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エンジニアアルバイトの僕が、社内で食パンを配るようになって学んだこと

はじめまして、クックパッドマートの開発チームでアルバイトをしている劉です。現在東京大学理学部で計算機科学を専攻しており、この春から学部3年生になります。


このチームには2018年の11月にJoinし、もう半年近くが経ちました。日々移り変わる新規サービス開発の最前線で働くことは本当に刺激が多く、毎日たくさんのことを学ばせていただいています。
今日はそんな僕がクックパッドマートでやったこと、そこから学んだことを書きたいと思います。

クックパッドマートにJoinしたきっかけ

僕は大学入学以降、サーバーサイドのエンジニアとしてアルバイトや個人開発を行ってきました。世界中の人に使ってもらえるようなサービスを自分の手で作りたい、というのがその主な動機でした。
アルバイトなどで関わってくださった方々の指導もあって、一年半が経つ頃には自分で思い描いた処理をある程度実装できるようになりました。しかし肝心のサービス開発では、頑張って自分で作ったものをなかなか使ってもらえないことが続きました。コードが書けるからといってサービスが作れるようになるわけじゃない、そんなことを強く感じるようになりました。
そんな中、たまたまクックパッドマートのエンジニア募集を見かけました。生鮮品のECサービスという難しい領域で新規事業を立ち上げて挑戦しようとしている人がいる。その中に身を置くことで、コードを書くだけではないサービスづくりが学べるのではないか。そう思い、エンジニアアルバイトとして応募、無事に採用され、このチームで働くことが決まりました。

始めの方にやっていたこと

働き始めたばかりの頃は、サーバーサイドエンジニアとして色々な処理を実装していました。
その中でも開発規模が大きかったのが、提携店舗の皆様への発注書の自動送信です。
クックパッドマートでは、提携店舗から商品を集めて皆さんにお届けしています。そのため、アプリで受けた注文を店舗の皆さんに伝えなくてはいけません。これまではマートチームの皆さんが手動で発注書を送ってこれを実現していました。自動生成されたPDFを店舗の皆さんに自動で送付する仕組みを整えることで、この手間を大幅に減らすことができました。


このシステムで特徴的なのは、LINE WORKS というビジネス用のLINE、そしてFAXと、ふた通りの送信経路を持っており、店舗さんに合わせて使う通信経路を変更していることです。店舗さんの中にLINE WORKSによる送信を希望されない方がいらっしゃったためこのような形式になりました。実際にシステムを使う方々に寄り添って開発ができている気がして、非常に開発を楽しむことができました。

転機

働き始めてから何ヶ月かは、大学の授業との兼ね合いもあって週に1,2回しか出勤できない状態が続いていました。しかし、大学生には2~3月という長い春休みがやってきます。その期間になってしまえばもう働き放題です!
この時間をなんとか活かしたい。もっとサービスの中身自体を考えるような仕事もしてみたい。僕はそう考えて、思い切って事業部長にその旨を伝えました。そして、なんとそれを快諾していただきました。


そこでやることとして提案されたのが、定期購入事業の考案です。
現在、チーム全体で「お客様に継続して利用していただけるサービス作り」が大きな課題として挙げられています。そこで、直接的にその課題を解決できる定期購入機能を中心に、お客様にサービスを継続利用していただくための仕組みを考えることになりました。
「3月末までに新機能を作り、継続ユーザーを10人獲得」というミッションを言い渡され、僕の春休みのプロジェクトがスタートしました。

パン配布生活


少し話は変わりますが、クックパッドマートでは現在、進藤製パンという店舗さんの食パンを取り扱っています。これがクックパッド社内でも美味しいと評判でした。

食パンといえば、日常的に買うものの典型です。 また、
「日常的に買うものが、注文しなくても定期的に届くと楽」
という仮説はかなり自然に思い付くことができます。そこで、「食材を食パンに絞り、毎週定期配送すれば一定数のお客さんがつくのでは?」というアイデアが思い浮かびました。
とはいえ、頭の中で考えているだけではこれが実際にウケるのかどうかわかりません。そこで、実際に定期的にパンをお客さんに届ける仕組みを作ってみて、検証してみることにしました。
システムを作ると時間がかかるので、なるべく手軽に始められる方法での検証が必要です。そこで、社員の何名かの方々にお客さんになっていただき、以下のような方法で検証してみました。


まず、僕が普通にクックパッドマート上でパンを購入します。これは決められた時間になると、クックパッドオフィスのラウンジまで送られてきます。パンには商品識別のための番号のついたラベルが貼ってあるので、その番号をお客さんにダイレクトメッセージで伝えることで、商品を受け渡します。その分のお金は後から僕が直接いただきます。

こうして、一週間あたり10件弱のパンの注文を手動でさばく生活が始まりました。
書いてあるのを見ると簡単そうですが、これが結構しんどかったです。
まず、注文を忘れると話になりません。現在のクックパッドマートでは、配送日の前日の夜には注文が締まっているので、当日になって注文忘れに気づいてももう遅いのです。結果、忘れずに注文するために、僕は期間中Slackに大量のリマインダーを設定していました。


出勤していない日でもリマインダーに注文を急かされるのは正直ちょっと辛かったです。
また、注文していただいていた方には、配送日の朝と商品が到着した直後にSlackでメッセージを送っていました。手で打ち込んでいたので、番号を間違えて伝えるなどのミスが多々発生しましたが、お客さんとなった社内の皆さんに暖かく受け入れていただきました。


と、こんな具合でおよそ一ヶ月間、パンを配る作業を続けました。この期間は、「アルバイトで何してるの?」と聞かれると「食パンを配ってます・・・」と答えていました。

パン配布を終えて

こうして一ヶ月間パンを配り、お客さんに話を聞く中で、二つのことに気づくことができました。


まず、注文しなくても商品が届くとやはり嬉しいこと。僕の定期パン配布を利用してくださった方は口を揃えて「注文しなくて良いのは楽だった」と言ってくださり、ある方は「このまま劉君が続けてくれるなら利用し続けると思う」とまで言ってくださいました。
またそこから発展して、肉や野菜の定期配送でもやはり注文のいらない楽さを多くの方に喜んでもらえそうだ、という感触を得ることができました。


その一方で、「食パンに飽きた」という声も多く聞くことができました。同じものを食べ続けると飽きる、ということは言われてみれば当たり前ですが、毎週一回の配布をたかだか3~4回続けただけでこのような意見が多発したことで、この「同じものを食べ続けると飽きる」という問題を非常に重く捉えることができました。


これらを踏まえて、現在は「複数の食材のコースによる定期配送」という構想のもと開発を進めています。例えばパンの定期配送であっても、食パンがずっと届くのではなく、色々なパンが代わりばんこに届くという形式です。近日中にマートのアプリ上から利用できるようになる予定なので、みなさんぜひご利用ください!

パンを配り続けて学んだこと

ここからは、僕がパンを配りながら定期購入機能を開発し続けて学んだことを書いていきたいと思います。

1. ゴールから逆算してスケジュールを引くこと

僕はこれまで、何かのスケジュールを決めるとき、やりたいことを一つ一つ列挙し、そのそれぞれについてなんとなく時間を見積もっていました。
しかし、どんな作業でも時間をかけようと思えばいくらでもかけられます。やりたいことと終わらせたい時間から、それぞれの作業に使える時間を計算し、その時間の中で作業を進めていくことが大事だと学びました。


例えば今回でいうと、三月末までに「3月末までに新機能を作り、継続ユーザーを10人獲得」というタイムリミットがありました。そこから逆算すると、2月は諸々の検証に使える時間が多くあったため、実際にパンを配るという時間のかかる手段をとることができました。
一方、どうも同じ商品を配り続けると飽きるようだと気づいた頃には、別の販売形態について検証を進める時間はあまり残っていませんでした。そこで、チームの皆さんにアイデアを話しフィードバックをもらうという簡単な方法で新しい形態を固め、次に進むことができました。

2. 一人で悩んでないで人に相談すること

何もないところからサービスを開発すると、「次に何をすればいいか」で悩むことが多くなりがちです。実際、今回の僕も一人で悶々と悩んでいる時間が長くなりました。
しかし、個人の視野は狭くなりがちです。特に経験が浅い状態だとさらに気づかないことが多くなります。こんな時は、素直に経験豊富な方に意見を仰ぐべきだと学びました。


今回も、一つのものを配り続けるだけでは飽きると気づいたあと、どのような形で販売を行うべきかについてかなり悩みました。そこでチームの皆さんに協力していただいて、アイデア出しを行いました。






今回の「複数の食材のコースによる定期配送」というアイデアもここから生まれたものです。一人で悩んでいた時よりも格段に視界がひらけて、人に意見を聞くことの大切さを改めて実感しました。

3. 目的を見失わないこと

サービス開発は、なにかの目的のために行われることがほとんどだと思います。しかし、様々な手段でその目的を遂行しようとすると、だんだんその手段自体に集中してしまって肝心の目的を見失ってしまうことがあります。こうなっては意味がありません。

今回の僕にとって、目的は「クックパッドマートの継続ユーザーを獲得すること」でした。そのための検証として、「食パンを配る」という手段をとりました。
しかし、食パンを配ることに時間をかけすぎるあまり、美味しいパンを配って美味しく食べてもらうこと自体に集中している自分がいました。「毎週食パン食べてたら飽きるのでは?」と感じたときには、パンにつけるものをいろいろ買ってきてどうやったら美味しく食べられるのかを考えたりもしました。

しかし、パンにいろいろなものをつけて食べれば食べるだけ、「僕はなんでこんなことをやっているんだっけ・・・?」という気持ちが強くなっていきました。

そんなとき、社員の皆さんのアドバイスもあり、当初の目的を思い出して、「毎週同じパンを配送する以外の定期配送の形を考える」というアプローチを取ることができるようになりました。手段と目的を切り分けて、手段を変えても常に同じ目的に向かっていくべきだということを学びました。

4. 自分のやっていることに自信を持つこと

今回のプロジェクトを進める中で、新しいアイデアを思いついても、「こんなんでうまくいくんだろうか・・・」と不安に思ってしまうことがたくさんありました。こうなってしまうと、次の行動もなんとなく気乗りしなくて進まないし、人に相談するのも気が重くなってしまいます。
そんな中、チームのサービス開発経験が豊富な社員の皆さんから様々なアドバイスをいただきました。

「ユーザーインタビューなどは自分を確信させるための作業でしかない。最後は自分が行けると思ったことを信じてやるしかない」
「サービス開発で失敗するのは当たり前、失敗を怖がる必要はない」
「絶対に行けるっていう確信ができることなんてない、ちょっとでも行けるかもと思ったら試してみればいい」

これらの言葉を聞いて、「自分なりに色々試して自分なりに行けると思ったことなんだから胸を張って進めていくべきだ。それでダメだったらしょうがない」という気持ちになれました。
それからは、自信を持って作業を進め、新しいアイデアをどんどん試していけるようになりました。自分を信じることは非常に大事だと感じました。

最後に

色々大変でしたが、もう少しでクックパッドのアプリ上で定期購入を利用できるようになるはずです。実際にユーザーをつけるというゴールに向かって、もう一踏ん張り、頑張っていきたいと思います!