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ふるさと納税の図解

ふるさと納税を図解してみました。

追記:
ついに「政策図解」が本になりました。これまでnoteで書いた記事を大幅加筆して生まれました。社会のしくみがみえてくる、50の政策を図解した本です。よければぜひご覧ください!

この図解は「政策図解」という形式で書かれています。政策図解は、1枚で政策の基本的な情報をモデル化するものです。

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このようなモデルで、上から対象者の段、真ん中が政策の段、下が実施者の段になっています。

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つまり、だれに対して、どのように、なぜ、だれが行う政策なのか、大枠を理解するためのモデルです。今回はふるさと納税のモデルを図解しています。

ふるさと納税の背景や現状について文章でも説明しています。まずは図解を先にみて大枠をつかみ、文章を読んでさらに理解を深めるか、文章の方が読み慣れている方は文章から読んだあとに後で図解をみるのもいいと思います。それではどうぞ。

ふるさと納税

希望する自治体に寄附をして税金の控除を受けられる制度

政策図解事例マスタS_note用-6

ふるさと納税を知っている人は多いだろう。この制度を利用していなくても、「その地域の特産品を買ったら、得する仕組みだよね?」などと考える人も多いだろう。

もともと、その地域で暮らす住民を支えるサービスはその地域の住民同士が共同で負担し合うもの、つまり「地域社会の会費」(1)という考えに基づく仕組みになっている。

みなさんも、納めている住民税、給与明細などでその金額を見たことはあると思う。この住民税が地方税の一種だ。住んでいる地域で、都道府県や市区町村が行う教育、福祉、消防、救急、ゴミ処理などの行政サービスの財源として利用されている。

しかし、現代は東京圏への一極集中が問題視されており、生まれてからしばらくは地方で生活し、大人になってから東京などの都市部に引っ越して働く人も多い。これが長年続くと、地方では行政サービスの維持に必要な税金を十分に得ることができなくなってしまう。

そうした課題を解消するため、普通なら”住んでいる地域だけに納める”税金を、”住んでいない地域にも納める”ことができるように作られたのが、ふるさと納税制度である。

ふるさと納税制度を用いて現在住んでいる地域以外に寄附を行えば、その寄附額のうち2,000円を超える額が、住んでいる地域に納める住民税や国に納める所得税から控除される。

例えば、他の地域に2万円の寄附を行った場合、1万8,000円分が戻ってくるということだ。この2,000円は自己負担になる。

しかし、各自治体が特産品などの返礼品を寄附者に贈るようになったこと、そしてその返礼品を検索できるサイトが複数生まれたことにより、実質2,000円で特産品が手に入るお得な仕組みとなっている。

なお、「寄附」という表記なのはどうしてだろうか。それは、このふるさと納税は、地方自治体等に寄附した金額を税金から差し引く、という地方税法や所得税法のルールを応用したものだからだ。これは、制度を理解する上で重要なポイントでもある。

最近では寄附獲得のために、創意工夫をしている自治体も多い。例えば、食べ物や工芸品などの「モノ」だけではなく旅行や体験などの「コト」を返礼品にするケースや、クラウドファンディングのように自治体の取組に対して寄附を募るケースも増えてきている。

また、一定の条件を満たす納税者に対して、ふるさと納税の手続きを簡易化する「ワンストップ特例制度」もあり、制度の改善も図られている。

こうした動きもあり、制度が始まった2008年度はふるさと納税制度による寄附額は81.4億円、寄附件数は5.4万件であったのが、2019年度にはそれぞれ4,875億円、2,333万件まで急成長した。

2019年度に最も多く寄附を集めたのは大阪府泉佐野市で、約185億円、約30万件(2)であった。泉佐野市の同年度の一般会計予算が約539億円(3)だったため、その3割程度を占めることからもふるさと納税の影響度の大きさがわかるだろう。

一方その成長の裏では、寄附獲得のために極端に高額な返礼品が用いられる問題や、逆に、自分の自治体の住民がふるさと納税を積極的に行ってしまったために税収が減少する問題も新たに生まれてきた。

前者に対しては、返礼品を寄附額の3割以下とするルールが2019年から定められた。後者についてはホームページなどで問題提起をし、住民に向けてふるさと納税をしないよう呼びかけている自治体もある。

総務省はふるさと納税の意義を、「納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。(中略)税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会になる」(4) と謳っている。

(1)総務省「地方税体系」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_01.html

(2)総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和2年度実施)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000701504.pdf

(3)泉佐野市「令和2年度予算の概要」
http://www.city.izumisano.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/34/yosangaiyou02.pdf

(4)総務省「ふるさと納税の理念」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/policy/

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説明は以上です。

ふるさと納税、個人的にも活用させてもらっていますが、毎回何にするか悩みますよね。でも毎年くだものやお肉など、ふるさと納税フィーバーで近所の方にお裾分けしながら、生活が助けられています。

政策図解の、前回の記事がこちらです↓

実はこれまで政策図解はまとめて記事にしていましたが、今回は実験的に、ひとつだけ政策をとりあげて記事としてまとめる形にしています。

そうすることで、よりタイムリーに記事を公開することができ、反響を得ながら調整して進められると考えたからです。

今後もさまざまな政策をとりあげて、モデルとして図解していくことで大枠をつかみやすくし、政策に興味のある人が増えるといいなと思います。

あと、あらたに「政策図解シリーズ」というマガジンをつくりました!これまでの政策図解の記事もまとめました。今後もこのマガジンに追加していきたいと思います。ぜひフォローしてみてください!

以下、今回の記事のクレジットです。

図解&原稿:光武佳寿美
レビュー:沖山誠、近藤哲朗、中野亜海

最後まで見ていただいてありがとうございました。以上です。

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