主人公

自分の人生の主人公は、自分。

これまでそれが当たり前のことだと、ずーっと思ってきた。だからこそ、今やりたいこととか、楽しいことととか、興味あること、全部やらなきゃ損!と信じて疑わなかった。

でも、最近「いや、果たしてそうだろうか?」と思う瞬間が増えてきている。

「わたし一人で出来ることって、すっげー少ないな」

きっと普通の人なら、とっくに気づいているようなことを、ようやく身を以て実感している。

だから、この世の中には、会社や家族など、大小さまざまなコミュニティがある。人が人として生きていくために、何千年も前から続いている流れ。その営みにはきちんと理由があるのだなぁ、と今更ながら感心する。

これからも主人公で居続けることは、きっと楽しい。自分が思うままに楽しく仕事をして、充実した人生を送ることもできるだろう。ただ、「永遠に主人公で居続けること」と「何かを為すこと」は、また別の話なのだと思う。

ふと、学生の頃に大好きだったバンドの曲をかけてみた。当時は、その曲を聴くだけで、恐ろしいほどの感情の渦が自分を襲っていた。社会の何もかもに対する反発心や強い怒り、焼き尽くされんばかりの恋情、驚くほど静かな虚無や悲しみ。今、そのメロディをなぞっても「懐かしいなぁ」という感情だけが、一握り残っているだけ。

そして、そのバンドはもう、人前で歌うのを辞めている。

「彼らも主人公ではいられなくなったんだな」

この感情を、「寂しい」とか「昔は良かった」とか、そんな風に消化しているわけじゃない。今は、それを静かに受け入れている。そして、逆にこの波の立たない静謐な感情の中で、自分は何を生み出せるのか、ちょっと楽しみになったりもしている。

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