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ワクチン+検診で、子宮頸がんは怖くない

子宮頸がんの予防には、まず性交渉をもつ前の年代で予防接種を打つこと、そして、定期的に子宮がん検診を受けることが有効です。さらに性交渉のある方はウイルス検査(HPV検査)というものもあります。それらについて、大同病院 産婦人科の高橋千晶医師にいろいろ聞きました。
だれにでもなる可能性のある子宮頸がんですが、予防接種と検診で対処が可能です。どうか、こわがらないで、面倒くさがらないで!(2023年9月8日配信)《子宮頸がんについて・その2》


1~2年に一度は、子宮頸がん検診

イズミン 子宮頸がんは、どんな具合に発症して、進行していくんでしょうか?

タカハシ 前回、パピローマウイルス感染から、細胞が悪性化し、長い年月をかけて変わって最終的にがんができるというお話をしたのですが、がんになる前に「異形成」といって、灰色の、まだ悪性ではないけれどもグレイな段階があって、そのなかで軽度・中度・高度と分かれています。
 高度になると、もう初期のがん、すなわち上皮内がんのレベルと同等なので、「高度異形成」の診断がついたら、まずは子宮の出口を削って本当にがんがないか調べたり、治療も兼ねた円錐切除という手術の適用になってきます。軽度・中等度だったら、そのままでも、しばしば消えてなくなってしまいますので、がん検診をマメにしながら様子見となることが多いです。
 悪性の細胞が皮膚の組織や肉の組織に進むにつれて、1期2期3期4期と、がんが進行していきます。

イズミン どんな症状が出るんですか?

タカハシ 基本的に出血することが多いですね。閉経して数年経ってるけど出血してます、とか、性交渉でちょっと接触するとなんかいつも出血してます、っていうこともあります。まれに出血が全然なくて、がん検診で引っかかったというケースもあります。

シノハラ 診断としてはどのようになるんですか。

タカハシ いわゆる内診をします。膣から子宮の出口あたりの細胞を採取して調べます。それで何らかの異常が出たら、もう少し組織をかじり取るような組織診をして最終診断します。あとは超音波の検査で子宮の形を見ます。この段階で、腫瘤が見える場合もあります。さらにMRIやCTなどで画像を撮ってがんの広がりを観察します。

イズミン 「子宮がん検診」というのがありますが、これで見つかることが多いのですか?

タカハシ そうですね。検診でちょっとおかしな細胞が見つかって精密検査したら初期のがんだったということはありますね。
 「子宮頸がん検診」は、性交渉の経験がある方だったら、そこまでの強い苦痛は全くないので、1年か2年に1回ぐらいは受けていただきたいと思います。名古屋市では20~40歳の方に、2年に1回ワンコイン検診(500円)が受けられるようになっていますし、5年ごとに無料のクーポンも配布されているようです。あと、企業から補助を出しているところが多いですね。
 日本産婦人科学会や厚生労働省も2年に1回ぐらいはとお勧めしていますが、外来に通院されている方なら、当院だと良かったら毎年受けてくださいというお話をしています。

ウイルスがいても心配せず、定期的に検診を受けよう

イズミン ウイルス検査というものがあるそうですが、これはどんなものですか。
タカハシ これは子宮頸がんを作るヒトパピローマウイルスを持っているかどうかを見る検査です。がん検診と一緒におりものを提出して見てもらうという検査ですね。ただ、この検査でウイルスがいなかったら安心なのかと言ったら、そういうわけでもないので、もしいなくても、2年に1回は少なくとも子宮がん検診を受けましょう、と日本では言ってます。逆にウイルスがいても、がん検診が問題なしなら、心配する必要はないということになりますから、ちゃんと定期的にがん検診を受けましょうという結果になります。
 当院でも受けることは可能なので、1回受けてみて、ウイルスがいるかいないかを知っておくのもオススメですし、以後、ちゃんと検診を受けようというモチベーションにはなると思います。当院の健診センターで受けることができます。

イズミン これはどんな人が受ける対象と考えられるんですか。

タカハシ 私もあなたも!どなたでも、がん検診を受けようっていうときに一度やってみて、パピローマウイルスをチェックすればいいかと思いますし、絶対受けなきゃダメという検査ではありませんが、感染してるってわかったら「来年も一応やっとこうかな、がん検診」という考え方になるかなと思いますよ。

シノハラ 性交渉のある方はウイルスを持っている可能性があるわけですから、そういう方は一度受けてみてもいいかなということですね。

タカハシ がん検診と一緒に、痛くも痒くもなく一緒に調べられますので。

子宮頸がんの治療について

シノハラ 子宮がん検診で子宮頸がんが見つかったとなると、やはり手術ですか?

タカハシ その人の年齢や状況などによりますが、基本的にはやはりがんなので取り除くんですね。ただお産をする前だったりすると取り除くわけにいかないので、出口だけを削る手術で済むならそうしますし、あと子宮の頸(くび)の部分だけを切り取る手術も、大きな病院なんかではやったりしてます。
 でもやはり年齢が進んで、もうお産が終わっているような世代だったらば、もう子宮を取ってあと、卵巣、卵管も一緒に、リンパ節などを一緒に取るという手術をしますし、その後、抗がん剤を使ったり放射線治療したりということもあります。もっと年齢が上で、手術を受ける体力がないときには、ステージ・進行具合にもよりますが、最初から放射線だけを選ぶ場合もありますね。

シノハラ この子宮頸がんというのは早期発見すれば、治る確率が極めて高いというふうに考えていいんですか。

タカハシ そうですね、どのがんも一緒かなと思いますけど。早く見つけて、上皮内がんから1A期であれば、5年生存率は90%以上です。あとは忍容性温存といって、子宮・卵巣を残すという必要もあります。
 とにかくまずはワクチンを受けて防ぐ。そして、ワクチンを受けた方も受けてない方も、ウイルスがいようがいまいが、定期的ながん検診を受けることをオススメしています。

イズミン そうやって早期発見・早期治療に繋げてくってことですね。高橋先生、どうもありがとうございました。


ゲスト紹介

高橋 千晶(たかはし・ちあき)
大同病院 産婦人科部長。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。
医師が死亡診断書を書くのは当たり前。でも「出生届」を書けるのがいいと、産婦人科医を志す。思いやり深く、サバサバした感じが患者さんに人気。コロナ前はママさんバレーにチャレンジしていたが手指を脱臼骨折して最近はゴルフをたしなむ。深夜のローカル番組「道との遭遇」(CBCテレビ)にはまるなど、マニアックな側面も見せる。



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