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世界的名所は名前もカッコいい

"名"所だから、名前もカッコよくて当然である。


【国名部門1位】

セントクリストファー・ネイヴィス(英:Federation of Saint Christopher and Nevis)

1位に輝いたのは、カリブ海に浮かぶ小さな島国。その大きさとは裏腹に、およそ200ある国家の中でトップクラスの名前の長さを誇る。グレートブリテン及び北アイルランド連合王国?いいかよく聞け奴は所詮UK。

この国を構成する2つの島の一つ、セントクリストファー島。大航海時代を代表するクリストファー・コロンブスが、自身の名に由来する聖クリストフォルスをもとに名付けたとされる。今急に脳内で「センとクリスとファーーーー」と謎の男二人組との明石家さんまごっこが始まってしまった。もしかすると全然カッコよくないのかもしれない。どうしよう。

クリストファーは、キリストを運ぶ者の意。彼が世界で最も強い者を探し求め、行き着いた師が神の子キリストだった。世界最強にカッコいいわけである。でもまださんまの声が聞こえる。どうしよう。

小さい方はネイヴィス島。寡黙な "n" に "vi" の響きが静かに続く。醸し出される渋い大人の色気。意識を失いそうである。これにはエルサルバドル(El Salvador)もリヒテンシュタイン(Liechtenstein)も敵わない。

ところが、このカッコよさを理解しない不届き外務省の手により、数年前から法令上は「ネイビス」の表記に統一された。クリストファーの短縮形がキッツゆえ「セントキッツ・ネイビス」とも呼ばれるらしい。何がキツいというのだ。全然カッコよくない。本当にやめてほしい。意識を失いそうである。憧れのセントクリストファー・ネイヴィスを返せ。


【水域部門1位】

ジブラルタル海峡(英:Strait of Gibraltar)

ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸を隔てる海運の要衝。地中海の西の出口。"g" と "b" の連続濁音が力強いスタートを切り、"ral" と "tar"の高貴な音の組合せがテンポよく華麗にまとめあげる。美しいことこの上ない。

と思った直後、現地語では「ヒブラルタル」に聞こえるという事実を知ってしまった。死ぬほど弱そうである。

さて、ダーダネルス海峡、ブランズフィールド海峡など、ダンディな濁音連なる海峡は他にも存在する。だがジブラルタル海峡は、この地を構成する岬の名がどれも格別な点で一線を画する。特にトラファルガー岬とスパルテル岬に至っては、「岬」を「神」に空目するイケメン具合だ。

水域には、河川や湖沼を含む。河川なら北米の大河 リオ・グランデ川(Rio Grande)、湖沼なら中東の塩湖 死海(Dead Sea)が比肩するが、いずれも一歩及ばない。なぜか。

理由は明快。リオ・グランデ川は「見送らんで」と関西弁に聞こえてさんまを連想させるからである。見送らんでええねん。何がええねん。

死海はもはや説明不要であろう。司会だからである。またさんまである。死海の塩でさんまの塩焼きである。もう全部さんまのせいである。


【中2病くすぐりすぎ部門1位】

グレート・ディヴァイディング山脈(英:Great Dividing Range)

はいカッコよすぎ。他を寄せ付けない圧倒的な必殺技感。遊戯王カードなら攻撃力3000オーバー、FFⅧ(初代プレステ)ならディスク4枚目に登場すること必至のラスボスである。さんま要素もない。

オーストラリア大陸の東側を縦断する、同大陸最大の山脈。いわゆる古期造山帯に区分され、石炭の産出が豊富で知られる。だがそんなことはどうでもいい。彼はグレートな山脈なのだ。偉大なのだ。

中学校の地理の授業で初めてこの名を聞いたときの衝撃を忘れない。"great" で鼓動が高まり、"dividing" で天を仰いだあの日のことを。

前述した "vi" のクールな響きを挟み、後半だけで4連打も疾走する濁音のカルチェット。羽生結弦の4回転アクセルが世界一美しいと言われるのもこの山脈が理由である。なお、濁音の重要性について疑義が残るという方は、アサヒビールの主力商品が「スーパートライ」であったり、機動戦士が「カンタム」であったらこの世がどうなっていたかをよく考えてほしい。

この点、アフリカ大陸南部に位置するドラケンスバーグ山脈もいい勝負をしている。濁音で冒頭を飾り、最後もしっかり締めくくる見事な3連打。現地語で「竜の山々」を意味するのも高得点である。

しかし、分水嶺を意味する "dividing"(分割)の音が "divine"(神聖)と重なっているのを見逃してはならない。由来の異なる2つの言葉が見せた奇跡のシンクロ。オーストラリアの気候帯や生態系は、この山脈によって東西に分かれている。隠された神の所業にもはやお手上げと言うしかない。

グレート・ディヴァイディング山脈。雄大な分水嶺山脈を装うその正体は、偉大なる神の山脈だったのだ。これにはクリストファーーーーもびっくりである。







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