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【昔話】China Groveな男と仙台の夜 (後編)

前編はこちらから↓

25歳、ひとしきり私は悩んでいた。

仕事もつまらないし、特定の彼氏もいない、趣味のDJもやっていきたいけど、その当時はまだネットの普及もそこまでない時代。自分を売り込むにはアナログ的な道場破りのような手法でしかなかった。
クラブを調べては電話をかけ、デモテープを送り、実際にクラブでプレイ、クラブ側に認められれば空いている時間に呼ばれる、という感じだった。知り合いや伝手が無ければ、こういう地道な行動をしないといけなかった。

いつだったか、見ず知らずのDJ同士でテープを送り合った事があった。その時に私は衝撃を受けた。

自分は下手すぎる・・・

新譜のレコードを追いかけるにも、新しい機材を買うにも、腕が無ければ金の無駄だ。私は腕も無ければ曲も知らないくせに、それでもクラブでのDJプレイはしてみたかった。このまま私は趣味として続けていいものかどうか悩んでいた。

そこで仙台でのDJプレイ

ここでなら出来るかもしれない。女のDJなんていったら、多少下手でも多少曲を知らなくても重宝されるかもしれない。
「渋谷で回してました」
なんてホラでも吹いておけば、仙台のクラブでならイケルと思った。

(決して仙台をバカにしている訳ではございません。その当時の正直な気持ちです)

ちょっと相沢さんの話から遠のきましたwww

仙台の相沢さんのマンションに滞在中、マナさんがお風呂に入っている時に、私はベランダでタバコを吸っている相沢さんに話しかけた。

「相沢さん、マナさんと結婚する気は無いの?」

マナさんは29歳、相沢さんも36歳と、結構いい歳をこいていた。
もう同棲生活も半同棲を含めて5年にもなっていたが、相沢さんの答えは

「今のところ、マナと結婚するつもりはない」

独身貴族を貫いているようだった。
私からは何も言えることはなかったが、マナさんは結婚したがっているのにかわいそうだと思った。すると相沢さんは、

「平山とだったら、今すぐ結婚してもいいけどな」

と言った。

「え?」

その時ちょうど、マナさんがお風呂から出たばかりだったので、その話はそれで終わりになった。恐らく冗談で言ったのだと思うけど、前に仙台に行ってすぐに「寂しい」と電話をかけてきた相沢さんだから、万が一無くも無いかなと思ってしまった・・・


そして、4日間の仙台滞在ののち、東京へ帰る際に仙台駅まで送ってもらう車の中でのことだった。

私「仙台楽しかったー。今回もお世話になりました。ますます仙台が好きになったよ。このまま住んじゃおうかな」
相沢さん「おー、そうしろそうしろ。お前が来たら楽しくなると思うよ。もし本気でDJやるなら仙台でやればいい。何度も言うが仙台は音楽の街だからお前を歓迎するよ。なんならうちにしばらく住んでもいいし、平山、仙台来い!」
私「えー、本気で考えちゃおっかなー」
そんな感じで2人で盛り上がっていると、それまで一切口を開かなかったマナさんが急にブルブルと身体を震わせながら、

「私はアヤが来るなら出ていきます。どうぞ2人で暮らして下さい」

と言い放った。

え????

私と相沢さんは固まってしまった。
え???
何???
いや、そういう意味じゃないんだけど、別に、あの、私は別に相沢さんのこと、いや相沢さんもそういう風には私の事見てないし、いやその・・・

するとマナさんは、

「3LDKのマンションに女2人と男1人は、やっぱりおかしいでしょ。アヤが仙台来るのはいいと思うけど、そしたらきちんと部屋を借りて、仕事もして、そうしないと・・・」

と、いきなり真面目腐った事を言い出してびっくりした。
(いや、マナさんが言ったことは正論なんだけどねw)


そんな訳で、私の仙台移住計画はその後も色々考えたが、結局は夢に終わる事になった。

それにしてもあの時マナさんがいきり立った時はびっくりしたけど、マナさんもマナさんで、結婚していない身だったからちょっと心配だったんだろうなと思いました。私もかなり調子に乗ってはいたんだけどw

その後も一度仙台に遊びに行きましたが、その時はすでに私は結婚していたので、移住とかそんな事は考えませんでした。
あの時仲よしだった相沢さんとマナさんはその後別れることになりました。マナさんは一度東京に戻ってきましたが、心と身体を壊し、10年もの仙台生活が離れがたかったらしく、その後相沢さんの友人と結婚して仙台に戻りました(いいんかいwww)

今でも相沢さん、マナさん元気かな?と思います。
ちなみに相沢さんは、未だに独身貴族を貫いているとの事です。


最後に相沢さんとの思い出の曲を貼っておきます。

「ビートルズの曲を知らないなんて、お前は真の音楽好きとは言わせない!」

と怒られた事を思い出しました。

チャイナグローブじゃないんかいwww





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