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クリスの物語(改)Ⅲ 第九話 アニムス養成校での特訓

 海底都市でアクアを手に入れてソレーテに無事届けた後、クリスたちはクレアの住む都市“ホーソモス”を訪れていた。
 セテオスでもてなされた後、観光ついでだった。クレアによれば、クレアの父親がクリスたちに一目会いたがっているということだった。

 ホーソモスは地底都市で一番人口が多く、地底世界最大の都市だ。しかしセテオスのような近代的な都市とは違い、宮殿が建ち並ぶ、さながら王宮都市のような街並みだった。

 クリスたちは豪華な宮殿に招かれ、クレアの両親を紹介された。
 クレアの家はホーソモスの君主“ウェインバード家”の血族だった。つまり、クレアは地底世界の王族ということになる。

 クリスたちは宮殿で歓待を受けたあと、ホーソモスの街を案内してもらった。そしてその際、クレアの通うアニムス養成学校も見て回った。

 地底世界の学校は、地上の学校とはまったく違うものだった。義務教育なるものはなく、いつでも誰でも学びたいことを自主的に学ぶことができるし、教えたいものがあれば学校の定める基準さえクリアできれば誰でも教えることができる。
 魔術や体術、ヒーリングから水泳やヨガ、ロッククライミングなどその科目は数えきれないほど多岐にわたる。

 クリスたちが学校を訪れた際、クレアに体術や魔術を教える“ロズウェル先生”と出会った。
 先生の実家が地底世界でも名の知れた魔道具の工房を営む魔法一家であり、クリスがクレアからプレゼントされたミラコルンもその工房で作ってもらったものだった。

 それでクレアが意気揚々とアラルゴンを退治したときの活躍を話したことで、先生がクリスの指導を買ってでた。

 基本的に、地底世界では“敵を倒すために戦う”といった概念はない。
 戦う必要があるとすれば、クリスがアクアを手に入れるためにアラルゴンと対決したように、幻獣や幻影と対峙したときくらいだ。
 したがって地底世界で体術や魔術を学ぶのは、自己のエネルギー調整や自己鍛錬を促すというのが主な目的だ。

 どういうわけか、クリスの潜在する生命エネルギーは人一倍強いらしい。それもあって、ロズウェル先生も興味を持ったようだ。
 そして5次元世界にすでに順応できているクリスは、魔法も扱えるようになっていた。

 それで、クリスは体術や魔術の基礎を先生の下でしばらく教わることとなった。

 サカモト先輩たちに呼び出されて暴力を振るわれそうになった時、難なく対処できたのもこの時の修練の賜物だ。
 それに、ミラコルン発動時の力の調整の仕方も教わっていた。それが、今こうして実戦で役に立ったというわけだ。


第十章 少女の正体

お読みいただき、ありがとうございます! 拙い文章ですが、お楽しみいただけたら幸いです。 これからもどうぞよろしくお願いします!