読み、とても心が救われたのを思い出した。残念ながら、この回は収録されていなかったけれど、作者の繊細な感性とたしかな眼差しで紡がれた言葉に心がじんわりと温まる。寝る前に少しずつ読んでいる。


3. 自分の仕事をつくる / 西村佳哲(200円で購入)

[コメント]
社会と自分とをつなぐ仕事の捉え方を、出来るだけ多く知りたいと思って手に取った。働き方について思索し続けている作者が、さまざまな仕事の現場を訪ねるインタビュー形式で読みやすい。


4.考え方のコツ / 松浦弥太郎(100円で購入)

[コメント]
1の「考える練習をしよう」のような思考法の本ではなく、作者の仕事についての考えがまとめられた本。松浦弥太郎氏は「丁寧な暮らし」ではなく、「丁寧に暮らしている人」という印象があって、丁寧に暮らしている人の丁寧な仕事について知りたいと思って手に取った。



5.こんなに長い幸福の不在 / 銀色夏生(100円で購入)

[コメント]
合唱部時代によく歌った「僕が守る」という合唱曲の歌詞を書いた詩人、という認識だったので、曲の歌詞とは対照的なタイトルに惹かれてすぐに読んだ。
タイトルの通り、確かに憂鬱な心をつらつらと書き留めているのに、あまりにも素直な言葉だから、なんだかかわいらしさがあった。どんな感情も自分のもので、自分の言葉でしか外へ出せないのだから、私もこのくらい素直でありたい、あっていいのだと思えて嬉しかった。

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今回選んだ5冊のタイトルや内容をさらってみると、少しずつテーマが重複している。この時の私は、なんとなく憂鬱でゆっくりしたくて、でも何かを考えたくて、考える方法や人の考え方を知りたがっている。

5冊を選ぶ前までは、ぼんやりとしていた思考回路が、選んだ本によってクリアになった。

落ち込んでいたり疲れていたりすると、自分の状態を言語化するのが難しい場合がある。けれど、この方法だと外側から自分を眺めることができる。

心と体は繋がっている。だから「本」という媒体で、あえて切り離して、いろんな角度から観てみたり、光を当ててみたりするのがいいのかもしれない。


5月も半ば、皆さま、ご自愛くださいね。


この記事を書いた人:keina
コーヒーとフィルムカメラが好き。

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