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山本寛斎と祖母の色

洋服屋で働いています。
最近は積極的にお声かけできない状況ですので
少し距離を取っての商品整理をしていますが
声を掛けて頂くと とても嬉しいです。

そんな中で
よく使われる言葉があります。

「普通のある?」

男性のお客様で多いのは
「普通のズボンある?」
・・・・・
「普通のズボンてなんじゃい」
と近所のおじさんになら言えるところですが😋

「普通ですか・・」
とまず一呼吸。

そして
その人にとっての普通を探ります。

Gパンが普通の人もいれば
チノパンだったり
シャカシャカしたスポーツパンツだったり
スラックスだったり
どれも普通と言えば普通

店内には一通りの商品が並んでいるので
とりあえず ボトムス売り場にご案内。

今時の要素がないシルエット、そう、ストレートのズボンを普通とおっしゃる方が多いので、いくつかのストレートをご案内。とはいえ流行に左右されるのが洋服屋というもの。全てがシンプルなフォルムのズボンは少ないです。そこで私はアンクルパンツをオススメしてみます。最近のアンクルパンツは、タックが入っていなくても、太もも周りがゆったりしていたり、ストレッチが効いた生地なので履き心地が楽。そしてアンクル丈なので、大概お裾直しをしなくても捌ける。
おじさま達が「足が長くなった?」と錯覚するくらい嬉しい効果が。

見せたら一言
「これ?普通か?」
と言われるのですが>^_^<
「最近の普通です」
と返して😋とりあえず履いて頂くと・・・

「お?いいなこれ。」

やった~
「お似合いですよ>^_^<」
「色違いあるか?」
「もちろんでございます~お好きなお色は?」
と言う展開に・・・>^_^<


・・・・   ・・・    ・・・・・・
普通を大多数という意味で捉えている方は
周りから見た普通になりがちだけれど
自分の好きなスタイルを見つけて欲しいと思います。

「こんなズボンが欲しい」と
言って欲しい>^_^<

縛られている普通から
一歩出てチャレンジして下さると
ステキなイメージチェンジが出来て
とても嬉しいです。

私の普通は
私が普通でいられる要素
のこと。

自分軸の普通。

そんなことを考えていたら

もしかて
着心地の良いシルエット
色や 素材なんかは
誰にでも
原点が あるのではないかと
思いました。

・・・・   ・・・・・    ・・・・・
私の原点は 祖母の手縫い。

レースがあったり 襟に刺繍があったり 段々のスカートだったり
とても手が込んでいて可愛いものでした。

時には ドラえもんのように胸の前に大きく作られたポケットに
マジックで私の顔を描くという、斬新さもありました。

それを着ているときの気持ちは そう 

世界一愛されている気持ち

幸せ

自分だけの服

私は祖母の洋服から
スタイルの自由
教わったと思います。

それと同時に学んだのは
色使いです。

子ども服なのに
黒地に白のユリ模様
(白い襟には金色のスパンコール)

上が白で下は緑に枯れ葉(茶色)の模様のワンピース
(袖と襟口に濃い緑のマチがある)

鮮やかなピンクに茶色
(せっかく可愛い生地だけどフリフリにしないで茶色で縁取り)

3歳の七五三の着物はオレンジ色で
7歳は紫にオレンジの花模様でした。

今考えると ちょっと変わった組み合わせだったと思います。
→(派手😅)


そんな祖母の作る服が大好きだった私は
外に出る用事がない日も可愛いいワンピースにお着替えをしていました。
袖を通して後ろのファスナーをキューッと上げる瞬間の
きちんとする感じが好きでした。
一日中 母の鏡台の前に座り
リボンの結び方を研究したり
おしゃまなポーズをとってみたり
ポップなヘアースタイル?!を考案していました。

出かけるから綺麗にするのではなくて
好きだからおしゃれをすることを
誰にも止められずに出来た時間。

何もない日でもウキウキの時間。


・・・   ・・・・   ・・・
初めて自分で洋服を選んだのは4年生くらいです。
母とよく行った銀座の三越でのこと。

電車に乗るだけですぐに疲れる私を、母はいつも地下のお寿司屋さんに連れて行きます。鯵と赤貝とまぐろの中落ち軍艦が当時のお気に入りでした。私は2,3貫好きなネタを頼んで頂く。少しお腹に入れておかないと、その後の時間、私が待ちくたびれて、ヘロヘロになってしまうのを母はよくわかっていたのです。

おやつの後は母のフィッティングが待っていますから。

母はヒロココシノが好き。何着も試着するので毎回1、2時間を優に超えていたと思います。私は隣の個室に座って待つ。カーテンを開けたり閉めたり、たまに母と店員さんを眺めたり ぽけーっとしたり。退屈なんだけれど、おやつも頂いた後だし、その時間は嫌いじゃありませんでした。母が選ぶ洋服はどれも面白く、どこのお母さんも着ていないような物でした。

スカート部分が幾重の布になっているワンピース。
鮮やかな空色に墨で描いたような幾何学模様のワンピース。
ゴールドブラウンの光沢が混じった
ワイン色のジャケットとロングスカートのセットアップ。

母が ではなくて、ヒロココシノさんのデザインが面白かったんだと、大人になってわかりましたけれど、子どもながらに、こんな格好が似合うのはうちのママくらいだと思っていました。

そして私も洋服を選ぶ日。

「何か買う?」
と言われて選んだお店は
KANSAI YAMAMOTOでした。


私が初めて気に入ったのは
やわらかいTシャツのような
カットソー生地を
2着分くらい使って
フレアにしている
真っ白なミニスカート。

左右を持って
上に持ち上げると
まるで花びらのように
腰よりも上まで開き
バック一面に国旗が描かれていました。

シビレルデザイン・・・

「着て帰りたい」
その日から
「買ったお洋服に着替えて帰る」
というスタイルも始まりました。

トップスに選んだのは
コバルトブルーに
KANSAI独特の柄が入ったスエットシャツ
これも生地が良くて
なぜか子ども特有のトレーナー感がない。
ミニスカートによく似合うクロップド丈。



気に入った洋服は
脱いだ後に放ったりしないものですね。
お部屋にフックを取り付けて
スカート用のハンガーで飾りました。
それは私にとっての絵画でした。

気に入った物を眺める時間の長いこと。。。

好きな服だけを数着
ローテーションしていたので
白のスカートは数日おきに学校に着て行き
「今日もそれだね」
と言われました。
私は
「すごいね。私 誰の洋服も覚えてない~」
って言っちゃうような子でしたけど😅


寛斎さんに出会った私は
少しずつ祖母の手作りを卒業しました。
そして
洋服とは 自由で明るく楽しい というイメージを
変えることなく小学生活を送りました。

洋服ストレス0だった時期です。

それから私は中学生になり
友達に教えてもらった場所に母を連れて行く事になります。

新しいファッションビルが出来たと
数人の友達が楽しそうに話しているのを聞いて
行ってみた街は 大田区蒲田。

ビックリしました👀

若い子向けのお店ばかりが建ち並ぶモールに
同じくらいの年の子がたくさんいるのです。
世の中にはこんな場所があるのか!
賑やかな音楽のかかる その場所を
いっぺんに気に入りました。

それから何度も母に付いてきてもらい
銀座に付き合うことは少なくなりました。

翌年になると
違う友達に新宿を教えてもらい
友達との買い物も覚えました。
ルミネの階段を上ったり下りたりして一日中過ごしたり
アルタを上から下まで くまなく見て回ったり
一通りの町並みを教えてもらうと
1人で彷徨いに行くようにもなりました。

そして高校から成人までは
渋谷、原宿、下北エリアに大変お世話になり
子育てが始まってからは都内を離れたので
郊外のショッピングモールと
ファストファッションにお世話になっています。

・・・

どんな場所でも 探しているのは 自分色


・・・・   ・・・   ・・・・
自分で洋服を選ぶようになってからずっと

友達とはズレた感覚だった私。

それは色の取り合わせ。

よく言えば

誰とも被らない色選び

悪くは・・・

言わないでおこう 笑


買い物をする場所は変わっても
人目を気にして選ばないってことは
ずっと変わっていなかった。


独特の色使いを
他の人に指摘されるようになってから
祖母からの影響を受けているんだと気がつきました。


今なら思うんです。

祖母の 色を組み合わせる センスって

抜群 だったんだわ。

そして

寛斎さんの 色使いは
祖母のそれと 似ているんだ。

あの時
一目惚れした
意味がわかった。


私は 今
あの頃の 母と 同じ年頃になっているんだけれど
大人な街 銀座に 
戻る予定は 無いけどね

こんなにも長きにわたり

二人が私を支えているのだと

改めて

最近 気がついたのです。


私の普通は私が普通でいられる要素のこと。


それは寛斎さんの色をまとっていたり
祖母の配色を感じているとき。

そのことを
よくわかっているから

働く洋服屋では
お客さんのセンスを尊重したい。

そして
たまに発動する個人的な色合わせで
お客さんを喜ばせたいと思っちゃう。


下の写真は山本寛斎亡き後の
KANSAI YAMAMOTOチームが渋谷を歩く姿です
(NEWSよりお借りしました)
これを見ると インパクトが凄すぎて
普段は着られない💦
と思ってしまうのだけれど
フレームに収めるように
一部分をクローズアップしてみると
素材や配色が やっぱり素晴らしくて
とても勉強になる。

刺激的っていうのかな。


簡潔に言うと

潔くて

かっこいい

ファッション



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2人の娘も七五三で着てくれた
祖母の着物は宝物。
いつ見ても色あせない
むしろ新しさを感じる
時代を超えた色合いだと思う

生地アップを撮ってみました⤵

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紫を見ると オレンジを✕ したくなるし
コバルトブルーには 白い筆文字を✖️ したくなる私。

祖母と寛斎さんの声が聞こえるよう。

「いいね」

「元気で良い」




・・・・・・::・・・・・・・・・::・・
後日
small designさんがこの記事を掲載して下さいました🎀
とても楽しい考察です。
建築に興味のある方はぜひご覧下さい⤵