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感想_映画_空の青さを知る人よ

こんばんは、ベルです。

今上映中の映画「空の青さを知る人よ」を見てきました。ネタバレ盛りだくさんなので、まだ見てない人で、見る予定あるよって人は、この記事をあんまり読まない方がいいかもね……

僕は映画を色々見てきたんだけど……「空の青さを知る人よ」は一番好きだと思う。そのくらい感動したし、お金あんまりないけど、パンフレットとサントラを頂戴してしまいました。

この映画って「SORAAO」(ソラアオ)って略していいのか? 公式販売のTシャツにそうプリントしてあるんだけど……タイトル長いんで、以後この映画の呼称は「ソラアオ」とします。(笑)


アニメ映画がすき

閑話休題。

僕が観る映画って、アニメ映画が多いんだけれども。「興味を引くものが大体アニメ映画だったから……」などと言いたい気持ちは山々な一方で、チラシに目をやるのは大体アニメ映画なわけでして……

三次元の映画が嫌いなわけじゃないんだよ。ただ、アニメ映画(二次元)って少しだけデフォルメされた世界でね、具体的な情報がちょっと省かれているのがいい。見ていて余計なところを気にしなくていいっていうか。鑑賞者の感覚で、いくらでも現実に即したイメージができる。

本物を映さなくたって別に……本物のように世界に入っていけるのですヨ。

でもそこに本物の人間が映ってしまっていると、その「固有な人間」のイメージが強くてね。どこか他人事のような鑑賞の仕方になっているんじゃないかって。

あとは……三次元的なのは、アニメ映画よりもむしろ俗世感が強くてね。物語の内容だけじゃなくて、俳優さんそのものを見世物にする感じが否めなくて、そこがちょっと抵抗あるんだな。アニメ映画の登場人物は、登場人物としての魅力だけで勝負しているように感じられる。

そして二次元なら、多少無茶な動きも無理なく表現できる。変なことにも違和感がない。でも三次元だと、ちょっとでも変なことがあると世界観の違いなのか、受け入れ辛いのね。


全体的にあかねさんが印象的

まあ、そんなこんなで……「さっさと本題に入れよ!」とみなさんが思っているんじゃないかなー……と思うので、入るんですけど

この映画を観て、感想が一言しか許されないとしたら、何を言うか。

「あかねさん好き!!」

ははは……主人公のあおいちゃんよりもあかねさんを中心に物語が動いているような感じでね。あかねさんが何を考えているか、というのが終始頭から離れなかったかな。あかねさん、あんまり喋らないキャラクターなんだけれど、僕はあかねさんのような人が身近にいたら怖いなって思う。いや、いるんだけれどね……あんまり身近じゃないけどさ。

あかねさんの語らなさって、ちょっと怖い。

いや、好きなのか、怖いのかどっちだよ。どっちもですヨ。

泣いたところも見たことない。本当のところがどうなのか見えない。あかねさんは不満なのか、本望なのか分からない。それがこの映画の興味深いところであって、奥深いところだと思うの。それが見えずに、登場人物たちが右往左往しているように見えた。

それがなんか、現実世界で至る所に起こっていることの象徴のようで。今自分が生きている世界ってこんなんばっかりなのかもしれなかった。


非科学的なことはあまり気にならなかった

アニメ映画ならではの非科学的描写。三次元でも頑張れば映画化できるとは思うんだけどね、どうしても世界観の違いが出てきてしまって……不思議なことが起こっても、アニメだから許される。それはまぁさっき言った話と同じなんだけれど

でも、タイムスリップするとか、空を飛ぶとか、そんなことはどうでもよかった。それを突っ込む気も起こらないくらい、それ以上に他の事が気になった。ここがこの映画の魅力的なところなんだと思う。物語を見ていて、考えさせられる場面が多い。

「それは現実に起こり得るか否か?」ということじゃない。「今起こったことについてどう考えるか?」という問いがずっと向けられているような。だから、全然単調な映画なんかじゃない。受け入れることに忙しくて、考えることに忙しくて、でも物語は進んでいく。人間関係はごちゃごちゃになっていく。そんな焦りが観ているうちに積もっていって、どうなることやらとハラハラする。

なんか、ずっとこういう映画が観たかったんだな、って思ったよ。

僕はギターもバンドも全然知らないんだけど、それすらもどうだっていい。知識なんて全然いらない。なんなら音楽にそれほど興味がない人にだって、十分に楽しめる映画なのかもしれなかった。

それだけ、この映画に訴えられるものがあって、心を動かされていたんだなあとnoteを書いてて改めて思う。


恋愛が全面に押し出ていない印象

トピックとして挙げてはみたんだけどさぁ……本質的なことは前項と同じでね。恋愛要素も確かに強いことは強いんだけど、「そんなことより登場人物はどうしたらいいんだろう?」っていうのを考えるのに忙しくて、キュンキュンしている場合ではないのである。

そもそも劇中に、キュンと来る場面なんて……あったか? (あれ?)

情緒もクソもない告白シーンも嫌いじゃなかったんだー。ロマンチックって場面はあんまりない。「お、ロマンチックだ、これは」と思いきや、直後あかねさんが涙を流してしまう。現実味と妥協の入り混じった大人の事情が入り混じった恋愛が物語のサブストーリー(?)として進んでいく。

恋愛を全面に押し出した物語って、感情に来るけど、結構ストレスもあってさ。主人公の行動に感情移入ができるかどうかというのが結構鑑賞者に左右されたりなんかして、作品によってはバラバラな感想を持つわけ。

ソラアオは、恋愛の進め方を考えさせられるんじゃなくて、それ以外の問題を考えさせられる場面が多い。それで「自分だったらこうする」っていうような、自分の意見というか正解が上手く定まらない。上手く定まらないから、登場人物が「やむをえず」走った行動の結果がどうなっても「仕方がない」って受け入れることができる。

その仕方ないの連続で進んでいく物語に、現実の厳しさと、社会で生きていく難しさを感じた。


妥協が要される大人たち

これもアレだなぁ……前項に共通するところはおおいことなんだけど。僕も社会に出るまで、なんなら働き始めて数年たつまで大人の苦しみなんて何も知らなかった。

「思い通りにならないってなんだよ、思い通りになるように動けよ」って思ってた。社会に出て初めのころは、目標高く自分で走り出して、それはそれはアクティブだったなあ。

でも、それではやっていけない、ということをそのうち悟るの……どこかで折り合いをつけて、最低限自分の生活が脅かされないように、取り繕う必要があるの……それが妥協。慎之介の姿は、そんな大人のなれの果てというか、代表的な姿のように感じた。

世の中は正しいだけじゃ、やっていけない。正しいを受け入れない人が世の中にはたくさんいるから。それに苦しめられている僕は、悩んでいることが思想なのか恋なのか夢なのかの違いはあれど、でも諦めた自分の姿とよく似ていて慎之介の姿を責めきれなかったし、でも同族嫌悪のようなものはあっってね。

それにしても、最初に慎之介が登場したときのあの印象の悪さ。作者さん、意図的にみすぼらしく描いてるんじゃないかと思ったヨ(きっと、しんのと対比させるためにそういう意図が実際にあるとは思う)。あの楽しくなさげな演奏で、アミューズメント系でやっていけるのかなあと思うなどしたり。

悲壮感というのか? 大人が子供を見る視線は、とてもとても。

それに反感を持つ自分が、まだ子供だということを実感したし、大人になりたくないなあって改めて思う。この映画でいうと、あおいちゃんのベースが「自分が目立とうとしてる」って指摘を慎之介がしている場面の、何とも言いようのない不快感。あの台詞を、慎之介がなんのつもりで言ったのかは、よくわかっていない。本当にベースが独り歩きしていたのかもしれないし、あおいちゃんへの嫌悪もあったのかもしれない。

痒いところに手が届かないような、そういう要素がこの映画にあって、それがとても興味深いんだ。


慎之介とあかねさんのホテルの場面の現実味

僕が映画を観てて、すごく現実的だなと思った場面が実はコレ。

あるんですよ。慎之介をホテルまで送り届けたあかねさんを、性的関係に持ち込もうとする描写が(玉砕するのだが)。その強引さが、社会で生きていくうえで身につく、というのことを考えさせられたりして。こういうことをしないと、上手く事を運べられない、社会で生きるって辛いなあと思いを巡らせるよ。

それで、あかねさんが冷たく言い放つの。「がっかりさせないで」って。

そして、あかねさんが何考えているのか、わからない。

ここが印象深かったという人、鑑賞者の中にいったい何人いるのだろう? 印象に残ることは残るんだろうけど、あかねさんを引き込もうとした慎之介の行動を、ただの悪印象で終わらせてしまうには、とても勿体ない場面のような気がするんだ。

純粋な出会いなんてきっとない。どこかで汚いことしなくちゃ、異性との関係なんて築けないかもしれない。本編とはズレていることだけど、社会のそんな一面を垣間見た気がしたのである。


あかねさんが市役所勤務という設定が好き

これ。これこれ。これなんですよ。

実をいうと、僕が映画で、あかねさんに注目した最大の理由。あかねさんが市役所勤務だということ。

お役所の、事務的な仕事。それは僕にとって、仕事の象徴みたいなものがあって、そこで働いている人は、現場で働く自分よりも遥かに遠いところにいるような気がして、ちょっとコンプレックスを感じていたりする。知人が事務職(総合職)につくと、凄いなって思うのと同時に、自分は……って思う。

そんなコンプレックスを抱えたまま。市役所に勤務するあかねさんを中心にして物語が動いていくというのは、僕にとって結構なことでして。あかねさんが仕事を回している場面を観るのはちょっとつらかった。

つらかったけど、一方で、あかねさんへの強いあこがれがそれで生まれたんだと思う。映画の印象が「あかねさんが好き」っていうのは、あかねさんが何食わぬ顔で働いている場面が寄与しているんだ、実はね。

ははは……

別に自分が市役所に勤めたかったってわけじゃないんだけどね。ただ……周りの優秀な人は、市役所に勤めるって印象があるもんだからね。友人が、優秀な人間関係の中に離れて行ってしまうというトラウマを抱えているところが掘り起こされて

なんか、自分から離れていった、友人を見ているみたいだった。それがあかねさんの姿と重なって。だから映画であかねさんの印象が強くなってしまったのである。


本編で語り切らずに、EDでハッピーエンドを示唆

僕はですねえ、物語はハッピーエンドが好みなのです!

バッドエンドって、しっちゃかめっちゃかにして「あとは知らん」って感じがして好きじゃない。鑑賞者に疑問を残すような終わり方も、気持ち悪いのもあるんだけど、解決しきらずに物語を終えるっていうのが不完全なものを見ているようで嫌だなあと思う。

ソラアオはどうかというと、あかねさんと慎之介が二人で幸せになったかどうかというのは本編中では語られない。ついでにあおいちゃんがその後どうなったのか(上京したのか進学したのかさえ)も語られない。新渡戸さんの町おこしがどうなったかも知らない。正嗣くんの恋とか、中村さんの恋とかも。いろいろな気になることが語りつくされないままスタッフロールが流れてしまう。

でも、でもね。

エンディングで、写真がちらほら流れてくるんだけど、少なくともあかねさんと慎之介は結婚したらしい、というのがわかる。物語の一番大きな問題が解決して、後は日常に戻って、普通の生活をそれぞれしている、ご想像にお任せしますってことなんだろうか。

恋愛ものの物語は、大きく分けて4つあると思う。

出会って付き合って、何のトラブルなく終始ラブラブな話。付き合って困難を乗り越えてさらに仲良くなったという話。出会って付き合うまでの話。最終的に玉砕して主人公が成長する話(笑)。僕はちなみに最初のラブラブが一番好きです。(苦笑)

付き合って「お幸せにー!」って感じで終わる恋愛物語を多く見てきたような気がするのだが、どうだろうか? ソラアオはそうだけど、そうじゃないよね。人間関係をうまく調整しながら、どうやって二人が歩み寄れるかっていうのが問題で、付き合えるか付き合えないかを目標にしているわけじゃないって踏んだ。

そんな心配事は、「ツナマヨ作ろっかな」から結婚式の写真で一応解決していることを知らせてくれるのだ。あとの気になることは些細な問題。どしどし想像にお任せください。でも無視しちゃいけないコアなことは、ちゃんと結末を教えてくれている。本編で事細かに語るような野暮な真似をせずに……ね。

想像に任せるっていうのを、どの程度許すか、なんだけどさ。具体的に語りすぎると、たぶんむしろ冷めちゃうんじゃないかなって思う。エンディングでちらっとゴールしたんだよーって風にさらっとした感じが好きだったなあって話。綺麗な終わり方だなって思うよ。


眉毛が太いヒロイン2人のイラストが結構好み

もはや物語とは全然関係ない。(笑)

あおいちゃんとあかねさんの血筋として、身体的特徴が設けられているのだけれど、それが眉毛なのである。

「眉毛が太い」……これの良さをどう伝えたらいいんだろう?

例えば、かわいい女の子、美しい女性を描こうというときに、眉毛太くします? しないと思うの……。なんならできるだけ細く描きたくなるものなんじゃないかな。現代の美しい女性像って細眉だと思うからね。

でも、敢えてダサい方向に身体的特徴があって、それが愛らしさになっているというか。超個人的な感覚で申し訳ないのだけどね、僕はちょっとダサい見た目がとても好き。ヒロインが無機質に完璧な美しさを持っていると感情移入がしにくい、現実味がなくて

食事もトイレもするし、ゴロゴロしたり、ポリポリしたり。そんな描写が劇中に含まれているっていうのを、とても魅力的に感じた。

プラスチックのように美しい女の子じゃなくて、ちゃんと人間として普通に生きているんだって思わせてくれる。そんな場面がちゃんと設けられていて、物語への感情移入を手助けしてくれたのだろうと思っている。


まとめ

感想を書くと、ひたすら感じたことをダラダラ書き続けてしまうからいけない。どうまとめたらいいのだろう。とりあえず、この映画、比類なく好きな映画になったので……小説版も注文してしまったのですが

スタッフさん、ありがとうございます。本当に感動的な映画でした。

この映画が1800円で楽しめるのは、アレかな……お得感あると思う。

もう一度観たら、また感想が変わるかもしれないね。

ただ、いろいろとトラウマを掘り起こされたり、考えさせられる物語ではあると思うので、一度見るとダメージは大きいかも。メンタルに余裕がないと、寝込んでしまうかもしれない。聲の形のように気軽に見られるような映画ではないのかもしれない。


ここまで読んでくださったみなさんは、もうソラアオを観終わっていると信じているぞ。もしもまだ観てない人がこれを観ていたら、勿体ないから、映画館に行ってみてきてください。

僕の感想を読んでいるより、自分で見て感想を持って欲しいし、語ってほしい。

そんでもって、感想を持ったら、僕と一緒に珈琲を片手に、ケーキをつつきながら、一緒に感想を披露しあいたいな、そんな風に思うのですよ。


とても、面白かった。


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