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「一生けんめい、のんびりしよう」

みなさんゴールデンウィークはどのようにお過ごしでしょうか。

僕のゴールデンウィークは、少し仕事があるけれども、基本的にはお休み。旅行の予定も特に入れておらず、「のんびりするぞ!」と思っていたところへもってきて、息子がコロナに罹患。家庭内感染のリスクを考慮して、僕自身も人と食事したり人ごみへ出掛けるのを避けることにした結果、このゴールデンウィークはまるで「のんびり道を究める」が如く、ただひたすらのんびりと過ごしている。

・・・あたかも、のび太の名言「一生けんめい、のんびりしよう」を地で行くような毎日だ。

さて、具体的にどうやってのんびり過ごしているのか。

気候的に良い季節だから、毎日奥さんと新緑あふれる公園へ行って、木陰に設置されているベンチだったり、持参したキャンプチェアに座って、コーヒーやビールを飲みながら徒然なるままに会話したり、本を読んだり。お腹が空いたらテイクアウトした食事を食べたり。昨日からはコロナから復活した息子も参加して、3人で公園でのんびりと過ごしている。

うちから近場には、木陰がたくさんある大きな公園がいくつか

全然違和感なくしっぽりと時間を過ごせる毎日に、奥さんに何気なく聞いてみた。

「うちって、昔からこんなに公園の木陰でのんびりと休日を過ごす生活してたっけ?」

奥さん
「ほら、要はドイツに住んでいた時のビアガーデンとおんなじ過ごし方じゃない」

って言われて、腑に落ちた。だったら、うちの家族が好きな時間の過ごし方だ。

ドイツのビアガーデンでの過ごし方とは、どんなものなのか?それについては僕がnoteを始めた初期の頃に整理した記事を投稿したことがあるので、再掲してみる。ちと長いけど。

---(以下、3年前の記事を再掲)---

ビアガーデン文化から見えるドイツ人の幸福観

今回の前半部分は、ドイツのビアガーデン文化について。後半部分は、そのビアガーデンを通じて浮かび上がってくる、ドイツ人が人生で大切にしていることについて。(*ドイツに住んでいます)

さて、みなさんは「ビアガーデン」と聞くと、何をイメージするでしょう。日本のビアガーデンのイメージだと、「夏の夜に、ビルの屋上に提灯をぶら下げて、そこでおつまみを食べながらビールを飲む」という図が思い浮かぶ人が多いのでは。

ドイツの「伝統的なビアガーデン」(ドイツ語だとビアガルテン)は、南部のバイエルン州を中心に文化として根付いていて、日本のビアガーデンとはかなり違う特徴がある。

バイエルン州の伝統的なビアガーデンは・・・

①いつ行くのか?
春から秋の間、基本的には晴れた日のお昼間が多い。でも暖かい日は、夕方や夜にも人が入る。

②どこで?
緑に囲まれた庭のような雰囲気の場所で。数十人が入る中庭のような空間から、数千人が入る公園のような広い空間まで。たとえ数千人が入る規模のビアガーデンでも、アットホーム感に溢れている。

③誰と?
基本的には家族と、または友人や友人家族と一緒に。木陰に置かれた木の長テーブルと長椅子に座る。

④何をする?
おしゃべりしながら、ビールを飲んだり、食べ物を食べたり。おひとり様でやって来て、本や新聞を読んでいる人も見かける。

⑤ビールについて
日本のラガービルと似ている「ヘレス」が基本。マスと呼ばれる1リットルのジョッキに入って出てくる。なお、ヴァイスという白ビールを注文した場合は0.5リットルで出てくる。

1リットルビールと巨大なプレッツェル

⑥料金
ビールの相場は1リットルで7~8ユーロくらいかな。現地の感覚だと700~800円くらい。ドイツビールだから2杯も飲めば満足できる人は多いと思う。

⑦食べ物について
持ち込みが許可されているので、食べ物を持ち込む人も多い。例えばチーズ、ハム、サラミ、プレッツェル(パンの一種)、サラダ、ナッツなど。

または、ビアガーデンの一角にあるセルフサービスのコーナーで料理を買ってきて食べる。この場合は、鳥の丸焼き、豚肉料理、川魚の串焼き、サラダ、ソーセージ、ポテトなど典型的なバイエルン料理になる。ただ、必ずしも全てのエリアがセルフサービスではなく、給仕してもらえるエリアが併設されていたりする。

⑧バンド演奏
なにか特別な日は、金管楽器の生バンドが出てきて、典型的なバイエルン音楽を演奏することもある。でもみんな、おしゃべりに夢中であんまり聞いちゃいないが。

⑨子どもも楽しめる
家族みんなが終日楽しめるように、子どもは併設されている木製の遊具コーナーで遊んでいる。

⑩良いビアガーデンのポイント
自分にとっては、「大きくて立派な木がたくさん生えていて、充分に木陰がある」ことが重要。自然に囲まれている感が好みなのと、あと自分はドイツ人と違って直射日光にあまり強くないから。みんなそれぞれに「自分の好きなビアガーデン」のポイントがあるはず。

⑪長い歴史が必要
いまある伝統的なビアガーデンは、どれも数十年以上の歴史があるはず。というのも、ビアガーデンは木陰が重要で、大きな木が庭を充分覆うまで成長するには、長い長い時間が必要だから。

といったあたりが、僕の考える伝統的なビアガーデンの特徴。

ビアガーデンにフィットする気候

さて、「ビアガーデン文化がバイエルン州で生まれた理由」は、明らかに気候が関係していると思う。この地域は標高が高いので、夏はカラッと乾燥して、気温が上がる。だから、昼間に木陰に座っていると、サラッとしていて非常に快適に過ごせる。

「食べ物持ち込み可」制度への誇り

あと、ビアガーデンで食べ物が「持ち込み可」となっている理由は、お金がない人たちでも安価に質の高い時間を過ごせるように配慮されている面が大きい。というのも、多くのドイツ人は自国を「お金で幸せを買う国にしたくない」と考えていて、お金があろうがなかろうが、みんな等しく幸せな日常を過ごせるような国づくりを目指している。そしてこの持ち込み可の制度のお陰で、20ユーロ(現地感覚で2,000円くらい)も払えば、終日ビアガーデンで幸せに過ごすことが可能になっている。つまり、この「持ち込み制度」というのは、単なる高い安いの経済性の問題だけではなく、「自分たちが望む『あるべき社会』の表れ」と考えているから、みなさんとても誇りに思っている。

ドイツ人が人生で大事にしているもの

最後に。「ドイツ人とはどういう人たちか」を考える時には、ビアガーデン文化を一つの切り口として説明するのがわかり易いかも知れない。

というのも、ドイツ人は「自分たちが幸せに生きるには何が重要か」という点について、国民である程度の共通認識を持っていると思う。大事にしていることの例は、「家族や友人との人間関係」「心地よい自然」「のんびりと今この瞬間を楽しむ時間」など。更に、こういった基本的で重要な要素は、「あらゆる人たちが平等に享受できる状態であるべき」と考えている。そして、こういった「国民が重要と考える共通な要素」はどれもビアガーデンで過ごす時間に詰まっている。実際、天気のいい日にビアガーデンで過ごしていると、「大事なものは全てここにある」と満たされた気持ちになる。

ということで整理すると、ビアガーデンではあらゆる年齢・性別・社会的地位の人たちが集まってきて、自然に囲まれた気持ちいい環境の中で、家族または友人たちとビールを飲みながらのんびりお喋りしている。自分としては、そうやって人々が思い思いに幸せそうな時間を過ごしている空間を眺めているのが、何よりも楽しく感じる。

---(再掲終わり)---

どう感じられたでしょうか、ドイツのビアガーデン文化に関する記事。

もちろん「幸福とは人それぞれ」なのは事実で、多様性があるもの。

ただ、本当に人間というものは一人ひとりが全く別物で、幸福を感じる要素に全然共通性はないのだろうか。のび太の「一生けんめい、のんびりしよう」とは、世界で唯一、のび太だけの幸福観なんだろうか。

新緑の木陰でのんびりしながら、そんなことをぼんやり考えてゴールデンウィークを過ごしている。

大量の「のび太」たち in ドイツ

by 世界の人に聞いてみた

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