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願い事一つだけ

散歩中、生まれて初めて流れ星を見た。
夜空を見上げたらちょうど月があって
その横をオレンジと金色を混ぜたような光が
現れたと同時に、サッと光の跡を一筋描いて消えた。


考えていたことといえば
「しあわせってのは瞬間瞬間意識してないと感じられないものだなぁ。常にしあわせでいる努力を怠ってはならんな」
ということだったので呆れる。

もっとこう、なにか込み上げる思いに浸っていたり猛烈になにかを願っていてくれよ。


流れ星が流れた瞬間
願い事を三回唱えれば叶うというのは
そのくらい常に強く願っているということが前提らしいが

私にそんな強い願い事ある?
ないよなぁ、そんなの。


いやいや、本当に?
本当に、本当に、本当〜に、ない?

しつこく問いただしてみたら
実は一つだけ、ちゃんとあることに気づいてしまった。


気づいてしまってすぐに後悔した。
それはだれかの悲しみとか
別れがなければ叶わないことだからだ。


願いを願うことが
同時に誰かの悲しみを願うことにならないのなら、願いたいことはある。

それらすべてをひっくるめ
無邪気になにを願っても許されるのが
流れ星が流れるコンマ数秒の間だったのであれば、私はそのチャンスを逃してしまった。



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