見出し画像

こんな私にだってマネジメントができるかもしれない。

「私にマネジメントは無理だ」

これが私の思い込みです。まだ過渡期なので、もしかしたら思い込みだと思い込みたいだけの残酷で悲しい現実なのかもしれません。私はこれまで研究現場でそれなりの成果をあげてきました。それなりに評価していただき、今はそれなりの立場になっています。さらに上を目指そうとしたところで大きな壁にぶち当たりました。

「リーダーシップの発揮」ができないのです。

入社面接で長所と短所を聞かれたときに「私は多くの人が気がつかないことに気がつけるけど、多くの人が当たり前のように気がつけることに気がつけない」という話をしました。どうやらモノの見方が少し世間とズレているのです。その特性が採用の決め手になったとは思っていませんが、実際のところ、研究現場で手を動かすことで私の特性は遺憾なく発揮され、ありがたいことに(少なくとも論文上では)世界で誰も気がついていない現象を発見することもできました。

ところが、多くの人が当たり前のように気がつけることに気がつけない世間ズレしている私は、誰かを巻き込んで仕事をすることが得意ではありません。先に述べた通り「リーダーシップの発揮」ができないのです。それでもそれなりの立場になってしまったため、無理矢理にでもマネジメントをしなければなりません。昨年下半期はついに研究現場から距離をおいて研究遂行のための調整役に徹することになりました。やってみてわかったことはやっぱり向いていないなということでした。自分の手を使わないと勘所がわからず計画が立てられないのです。勘所がわかる人に聞けよと言われればそれはそう。優しい先輩方から「こうしたらいいよ」とアドバイスをもらっても、これがどうにもうまくできなくて。得意なことから距離をおいて得意でないことばかりしなければならない日々は決して楽しいものではなく、語弊はあるかもしれませんが、ニガテでも完食しなければならない居残り給食を毎日させられているような心持ちでした。

さらに上を目指すためには「マネジメント」をする能力が必須で、そのためには「リーダーシップの発揮」をしなければならず、そのためには居残り給食を克服しなければならない。克服できなければ居残り給食を毎日続けるしかない。「リーダーシップの発揮」を身につけるための研修を受けてもしっくりこなくて簡単には克服できそうにない。キャリア形成と自分の心身に限界を感じて、初めて部署異動や転職を真面目に考えました。

そんな中で出会ったのが株式会社ミライロです。

というと、この会社に転職したのではと思われそうですが、そういうことではありません。この会社の経営理念とビジョン、代表である垣内俊哉さんのメッセージに触れていたく心を打たれたということです。下記に代表メッセージの一部を抜粋します。

足で歩くことができないと知った日、私は絶望しました。それから、多くの人の支えを受け「歩けなくてもできること」を探し、その道を進む中で「歩けないからできること」を見つけました。
車いすに乗っている私の目線の高さは106cmです。この高さだからこそ、気づけること、伝えられることがあります。
人には誰しも、弱みやコンプレックスがあります。ネガティブに見えることも、視点を変えればそれらは強みに、そして、価値へと変えていけます。

株式会社三ライロ、代表プロフィールより

垣内さんは企業理念に「バリアバリュー」を掲げ「小さな想いを、大きなうねりに変える会社」を目指してビジネスを展開されています。

これらを読んで体に衝撃が走ったのを覚えています。私が部署異動や転職を考えたのは「リーダーシップの発揮ができなくてもできること」を探す行為。一方で「リーダーシップの発揮ができないからできること」を考えたことはありませんでした。もしかしたら「リーダーシップの発揮」ができない私にしか生み出せない価値やキャリアがあるんじゃないでしょうか。

それが何なのか。今、まさに探し始めたところです。最近は「リーダーシップの発揮」について引き続き努力をしながら、並行して「リーダーシップの発揮」ができなくてもマネジメントする方法について考えながら仕事をしています。状況はあまり変わっていないのですが、考え方が変わると不思議なもので、居残り給食も随分と楽しくなってきました。幸い、食べ終わるまで待ってもらえる環境ではあるので、食べ方の試行錯誤を繰り返す日々です。

まずは私が「リーダーシップの発揮」ができない阻害要因を挙げることから。これは簡単ですが紛れもなく「リーダーシップの発揮」ができない私だからできることのひとつです。息をするように「リーダーシップの発揮」ができる人には理解できない阻害要因を可視化することで、うまく取り除くことができれば、私のような特性の研究者がマネジメントできるようになる道筋を描くことができるかもしれません。さらに私の世間ズレした「多くの人が気がつかないことに気がつける」能力をうまく使って「リーダーシップの発揮」を代替することにより「リーダーシップの発揮」ができなくても、できる人と同等、或いはそれ以上の成果をあげる道筋を描くことができれば、かなりカッコいいんじゃないでしょうか。

私のような状況は実はそんなに珍しいことではありません。研究とマネジメントは要求される専門性やスキルが異なるので、研究に向いている人が必ずしもマネジメントに向いているとは限らないのです。逆もしかりで、マネジメントに向いている人が研究に向いているわけでもありません。それでも一般的な企業研究職のキャリア形成は、研究現場で経験を積んでマネージャーに昇進することで、レールに乗れない場合は選択を迫られるものと認識しています。これまでも研究能力に特化するあまり、マネジメントの壁にぶつかって、研究成果をあげているのに、部署異動や転職をすることになる先輩を何人か見てきました。これは研究現場にとって大きな損失です。そして今、私はまさにその岐路に立たされています。

「私でもマネジメントはできる」

……かどうかはまだよくわかりません。それでも無理だと思い込んで後ろ向きに働くよりも、前を向いていた方が生産的で楽しいので、私のような特性でも企業内で活きられるキャリア形成のモデルケースになれるよう、明日からもあがき続けます。私だからこそ生み出せる新しい価値の創出を目指して。

余談
誰かと話をすると「いい会社だね」と言われることが多いです。転職経験がなく比べることはできませんがきっといい会社なのでしょう。加えて私のような人間でも採ってくれたという恩義もあり、転職よりは自分の力を最大限発揮して会社と社会に貢献できるポジションを築くことを模索したいと考えています。

頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となる。