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いま、サウナハットはこんな感じに進化してます

名古屋でサウナハットに開眼

サウナにハマったばかりの初心者である私は、サウナをもっとよく知りたい、有名施設を体験してみたいという思いから、新幹線に乗って名古屋の超有名サウナ「ウェルビー栄」を訪れた。文句なく愛知県のトップ施設であり、かの板東英二をして「ここが大好き ここが大切な家」とまで言わしめた、至高のサウナ体験が味わえる場所、ウェルビー栄。マニアがこぞって絶賛するサウナ室や水風呂のすばらしさに感動した私だったが、その日私が気づいたのは、色とりどりのサウナハットを着用してサウナを楽しむ人の多さであった。名古屋ではサウナハットが流行っているのだろうか。東京でも着用する人は多いが、名古屋で見かけたサウナファンはより積極的に、ファッション、遊びとして楽しんでいるように見えた。

ウェルビー栄には「Sauna Theater Nagoya」と呼ばれる大きなサウナ室があり、館内着姿の男女が100人ほど揃って、アウフグースショーと呼ばれる催し物を楽しむ。巨大サウナ室に集まった男女が、みな個性的なサウナハットをファッションのひとつとしてかぶりつつ、ショーに歓声を送る姿は、とても新鮮な体験だった。名古屋のサウナシーン、こんな感じになってるのか。地方ごとの文化の差ってあるんだなとあらためて思った。アウフグースショーそのものも楽しく、いい催し物だった。サウナ室での催し物なので、終わると汗をかいていて、身体が熱くなっている。私はここに新しい文化を見た気がした。ショーを楽しむエンジョイの精神が、カラフルで個性的なサウナハットにあらわれている。私もサウナハットを使ってはいたが、わりと地味なデザインのものだった。今後はもっとおしゃれさを意識しつつ着用していくべきではないか。今後サウナはカルチャーとして広がっていくであろう、という感覚を、ウェルビー栄のアウフグースショーを見て感じたのだった。

サウナハットに目覚めた私

サウナハットは何の役に立つ?

そもそもどうしてサウナハットが要るのだろうか。あれはなにをするモノなのか。サウナを知らない方にはよくわからないかもしれない。目的はいくつかあり、「熱で髪がパサパサになるのを防ぐ」「熱さでのぼせないよう頭部を守る」などが主な機能になるが、個人的には「耳を熱から防ぐ」目的がいちばん大きい。サウナ室内の熱さが頂点に達したとき、耳が痛くなる場合がある。身体の末端部分がやられるのだ。サウナファンはよく「耳が取れそうだった」と形容するが、熱いサウナ室に入ると耳がヒリヒリするような感覚がある。サウナハットはその痛みをやわらげてくれる役割があるのだ。結果としてサウナ室にいる時間が長くなり、ととのいやすくなる。便利な道具なのである。

そして何よりサウナハットは、サウナにおいて唯一のアパレル要素でもある。サウナ利用者は、サウナに入るとき全裸である。なにも着用できない。そのため、どこからどう見ても野性の状態、野蛮人も同然であり、文明とは無縁のけもののような存在になってしまう。私はこの部分に不満があった。たとえサウナに入っているときにも、私たちは野獣ではないということ、洗練された文化を持つ高貴な人物であることを示したいと思っていた。考えてみれば、スケートボードにはスケーターのファッションがあり、ダンサーにも彼ら固有の服装がある。茶道なら着物でキメるのがならわしだ。あらゆる文化には、それに呼応したファッション、ドレスコードがあるものだが、サウナ愛好者にはそれがない。なぜなら施設内ではいつも全裸だからだ。これは率直に悲しいと思う。切実にファッション性がほしい。サウナを文化として高めていくためには、なんらかのアパレル要素が不可欠であり、サウナハットはその唯一の機会なのではないか、と私は思った。

サウナハットの進化

完全防備だよ

この写真を見てほしい。溶接の作業をするときにこんなやつを被っている人を見かけたことがあるが、これはサウナハットである。いま、サウナハットはこのレベルに達しているのだ。熱から頭部を守る、という目的が進化した結果、虚無僧のかぶる笠みたいなエクストリーム製品が登場してしまったのである。どうしてこんな防御をするのか。もちろん、熱いのはイヤだからである。それはそうだ。誰だって熱いのはイヤだし、苦しい。わざわざストーブを焚いた熱い部屋に入るなんて、つらいに決まっているのだ。だからこそ、虚無僧サウナハットで完全防御する。これで熱さを感じずにいられる。理に適っているし、非常に便利な道具であると思う。

牛みたいになってるのもあるぞ

素材もさまざまである。多くの人がイメージするのはフェルト素材だが、それ以外にもタオル生地、リネンなどがある。個人的にはメッシュがいちばん好きで、いま使っているサウナハットでいちばん機能性が高いのはメッシュだと思っている。「メッシュ三重構造」「熱波から守る素材は鉄壁」など、マグマの噴き出す火山にでも探検へ行くのかと思うような高機能が謳われているケースも多い。また、各サウナ施設が、施設名の入ったサウナハットを販売するケースも多く、ノベルティグッズとしての用途、着用することでサウナ施設に対する応援の気持ちを表明するといったケースも見られるのがおもしろい。音楽ファンが物販のTシャツを買って、ライブに着て行くのにも似ている。全国のサウナ施設のグッズを販売する「全国サウナ物産展」は、あまりに人が来すぎて入場が困難なほどだ。私も出かけたのだが、昼の12時に到着したところ、「夕方17時からなら入れる」と整理券を渡され、「5時間待ちかぁ~」と入場をあきらめてしまった。

新しい楽しみ方の提案

私が、名古屋のサウナファンを観察したり、SNSでサウナハットの写真をあげているサウナーの方々を見て学んだのは、キーホルダーの使い方であった。これはなかなかおもしろかったのでご紹介したい。写真を見ていただきたいのだが、サウナハットには必ず「フック」がついている。

ハットの上に必ずフック

このフックはなぜついているか。サウナ室から出て、水風呂に入ったり外気浴をする際にサウナハットは使用しないので、壁にかけておくことが多い。たいていのサウナ施設には「サウナハットをかけておく場所」が準備されており、サウナ室から出ると、まずサウナハットをかけておくのだ。そうすれば、施設内で持ち歩く必要がない。だからこそ、サウナハットにはフックがついていなくてはならないのだ。

サウナ室を出たところにだいたいあります

しかしここには、ひとつ注意しなければならない点がある。「他の利用者のサウナハットを間違えて取ってしまう」ことである。ハットの色や質感が似ていると、つい間違ってしまう場合があるのだ。これを避けるため、フックにキーホルダーをつけて目印にする人が増えてきた。無印良品が、傘立てに置いた自分の傘を判別するために、傘につける目じるしを販売していたが、基本的にはこれと同じ目的である。

間違えて持って行かれないようにする目じるし

サウナハットに情報を盛り込んでいく

最初は間違い防止だったキーホルダーだが、ここにファッション要素、あるいはサウナファンであればわかるだろう文脈(コンテクスト)を盛り込んでくるパターンが出てきた。「好きなサウナ施設のキーホルダーをつける」のである。これを初めて見たときは「なるほどな〜」と思った。さっそくマネし始めた私。

I love SKC

サウナハットのフックに、「草加健康センター」のキーホルダーをつける。これだけで、熱いサウナ室が大好きなガチサウナーというメッセージが刻み込まれる。いいね。あたかも、アイドルのライブでメンバーカラーのグッズを身につける感覚で、自分の好きなサウナ施設を冠したサウナハットが完成するのだ。実際に施設でサウナハットにキーホルダーをつけている人はまだ少ないけれど、SNSなどでは見かけるようになってきた。サウナハットにデコり要素が入ってきたのが、意外でおもしろいと私は思った。ちょっとミーハーっぽいが、まずは楽しむことが大事だと思う私は、この遊びに凝り始めたのである。このメソッドを応用すれば、合わせ技もできる。

組み合わせで表現

「サウナ東京(赤坂)」の限定サウナハットに、「黄金湯(錦糸町)」のキーホルダーをつける。これで情報量が2倍。自分の好きな施設をダブルで応援できる高等テクだ。このサウナハットで大阪や名古屋へサウナ旅に出かけると、現地サウナーから「おっ、関東勢だな」と認識されることになる。遊び方は自由で、サウナ旅をしたついでに現地施設のキーホルダーを買ってもいいし、全国サウナ物産展や通販などで「いつか行ってみたい施設」のキーホルダーを入手するのも楽しそうだ。先述した通り、サウナにはなにしろアパレル要素がない。サウナハットとキーホルダー以外、おしゃれポイントが残っていないのだ。ひと昔前の高校球児がやたら眉毛を細くしていたようなもので、なにしろ丸刈りだから、いじるポイントが眉しか残っていないのである。他にオシャレ要素がないぶん、せめてサウナハットで遊ばせてほしいのだ。

サウナハットについては、ちょっとミーハーな感じであれこれデコっていくのがおもしろいと思うし、そこに好きな施設を応援する要素が入ってきているのは楽しいなと感じている。人気施設がコラボレーションした、ダブルネームのTシャツなども販売されており、この手法は Supreme か Nike かという感じのコラボメソッドになっているのも気になるところだ。サウナがもっとファッション要素を高めていくことで、カルチャーとしての位置を確立する必要があると思っている私は、まずはサウナハットの楽しさを広めていくべきなのではないかと考えているのだった。そして言いたい。私たちサウナーは全裸の野蛮人ではないと。よかったら使ってみてください、サウナハット。

【サウナも好きですが、スキンケアも大好きです】

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