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大切な思いを、大切に届けたい。

日々クライアントと向き合うなかで、「思いの届け方」についてよく考えます。

生活していると、「誰かの思いによって心を動かされる」ことがたくさんあります。つり革広告を見て、旅に出たいと思ったり。ブランド理念に共感して、サービスを選んだり。Webサイトを見て、お店に行きたくなったり。こんなふうに心が動くのは、誰かが思いをかたちにして届けようとしてくれたからであり、それが、自分の心に届いたからです。

届けたいことを、届けたい人に届ける。それは当たり前のようでいて、とてもむずかしいことです。
思いが全くない人はいません。誰もが、何かしらの思いを抱いています。けれど大抵の場合、言語化されることはありません。感情に対して、ことばの数はあまりにも少なすぎます。

でも、「ことばにできない」と言われる領域に潜り込んで、最適な表現を見つけるのが、ライターの仕事だと思っています。ことばにならなければ、その思いは伝わることがありません。大切な思いだからこそ、ちゃんとかたちにして届けたい。「思いを届ける」を、ただの理想で終わらせたくない。そう思っています。

今回は、私が普段、制作方針を決めるときに意識している「思いの届け方」を紹介します。この記事も誰かに、あなたに、届いたら嬉しいです。


思いの届け方

意識しているのは、次の5つのステップです。

①思いの中から、価値を見つける
②複数の視点で、価値を考える
③存在意義を言語化する
④届け方を考える
⑤届ける

①思いの中から、価値を見つける

まずは、クライアントの思いを理解し、価値を見つける必要があります。ことばは人間の感情をすべてかたちにしてくれるわけではありません。でもことばにはたしかに、そのひとが抱く思いが現れます

クライアントの話を一番そばで聞くからこそ、どんな思いも大切に受け取りたい、その人にしかない価値を見出していきたい、そう思っています。

では、「その人にしかない価値」とはなんでしょう。
「世の中にはこんなにサービスや商品があふれているのだから、唯一無二のものなんてないのでは」と思われる方もいるかもしれません。もちろん、同じサービスを行っている会社も、似た理念を持っている会社もあります。
でも、それを行っている人は違います。その人がその人であることが、まず絶対的な「価値」なのです。たとえ同じサービスを提供していても、つくる人が違えば、価値も違ったものになります。

人は、一人として同じではありません。あなたがあなたであること、まずそれが唯一無二のらしさであり、価値

その前提を持ったうえで、独自の価値を導き出します。


②複数の視点で、価値を考える

価値を理解できたからといって、それをそのまま伝えればいいわけではありません。「この商品やサービスは、誰にとってどんな価値があるのだろう」と、客観的な視点を持つ必要があります。

人には一人ひとり生活があります。基本的には、自分のことで精一杯。新しい情報が入る余地は、ほとんどありません。自分にとって必要ない情報は、ただのノイズになってしまいます。

届ける側はつい、「自分の商品やサービスは、必要とされるべきだ」と考えてしまいがちです。しかしコミュニケーションは、届ける側と受け取る側、両方がいて成立するもの。受け取る側が今どんな状態で、どんなことを考えていて、どんなことを望んでいるかを考えて初めて、コミュニケーションが成立します。それが、「届ける」ということです。

客観的にクライアントの価値を見つけるために、エルでは競合調査や市場調査、UGC調査、ときに文献調査などを行います。いろんな視点で見ると、主観だけでは気づかなかった、クライアントの価値が見えてきます。クライアントが思う価値と、お客様の思う価値が異なる場合もあります。
どんなところを評価されているか、それらの評価と自己評価に乖離がないかを見極め、届け方を考えていくことが大切です。

価値のないサービスなんてありません。意味のない商品なんてありません。どこかの誰かが必要としているから、この世に残り続けることができます。だからこそ、自分の提供するものが、誰にとってどんな価値があるのかを、しっかり整理することが必要です。


③存在意義を考える

存在意義ということばを使うと、途端に大きな話に聞こえるかもしれません。でも私たちはみんな社会に生きていて、何らかの影響を与えあっています。出会う人や情報によって、人生は変わります。

でも、誰もが普段から「存在意義」を意識しているわけではありません。
クライアントに、「あなたの存在意義はなんですか?」と質問しても、答えが得られるわけではありません。急にそんなこと聞かれたら、私はどきどきしちゃいます。

でも、普段どんなことをしているか、どんな人と関わっているか、どんなことを大切にして、どんな未来を思い描いているか。そういった話の端々から、自ずと存在意義は見えてきます。自分では自覚することが難しくても、話すうちに、その輪郭が見えてくるのです。

存在意義は意識されていなくても、誰しもが必ず持っています。それを見つけて、見えるかたちにするのが私たちの仕事です。「これだ!」と思うことばが見つかって、クライアントが「そう、これだよ!」と喜んでくれたとき、視界がとても晴れやかになります。

情報があふれる社会で昨今、「ブランドの在り方」が重視されるようになってきています。このブランドは社会に対して、どんな影響を与えているのか。ブランドの理念に対して、自分は共感できるのか。そういったことが重視されるようになっています。そのためこれからは、自分たちの存在意義をしっかり定義すること、それを適切なかたちで伝えることで、共感してくれる人との接点を持つことが、さらに重要になってくるのではないでしょうか。


④届け方を考える

いよいよ、届ける段階に入ります。どんな媒体にするか、どんなデザインにするか、どんなコピーにするか。クライアントにとって最適な届け方を考えていきます。
意識するのは、次の3つです。

・相手は今どんな生活をしている?
・どんなときなら届くか?
・相手にどうなってほしいか?

どんなに「届いてほしい!」と思っても、相手がそれを必要としていなければ届きません。

届けたい相手が、今、どんな生活をしていて、どんなことに悩んでいて、どんなときにうれしいと感じるのか。メッセージが目に入るのは、疲れたときなのか、頑張りたいときなのか。そういったことを丁寧に考えていきます。

このとき、私はいつもペルソナをつくるようにしています。それは、妄想であってはいけないし、自分にとって都合のいいペルソナであってもいけません。話を聞いて、調査して、いろんな人のデータを入れたうえで、想像力を働かせます。そして生まれた「一人のペルソナ」になりきって、「今、どんなものを求めているか、どんなメッセージなら心に響くか」を考えます。この人物はどのように意思決定して、どのような幸福観で生きているのか。そういったことがわかると、適切な届け方が見えてきます。


⑤勇気を出して届ける

最後に、かたちにした思いを届けます。これはとても、勇気が要る作業です。

本当に届くだろうか。正しく届くだろうか。どう思われるだろうか、変な受け取られ方はしないだろうか。私はいつも悩みます。いつもどきどきします。

「届ける」ときに大切なのは、ちょっとの勇気だと思います。自身の価値、存在意義と向き合い、届けたい相手と向き合い、大切にかたちにしてきた過程があれば、その勇気を振り絞ることができる気がします。

そうして世に出したものが、人々の目に触れて、行動を起こしてもらったとき、初めて「届いた」と言えるのではないでしょうか。求人サイトのメッセージを見て、応募してくれた。デザインに惹かれて、商品を手に取った。理念に惹かれて、ブランドのファンになった。こんなふうに、思いを受け取った人が行動してくれることこそ、私たちが目指すゴールだと思っています。


人を動かすのは、人の思い

結局人を動かすのは、人が持つ思いなのではないでしょうか。人にはそれぞれ感情があります。だからこそ社会には、たくさんの価値が溢れています。そんななかで、自分が必要としている価値と出会えることは、届ける側にとっても受け取る側にとっても、幸せなことなのではないかと思います。

だからこそ私は、クライアントの「思い」に、真剣に向き合っていたいです。あなただけの価値を見つけて、届けたい人に向けて、しっかり届ける。そんは存在でありたいと思っています。

私たちはコンセプトづくりの部分から、「らしさ」をかたちにするお手伝いをしています。ぜひ、お声がけください。この思いも、必要としている誰かに届きますように。


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