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サポーターは地域の大事な生活文化

Jクラブの社長になって、まずはこのテーマを取り上げずにはいられません。
それは、
「サポーターとは何か」
というテーマ。
 
Jクラブのサポーターって、有名な存在。
Jクラブの試合にあまり馴染みがないみなさんは、どんなイメージをお持ちになってますか?
・熱狂的にサッカーが好きな人?
・なんだか怖い人?
・群れをなしている集団?
 
Jクラブのサポーターをされている方は、サポーターってどんな人?って答えると、自分をどう答えるんでしょうか?
「自分はザスパクサツ群馬のサポーターです」
サポーター=応援する人、だけ?
 
サポーターとは一体何なのか?
僕は2019年に初めてクラブの中の人になって、改めてサポーターって何だ?と考えた時に、最初答えが明確に持てていませんでした。
 
そして、いくつか考えてみました。

問い1)ファンクラブと、サポーターって、どう違うの?

例えば、ファンクラブ。
ファンクラブは、
・入会、退会がある
・シーズンごとである(2022シーズン、ファンクラブとか)
ですよね。
つまり、ファンクラブとは、クラブが提供する「プログラム」であり、入会という手続きが必要。
音楽のファンクラブとかなら、先行入場券が買えたり。
限定のグッズが買えたり。
限定の小冊子がもらえたり、ですよね。

サポーターは?
サポーターって、入会するもんじゃない。
「サポーターを退会します」とはいわない。
「サポーターをやめました」とは言う。

「私、ザスパのサポーターをJFL時代から20年やってます」
という自己紹介をする方がいます。
じゃあ、この人は20年間、クラブに名前を登録し続けた人なのか?
違いますよね。
 
そう、サポーターって、
「自分が自分自身の主体的な意志でサポーターになる」と決めた人
なんですよね。

サポーターになるのに、許可はいらない。
サポーターをやめるのも、退会届はいらない。
サポーターは自分でなるもの、やめるものであるんですよね。

これ、不思議なんですよね。
ちょっと難しい言い方をすると、
「サポート=応援」っていう「客体的なポジションや役割」を取りながらも、あくまでも決めるのはサポーター、つまり「主体的なポジションや役割」なんです。
フォロワーでもあり、リーダーでもある。
客でもありながら、主(あるじ)でもある。

だから、本当はサポーターって、
「応援する主役・主体者集団」なんですよね。

だから、実はクラブとも対等、イコールパートナーなんだ、と私は思うんです。


問い2)無観客でも、クラブはビジネスが成立するの?
 
論理的には、ビジネス的には、成立します。
無観客で試合やって、放映権で十分収入が成り立つならば。
あるいは将来何かテクノロジーとかで、みながVRとかで試合観戦して、それで商売が成立するなら。
 
でも、2020、2021シーズン、無観客試合をやった選手たちは、こう言いました。
「こんな試合、二度とやりたくない」
「こんなんJの試合じゃない」
 
どういうことでしょうか?
私たちも、「こんな商売やりたくない」と、実は思ったんですよね。

なぜか?
あれは、「無観客試合」だったのではなくて、「無サポーター試合」だったんだと、後に気がついて。

すごい当たり前のことを、今更気づくなと、怒られそうですが、サポーターがいないスタジアムは、サポーターがいない試合は、選手たちにとっては、Jの公式戦じゃなかった。
僕たちスタッフたちにとっても、そうだった。
 
「応援のエネルギーが直接届かないピッチ」では、プロ選手は、プロ選手にはなれないんです。その役割としての自分が出てこない。
プロクラブのスタッフは、プロサッカーの試合ができないんです。だってそれはサポーターや観客のために、本来は作っているものだから。
そのことに、無観客試合は、気づかせてくれた。

「サポーターは、実はクラブの欠かせない一部だった」
改めてそれに気づかせてくれたのが、無観客試合でした。

3)どうして長年サポーターをやれるのか?

サポーターさんと挨拶、会話をすると、
「サポーター歴20年です」
「サポーター歴15年です。昨年も10回スタジアムに来ました」

と自己紹介されることが、多いです。
あるいは、サポーター仲間さんと会話していて、
「すごい仲良しですが、学校の同級生とかなんですか?」
と聞くと、
「いや、スタジアムで毎年顔を合わせていて、実は仲良くなって」
「たまたま一緒にゴール裏で応援で近くになることがあって、そこから友達になったんです」
「アウェイに行った時に現地であって、一緒に現地で飯を食って、友達になりました」
「twitterでサポーターとしてお互いフォローしあって、スタジアムで会って話をするようになりました」
ということが多いんですよね。
 
スタジアムで会うこと、応援すること、スタグルを楽しむこと、毎年自分が大好きなクラブのことで語り合うこと・・・
 
サポーターとは、サポーター活動であり、人のつながりであり、定着した文化活動であり、生活スタイルになっている。
これ、クラブがある地域に大事な生活文化なんだなぁ、といつも思います。

クラブ社長としてのわがままかもしれませんが、地域にJクラブがある街の方が、人生幸せに生きることができる、そんな気がするんです。
週末にJの試合がある生活と、特に応援しているものがない生活、これも私のわがままかもしれませんが、応援しあう仲間がいて、一緒に応援して、喜怒哀楽を味わって、クラブを酒の肴にして楽しむ、語り合う時間がある街。
そんな街の方が、いいんじゃないかなぁ、って思うんです。

だから、僕は、サポーターさんを大事にしたい。
挨拶をしたい、共に闘いたい。
共に地域の生活文化を共創していきたい。

カターレ富山の左伴社長がこう言ってます。
「サポカンはミニ経営会議だから。」
これって、サポーターはクラブの一部だ、ってことだと思うんですよね。

 実は、湘南の水谷社長も、福岡の川森社長も、すごくサポカンを大事にされている。
クラブの実情をさらけ出して、サポーターの信頼を崩さないようにされている。
海外でも、それは当たり前みたいで。

なので、就任後するに、群馬の現状をさらけ出すサポーターカンファレンスをさせていただきました。

正直、ここまでさらしてもいいのか?と言うぐらい、クラブの厳しい経営状況を、オープンに開示させていただきました。

やる前は非常にどうなることか・・・と不安が大きかったですが、やったあとは、twitterにて「サポカン良かった」「こんなにちゃんと説明してもらえたことは近年なかった」と言う声が聞かれました。

(サポーターさんたちを信じて良かった)
僕はそう思いました。

この私の開示に対して「覚悟がある」と言ってくれた方も多かったです。
それはとても嬉しいこと。
でも、僕はそんなに「覚悟して」という心理は、今回のサポカンでは、なかったんですよ。

普通じゃないかもしれませんけど、「先輩に会いにきた」っていう感覚があるんですよね。
クラブを愛してくれて、支えてくれてきた先輩に、ようやく会える(実はスタジアムの開幕戦でもそんな感じで挨拶に行ってました)。

私は呑気なやつなのかもしれませんが、私の感じ方や、考え方はそうなんです。

<長くなったのでまとめ!>
私の考え方は、
・サポーターとは、「自分が自分自身の主体的な意志でサポーターになる」と決めた人
・「応援する主役・主体者集団」
・クラブとも対等、イコールパートナー
・サポーターは、実はクラブの欠かせない一部だった
・サポーター活動は、クラブがある地域に大事な生活文化
・サポカンはミニ経営会議
・サポーターはクラブを応援する、地域を応援する先輩

長文ありがとうございました。


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