Camera.

真っ黒な雲と真っ青な空が
太陽もはばからずに出逢い
無性に素敵な予感が胸を巡る
ペンもない紙もない
ましてやカメラなんて持ってない
こんなときこの胸の中をどうやって残そう

「ただ前に歩いていくだけで
 遠ざかる胸を奪う景色を
 一体あとどれくらい
 覚えていられるだろう。」

シャッターを切り損ねたら
もうそれっきり 二度と出会さないでしょう
街を抜け海を渡る風のように
僕らはとまれない

その日 その時 木々の脈拍
雲の形 雨の気まぐれを
揺れる火の命 色褪せた小説
氷の溶け方 ティースプーンの錆び付きを

取るに足らないことなんていっぱいある
本当は身の回りにはそんなものばっかり
切り取った一瞬の中にくたり眠ってる
君がへそ曲げてる理由………
それだけが気になってる

この世界をかたどるあらゆる分子たちが
感動を生んだと思えば不意に牙を剥く
「その一瞬」のためだけに
僕はこれから生きていけるだろうか

そんな物思いを焼き付けながら
交差点を曲がる


***


2014年に書いたもののリメイク、原典消失(忘備録)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?