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【3D Print New Normal】StratasysJ8シリーズ透明マテリアルを使った表現アイディア

前回の記事でStratasys J8シリーズ3Dプリンタを用いた本プロジェクトの概要紹介を行った。今回は透明マテリアルを用いた活用のアイディアを出し、実際にモデリング、3Dプリントした結果を紹介したいと思う。

アイディア出し

まずJ8シリーズの機能のうち透明マテリアルに着目して以下の3つのアイディアを検討した。

アートボード 1

Prototyping

アイディアを元に簡単な3Dモデルを制作し、実際にJ8シリーズのプリンターにて3Dプリントを行った。最終の成果物を作る前にJ8シリーズ3Dプリンターの造形モデル制作フローの理解や実際の出力物のクオリティを確認するために必要な要素のみを抽出し素早くプロトタイピングを行った。

01. 3D Window blinds

アートボード 2

01のコピー

透明マテリアル中に透明度の違う白色オブジェクトを挿入し、遮光性・減光度を確認するモデルを制作した。透明のブロック内には薄い板状の白いオブジェクトを複数枚角度をつけた状態で並列させ、3つの行に分けて配置した。各行はオブジェクトの透明度を変化させたものと複数列配置したものを作成し、効果の確認を試みた。

検証での学び
・傾斜角の違いによる減光は確認できた
・白のカラー設定による出力物は不透明度を上げる場合黄色みがかった白になるため、純粋な白の色味を出すのは難しい
・PolyJetテクノロジーの造形手法上積層痕やサポート痕により透明度が失われる部分がある

02. 3D Glaze

アートボード 3

透明マテリアル中に透明度の違うカラーオブジェクトを挿入し、色の重なりによる色彩の変化を確認するモデルを制作した。
透明のブロック内には薄い板状のカラーオブジェクトを複数枚配置し、各オブジェクトに透明度を調整したカラーテクスチャとイメージテクスチャを適応し、効果の確認を試みた。

検証での学び
・カラーテクスチャを適応したオブジェクトはJ8シリーズのドライバーソフトであるGrabCAD print上で最適化されるため、モデリング上で適応した透明度や彩度が意図しない形として出力される(今回は透明感が無いオブジェクトになってしまった。。。)
・イメージテクスチャの適応について、対象のオブジェクトとテクスチャファイルを同一ディレクトリに格納していない場合テクスチャの適応はされない(テクスチャが適応されていない場合は元の色、今回は”白”になる)

03. 3D Brush touch division

アートボード 4

透明マテリアル中に小さな円形のカラーオブジェクトを挿入し、色の重なりによる色彩の変化を確認するモデルを制作した。
透明のブロック内には小さな円柱状のカラーオブジェクトを複数配置し、各オブジェクトにCMYのカラーテクスチャを適応し、効果の確認を試みた。

検証での学び
・3次元上に配置されたオブジェクトにより、角度を付けたときに点オブジェクトの表情が変わり、多様な表現の可能性が生まれる
・02と同じくマテリアルが意図しない透明度と色に出力される。

まとめ

プロトタイピングを行ってみて、まず透明度の高さに驚かされた。通常黄色みが強いものや、体積が大きいと黒ずんで来るものが多い印象がある3Dプリント物の透明樹脂だが、今回はかなりきれいな透明で出力されていていた。

また、今後の制作に必要ないくつかの示唆を得た。
ひとつはオブジェクトに対するカラー情報の付加について、モデリングソフト上で作成したカラーパラメータはRGBで表現されるが、このカラー情報を元にGrabCAD PrintではCMYKWT(J8シリーズ3Dプリンタに接続したマテリアルカートリッジの設定に依存する)のパラメータに自動変換され出力されるため、意図しない色味になってしまうリスクがある。GrabCAD Print上で直接オブジェクトごとに各マテリアルの配合分量を指定することは出来るが、グラデーションやテクスチャオブジェクトの場合は指定ができない。そのため、厳密な色を指定したい場合はドライバソフト側で設定するか、テクスチャのカラー設定を出力物合わせで調整するなどの対策が必要だ。
もうひとつはマテリアルそのもののカラーについて、ホワイトカラーは透明度合いにより元のマテリアルの黄色が浮き出る形になる。そのため期待する白のカラーリングを表現するのは現状では難しい。
上記の学びから、まず前提としてJ8シリーズ3Dプリンターのマテリアル特性とそのドライバソフトウェアであるGrabCAD Printの使用方法について理解を深めることが必須ということがわかった。

次回は今回のプロトタイピングを踏まえて造形の下限サイズの確認や、マテリアル指定による造形など、機能理解のためのプロトタイピングを行う予定だ。

記事中の絵画画像
夜警、1642(the night watch,1642)レンブラント・ファン・レイン
ケシ畑、1881(Poppy field, 1881) クロード・モネ



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