見出し画像

当事者の声を聴きながら、平時からのつながりを考える <だれ一人取り残さない防災研究会出張版>‐サイエンスアゴラ2023をふりかえって①(第1部:公開セッション)

みなさんこんにちは。チャレコミ防災チームの瀬沼です。

今回は、2023年11月18日-19日に開催されたサイエンスアゴラに出展させていただいたときの様子をご紹介したいと思います。

サイエンスアゴラとは、あらゆる人に開かれた科学と社会をつなぐ広場の総称です。 サイエンスアゴラは、異なる分野・セクター・年代・国籍を超えた関係者をつなぎ、さまざまな人たちが各地で主体的に推進する活動の広場です。 この広場に集まる人たちが多様な価値観を認め合いながら、対話・協働を通じて、これからの「社会とともにある科学」と「科学とともにある社会」の実現を目指します。

https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/about.html  より

今回の出展は研究会の幹事メンバーでもある科学技術振興機構(JST)さんからのお声がけで実現したものでした。
今回は「関東大震災から100年~防災におけるコレクティブインパクトの創出に向けて」と題し、第1部の公開セッション、第2部のネットワーキングセッションに分けて開催しました。

第1部登壇者のご紹介

第1部では、5名の方にご登壇いただき、災害時に発生する被害や、実際に東日本大震災の時に難病当事者とそのご家族にどんな困難があったのか、それを乗り越えるために現在はどんな工夫をされているのかなど様々な立場の方からお伺いしました。

登壇者の方々

話題提供① 来る大災害が与え得るインパクト
  渡辺研司さん(名古屋工業大学 社会工学専攻 教授)
話題提供② 誰一人取り残さないインクルーシブ防災~当事者の視点から学ぶ
  高橋桃子さん(レット症候群/呼吸困難の難病当事者)
  栗山進一さん(東北大学 災害科学国際研究所 所長)
話題提供③ 地域で「平時のつながり」を築く中間支援組織の役割
  山田健一郎さん(公益財団法人佐賀未来創造基金 理事長)

施される公助から対等な立場で街を守る公助へ

冒頭の渡辺先生のお話からは、首都圏で災害が発生する場合、最大452万人もの帰宅困難者が発生し、そのうち66万人が行き場がなく、一時避難場所も22万人不足するとの予測があることが共有されました。

名古屋工業大学 社会工学専攻 教授 渡辺研司さん

もしそうなってしまったとき、自分がその66万人の一人になってしまう可能性もあります。もしそうならなかったとしても、自分の会社があるエリアに帰宅困難者となる人が多くいる可能性も高くなるのです。
これまでは公助として助けが来るのを「待っている」ことが普通でした。しかし、首都圏直下型地震ではそれでは到底足りない被害が発生することが想定されます。
そうした時私たちはただ助けを待つだけではなく、一人ひとりが行政機関や重要インフラ事業者だけで対応する限界を知り、一人ひとりの自助の積み上げによって公助を助けることの必要性を具体的な数字から改めて感じることができました。

想像ではなく、面と向かって当事者の声を聴く

続いてご登壇いただいたのは東北大学 災害科学国際研究所 所長の栗山進一さんと栗山先生と一緒に研究を進められている高橋桃子さん親子。今回は栗山先生からのご推薦もあり、難病当事者が災害時にどのような困難と直面したのか当事者としてお話しいただきました。

高橋桃子さん(レット症候群/呼吸困難の難病当事者)(左)と
  栗山進一さん(東北大学 災害科学国際研究所 所長)(右)

特に印象的だったのは、高橋さん親子が東日本大震災の時に最も大変だったこととして「避難所に行けないことで家族の食事がなかったこと」を挙げていたことでした。災害が発生すると当事者の方だけでなくそれを支えるご家族の皆さんも同じく被災者になります。当事者の方の準備だけでなくそれを支える家族や周囲の方々をどう支えていくのか?を考えることは、私たち自身も自分が被災した時、何かできないことが発生した時にお互いにどう助け合っていけるのか?を考えるための大きな気づきを頂きました。

それでも足りないものはみんなで地域に創り出していく

最後にお話しいただいたのは公益財団法人佐賀未来創造基金 理事長の山田健一郎さん。佐賀県では、佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)を組織し、現在62団体が賛同団体として登録しています。

公益財団法人佐賀未来創造基金 理事長 山田健一郎さん

近年、佐賀では毎年のように豪雨災害が発生し、県内だけでは支援の手が足りないのが現状です。そうした中で支援に必要となる人・モノ・金・情報などの様々なリソースを県内外で集め、必要な場所に届けるSPFの役割は大きくなっています。今後は、既に災害支援に関わっている行政や社会福祉協議会、地域の中間支援組織などだけでなくより多くの企業を巻き込んだ支援の仕組みを構築していく必要性を感じているという声は、現在災害に苦しむ全国各地に共通する痛切な声だったのではないかと思います。


災害はみなさんにとって非日常かもしれません。
しかし、非日常と日常は切り離された世界ではなく日常の延長上にあります。だからこそ、一人ひとりが自分は何ができるのかを考え続け、行動することが大きな力になるのではないかと感じる機会となりました。

次回は第2部の様子をお伝えしたいと思います。

*   *   *   *   *   *

だれ一人取り残さない防災研究会では、災害が起こったときには日常からのつながりが重要になると考えています。
そのために、都市部の大企業や研究者の方々、地域のNPO、中間支援組織など立場の異なる方々が日常から学びあい、つながりをつくることで「もしも」の時にお互いのリソースを持ち寄れる関係性をつくること。
話を聞くだけでなく、参加するそれぞれの主体が自分たちの防災・災害支援に対しての取り組みを相談したり、仲間と組んで実際にやってみる機会にすることを目的に開催しています。

毎月第3月曜日に勉強会を開催していますので、ご関心のある方は以下のホームページをご覧いただき、研究会メンバーにお申し込みください。


この記事が参加している募集

防災いまできること

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?