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【選挙ウォッチャー】 オウム真理教の死刑囚の死刑執行が異例すぎる件。

国会では今、カジノ法案や水道民営化法案を話し合っており、両法案とも強行採決に踏み切られる可能性が出ています。そして、安倍晋三総理は自民党の総裁選3選目を目指し、まさにアピールを続けているところです。そのアピールの一環が7月6日の松本智津夫死刑囚を含む、オウム真理教関連の事件の死刑囚の死刑執行だったと言っても過言ではありません。地下鉄サリン事件などでたくさんの人を無差別に殺し、死刑になったのだから、いずれ刑が執行されるのは当然かもしれません。オウム真理教の事件に巻き込まれ、人生を奈落の底に落とされた人もたくさんいます。そういうことを考えれば、100回死刑になっても足りないという感覚を持つ人もたくさんいるかもしれませんが、今回の死刑執行はあらゆる意味で「異例」であり、これほど死刑執行がエンターテイメントと化したのは、近代国家とは思えない人権意識の低さゆえだと思います。皆さん、自民党総裁選3選目に向けた安倍晋三総理の酷いメッセージをぜひ受け取ってください。


■ この死刑執行は、総裁選のアピールのためである

今回のオウム真理教が関連する事件の死刑囚たちの死刑執行は、安倍晋三総理の自民党総裁選のために執り行われたと言っても過言ではありません。「死刑囚はいずれ死刑が執行されるのだから、たまたまこの時期になっただけだろう」という人もいることでしょう。しかし、安倍晋三総理をはじめ、自民党の議員たちは自分たちを支持する人たちのために巧みにメッセージを送っています。片山さつき(参・全国ブロック)議員のTwitterを見てみましょう。

このツイートは、7月5日22時58分にされています。つまり、オウム真理教関連の死刑囚たちの死刑が執行される前日の夜ということになります。この日、上川陽子法務大臣(衆・静岡1区)や安倍晋三総理は議員宿舎会議室で「赤坂自民亭」なる若手議員との交流会を開催しました。酒盛りをして、自民党議員たちと親睦を深めたということになっています。そして、全員集合の記念写真では安倍晋三総理と上川陽子法務大臣が隣同士で並び、まるでハンコを押すかのようなポーズをしたのです。

国会議員は、普通に酒盛りを楽しんだだけで批判を集めるような仕事です。ましてや、この日は全国的に大雨が降っており、特に関西・山陰・四国・九州地方では河川が氾濫する危険があり、予断を許さない状況でした。そんな中、総理大臣を中心に自民党の法務大臣、防衛大臣、復興大臣、政調会長、総務会長が参加し、酒盛りをしていたわけです。特に、防衛大臣と復興大臣はこの大雨に警戒しなければならない時なのに、一緒に酒盛りを楽しんでいたのですから、この国の危機管理は一体、どうなっているのでしょうか。オウム真理教の死刑執行がなくても、こんな写真をアップすればどうなるかは分かっているはずなのに、それを承知でわざわざアップしているというのは、メッセージ以外のナニモノでもありません。安倍晋三総理と上川陽子法務大臣が隣同士で並んで親指を立てているのも、単なる偶然だというなら、よほど配慮することのできない無能のバカだということになります。
死刑執行は法務大臣が認めなければ執行されません。ましてや世間の関心の高いオウム真理教の死刑囚たちともなれば、その日の気分で「さーて、今日あたり死刑にしてみようっかな!」と決めて、その日のうちに執行することは絶対にありません。前々から執行日を決め、事前にハンコを押していなければ執行されないのです。前日の夜に上川陽子法務大臣が知らないことは絶対ありませんし、タイミングを間違えれば安倍政権の支持率にも影響してくるわけですから安倍晋三総理が知らないはずもありません。つまり、この二人は翌日の朝にオウム真理教の死刑囚たちの死刑が執行されることを知っていて、あえて酒盛りをして、その写真を世の中に公開しているのです。これだけ批判されても片山さつきさんがツイートを削除しないのは、うっかりアップしたのではなく、この様子を伝えたいからです。「国民の皆さん、私たちはオウム真理教の死刑囚たちの死刑をしっかり執行しましたよ、お祝いしましょう!」と。仮に本人たちが「そんな意図はなかった」と否定しても、やっていることはそういうことです。


■ 死刑執行がエンターテイメントになった日

この日にオウム真理教の死刑囚たちの死刑が執行されることを、各テレビ局は把握していました。なので、ワイドショーでニュースを伝えるアナウンサーたちは驚くこともなく、ただ淡々とニュースとして伝えていました。さらに、周到に用意されたフリップやVTRでオウム真理教の事件を振り返り、リアルタイムで次々に死刑の執行が伝えられることになったのです。すべての死刑が執行された後で「この方々が執行されました」と振り返るスタイルではなく、速報で次々と「はい、この人が死にましたー!」とやっているのです。これでは死体を晒すことはないまでも公開処刑と一緒です。さっきまで生きていた人がリアルタイムにどんどん処刑されて速報を打たれるのです。こんなことがワイドショーの中で流される国、それが日本です。確かに凶悪な犯罪を犯した人たちなので、憎んでいる人もいるでしょう。しかし、人の命をこんなふうにエンターテイメントにすることに正義はあるのでしょうか。


■ 死刑の執行を喜ぶネトウヨたち

麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚の死刑執行がオウム真理教事件で苦しんできた人たちにとっては「喜ばしいことだ」と考えている人もいるかもしれません。自分の家族、知人や友人が殺されたとあれば、松本智津夫死刑囚の死刑執行は今でも遅すぎるくらいかもしれません。しかし、この事件にまったく関係していない野次馬のネトウヨたちが、この死刑執行を喜んでいる姿を見ると、「人の命」というものが、すごく軽く感じられていることに気づかされます。13万人以上のフォロワーを持つ若手のネトウヨ論客は「安倍に脳をポアされた人たち」などと、「ポア」という言葉を使って嘲笑しました。残念ながら、このような発言をする人が人気を集めているというのが、この国の現実なのです。

あまりに酷いので、このレポートでは割愛させていただきますが、松本智津夫死刑囚の娘である松本麗華さんのTwitterに寄せられた大量のヘイトも、今のニッポンを象徴しています。松本智津夫死刑囚が地下鉄サリン事件で逮捕された時に松本麗華さんは11歳でした。子供は生まれてくる親を選ぶことはできないし、もちろん、当時小学生だった彼女が事件に関与することなどありませんでした。しかし、松本智津夫死刑囚の娘だというだけで投げつけられるヘイトの数々は見るに堪えません。この日本という国では「人権」が守られていないのです。


■ 今回の死刑がどれだけ異例なのか

今回、オウム真理教の死刑囚たち7人の死刑を同日に執行したことは、どれくらい異例なことなのでしょうか。まず年間に執行される死刑囚が7人を上回ることが滅多にありません。過去に上回ったのは2007年の9人、2008年の15人くらいで、年にせいぜい1~3名程度の死刑が執行される程度です。いきなり7人の死刑が同時に執行されるというのは極めて異例なのです。

オウム真理教の死刑囚たちの死刑執行は、本来、慎重にやらなければならない話です。海外からも心配の声が挙がっていますが、オウム真理教はカルト宗教であり、今も「アレフ」「ひかりの輪」「山田らの集団」などの後継団体があり、麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚を「尊師」として崇めているのです。尊師の死刑が執行され、神格化が増してしまう可能性がある時に、6人の使徒たちを尊師とともに同日処刑しているのです。このストーリーを作り出しているのは、他ならぬ上川陽子法務大臣(衆・静岡1区)であるということになります。松本智津夫死刑囚のみならず、他の6人まで神格化してしまう無神経さ。インパクトを優先した結果、カルト宗教のカルト性をより高めてしまう最悪の結果を生み出しているのです。しかも、前日に酒盛りをしたあげくにです。我が国の法務大臣がどれだけ無能なババァなのかがお分かりいただけるでしょうか。
異例なのは、同日に執り行われる死刑の数だけではありません。松本智津夫死刑囚の死刑判決は、東京地裁で言い渡されたものです。なにしろ刑が刑なだけに、本来ならば東京高裁、最高裁と十分に審議をされてから、やっぱり死刑だということで確定するべきものですが、一審の途中で松本智津夫死刑囚の精神がおかしくなり、何も話さなくなってしまったので、審議不能な状態に陥りました。そんな状態でも一審では死刑判決が下されましたが、弁護人が控訴審を開くのに必要な控訴趣意書を東京高裁に提出できず、控訴審が開かれないまま裁判が終了。松本智津夫死刑囚は一審判決の「死刑」の通りに死刑が執行されたのです。松本智津夫死刑囚は、いわば廃人のような状態になっており、刑事訴訟法では死刑執行について「心神喪失の状態にあるときは、法務大臣の命令によって停止する」と書かれているので、本当は松本智津夫死刑囚に死刑を執行することはできません。ところが、オウム真理教の実行犯たちの死刑を執行して、その中心的存在である松本智津夫死刑囚の刑が執行されないのは世間が黙っちゃいないだろうということで、東京拘置所に身柄が移送されてからは「精神に変調があり、風呂や運動について、刑務官に声をかけられると自発的に歩いて行っており、精神的な問題はなかった」ということになりました。本当なのでしょうか。誰も面会することができず、真偽を確かめることができないことをいいことに、東京拘置所に身柄を移された途端に精神が正常に戻るなんて、どんな神パワーを使ったのでしょうか。死刑は国が人の命を奪う行為であり、最も法律に則って執行されなければならないことなのに、都合によって法律が無視され、死刑が執行されてしまう日本は、どの口で「先進国」を名乗っているのでしょうか。


■ 死刑制度が残る国は、世界の中ではマイノリティーである

世界でも「死刑制度」が残る国は少数派です。ご覧の通り、日本は死刑がエンターテイメントとしてワイドショーで報じられたあげく、その娘に罵詈雑言を投げつける国なので、世界からどれだけ野蛮だと思われても仕方がありませんが、日本の世界的な評価は着実に下がっています。アムネスティ・インターナショナル日本「死刑廃止ネットワーク」によると、過去10年以上死刑が執行されなかった国を事実上の廃止国と考えた場合、世界196ヶ国のうち、死刑制度が残るのは58ヶ国となります。つまり、死刑制度がある国は全体の3割程度。およそ7割の国々で「死刑」は存在しないのです。ヨーロッパ・中央アジア地域では52ヶ国のうち、48ヵ国が完全に廃止し、3ヵ国は事実上の廃止状態、死刑制度が残るのはベラルーシだけとなっています。今でも死刑制度が残る国は、アジア、中東、アフリカに多く、メジャーな国では中国、北朝鮮、インド、イラン、イラク、アラブ首長国連邦、アフガニスタン、サウジアラビア、エジプト、ナイジェリアなどです。アメリカはまだ死刑が廃止されていない州がありますが、このあたりは議論の真っ最中です。日本人はすぐ「北朝鮮なんか公開処刑しているじゃないか」と言いたがりますが、極東に唯一残された未開国と比べることがそもそもおかしいわけで、世界のトレンドから考えた時、日本はとっくに「遅れた国」になっています。だからと言って、今すぐに「死刑を廃止するべきだ」と言いたいわけではないのですが、死刑が政治的なアピールとして利用され、法律に則ることもなく、ワイドショーではエンターテイメントとして扱われ、死刑囚の娘にクソリプを投げつけるような人権軽視国が、今のニッポンであるということは、せめて一部の方々にだけでも知っておいていただきたい事実です。バカには何を言っても分からないので、一部の賢い方々だけにでも、これが今の野蛮国家・ニッポンの現状であることを伝えておきたいです。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

こんな国になったのは安倍政権だからなのかと言われたら、そうではないのではないかと思うようになりました。政治や選挙に無関心を極め、まともな倫理観も持たず、人の死をエンターテイメントとして扱えるほどの野蛮な国民ばかりだから、安倍晋三総理が誕生し、水道民営化やカジノ法案といった売国政策が続けられているのではないかと思います。しかも、安倍晋三総理を支えている自民党の若手議員たちまでもが、大雨で被害が出るかもしれない夜に、防衛大臣、復興大臣、翌日に大事件の死刑執行を控えた法務大臣と一緒に酒盛りをしている危機感の無さ。これに怒る人は極めて少数派で、むしろ一緒になって喜び、「日本を守ってくれるのは自民党しかいない!」とか言っているのです。この国の危機的な現状をどれだけの人に気づいてもらえるのか。とにかくこの国は、とてつもなくヤバいところまで来ています。このままでは滅びます。[了]

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