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採用サイトは、「らしさ」と「らしさ」をつなぐもの。

よく、採用サイトの相談をいただくことがあります。そのたびに私は、新卒就活時代、「とにかく何もかも不安で仕方なかった」ころのことを思い出します。

自分を受け入れてくれる会社はあるんだろうか、入りたい会社に必要とされていなかったらどうしよう、自分にどんなことができるんだろうか、そもそもちゃんと仕事ができるだろうか、続けていけるだろうか…

出典:当時の私

いろいろなことが不安でじたばたしていましたが、根底にあったのは「私は働くことで、幸せに生きていけるだろうか?」という不安だったのだと思います。社会人になって自分が採用サイトに関わるようになってから、「採用する側も不安なのだ」と気がつきました。

採用の目標は、やみくもに多くの人を採用することではありません。自社とマッチして、生き生きと働いてくれるひとりと出会うことです。
就活の目標は、どこでもいいから内定を取ることではありません。自分らしさを活かし、働くことが幸せにつながる場所と出会うことです。

つまり、企業の「あなたが働いてくれると私たちもうれしい」、求職者の「ここで働けると私もうれしい」、互いの思いが一致している状態こそが、理想のかたちではないでしょうか。

エルに採用サイトの相談をいただいたからには、「会社らしさ」と「あなたらしさ」をつなげられるようなものを、一緒につくりたいと思っています。
今回は、私たちが思う採用サイトの役割と、つくり手としての考え方をご紹介します。




採用サイトは、求職者の不安を解消するためのツール

採用サイトは、ただ目立たせればいいというわけではありません。面白い切り口や斬新なアイデアももちろん大切ですが、それが会社らしさと乖離していれば、求める人物には届きません。

採用サイトの大きな役割は、求職者を安心させることだと思っています。

そのために必要なのは、採用サイトだからこそわかるリアルな情報
よっぽど知名度の高い企業でない限り、求職者が直接採用サイトに訪れることは稀です。大抵、就活ナビサイトや説明会、学校の求人募集等から企業の存在を知ってからサイトを訪れます。しかし、そこから得られる情報には限りがあります。

たとえば、就活ナビサイトに「社員の仲がいい会社です」とだけ書かれている会社があったとします。それだけでは、「本当かな…」「実際どんなふうにコミュニケーションを取っているのかな…」といった不安は拭えません。
「仲がいい」の定義は、会社によって異なります。社内イベントやサークル活動が盛んなのか。年齢関係なく、気さくに話せる雰囲気なのか。一定の距離がありつつも、何かあればすぐ相談しあえる空気なのか…。「仲がいい」がより具体的になると、求職者は「ここは自分に合う/合わない」の判断をしやすくなります。このように、より具体的な情報を伝えることで求職者の不安を払拭することが、採用サイトの大きな役割です。

つい、自社の魅力や熱意を伝えることを第一にしがちですが(それももちろん大切です)、まず意識すべきは「就活生が今、何に不安を感じていて、それを解消するにはどんな情報を掲載すればよいか」という視点です。この視点で考えていくと、どんなことを、どんな表現で伝えるべきかがおのずと見えてきます。


ほしい「誠実な人」はどんな人?

不安を解消するにはまず、クライアントが求めているのはどんな人なのか、その姿を明確にする必要があります。
クライアントに「どんな人がほしいですか」と質問すると、たいてい「誠実な人」「熱意がある人」など、プラスな答えが返ってきます。当たり前です。みんな、誠実でない人よりも誠実な人がほしい。しかし、自社にフィットする人と出会うには、「誠実さ」をもっと深堀りしなければなりません。

同じ「誠実」ということばでも、どんな人を誠実と捉えるかは、企業によって異なります。この視点が欠けていると、求める人物像の輪郭が曖昧なままになり、結果、ミスマッチにつながってしまう可能性があります。

たとえば、以下のような2つの企業と、ひとりの求職者がいたとします。

A社 
求める人:誠実
求める誠実さ:言われたことを実直にコツコツやってくれる人。おとなしい。優等生タイプ。

B社 
求める人:誠実
求める誠実さ:言われたこと以上に、自分からぐいぐい動ける人。リーダータイプ。

求職者Cさん 
自己分析:誠実で真面目
性格:自身が前に出るより、周りを支えることが好きなタイプ。まめな作業が好きで、レポートの締め切りは破ったことがない。言われたことを丁寧に、間違いなくこなすことのほうが得意。

この場合、Cさんの持つ「誠実さ」が求められるのは、B社よりA社だと考えられそうです。もちろん、B社の雰囲気でこそ、力を発揮できる人もたくさんいます。誰が間違っている、劣っているということは決してありません。組織にも人にもそれぞれ「らしさ」があり、それが重なることが「いい出会い」なのだと思います。

求める人物像を明確にすることは、採用面接にも役立ちます。その解像度が高いほど、どんな質問をすべきなのか、どんな答えを「うちの求める誠実さだ」と捉えるかの基準がはっきりするため、マッチする人を見落とさずに済みます。

私たちは採用サイトをつくる際、こういった採用戦略まで一緒に考えたいと思っています。それが結果として、その会社にしかできない表現につながっていきます。


不安を拭うには、どんなコンテンツが必要?

求める人物像が明確になると、「彼らが今何に不安を感じているのか、どういう情報を欲しているのか、どんなメッセージが心に響くのか」を、具体的に考えられるようになります。

たとえば、こんな人を「求める人物像」として定義したとします。

新卒(性別問わず)
・営業志望
・数字を追い求めるより、お客さまに寄り添う営業がしたい。個人よりチームで協力したい
・ひとつの場所で、安定したキャリアを築いていきたい
・ライフステージが変わっても、生き生きと働きたい
・後輩から頼られる先輩になりたい

ここまで明確にすると、彼/彼女が抱えうる不安が見えてきます。

想定される不安①
無理な営業はしないか?ノルマをどれくらい重視しているのか?

企画案
・面接では聞きづらいQ&A
・営業職の一日
・社員インタビューで「やりがい」と「大変なこと」を掲載

想定される不安②
結婚や出産のあとも、問題なく働けるだろうか?子育てと両立するための福利厚生は整っているだろうか?

企画案
・産休や育休等の福利厚生を前面に押し出す
・実際に制度を使った社員の声
・子育てしながら働く社員のインタビュー
・社員紹介に、肩書と合わせて勤続年数を載せる
・若手だけでなく、中堅やベテラン社員との関わりがわかる写真を使う

このとき大切なのは、嘘をつかないことです。
安心してもらいたいからといって、嘘の情報を掲載してはいけません。それは、「らしさをありのままに伝えることで、いい出会いにつなげる」という目的に反しています。入社後にギャップや不信感を抱かせ、ブランドイメージを毀損することにもなってしまいます。

とはいえ、魅力として押し出せる制度が十分でない場合もあるかもしれません。求職者に不安を与えかねない状態であるときは、会社の制度自体を見直すことも視野に入れる必要があります。たとえば、「福利厚生改善プロジェクト」として、その過程を発信するのもいいかもしれません。嘘や誇張でよく見せるより、すべてプラスでなくてもありのままの姿を見せたほうが、求職者からの信頼は厚くなります。「それでもここで働きたい」と思ってくれるような、本当に志望度の高い人を見抜くこともできるかもしれません。

働く人の幸せを願うのであれば、自然と働きやすい組織になっていくはずです。そしてその姿勢は、サイトからも伝わるはずです。

【まとめ】採用サイト コンテンツの考え方
・求める人物像を、数段階明確にしたうえで
・その人がどんな不安を抱いているか調査、仮説を立て
・「不安を払拭し、働くイメージを持ってもらうにはどんなコンテンツが必要か?」を考える


「この会社でしか作れないコンテンツ」はなにか?

採用サイトの鉄板である社員インタビューやQ&Aも、会社によって内容や伝えたいこと、メインに押し出したいことは異なります。そのため、王道コンテンツをつくる場合でも、ただ「こんなんがあればいいでしょう」ではなく、「この会社にしかつくれないコンテンツは何か?」を考えるようにしています。

いくつか、エルの事例を紹介します。

長野県信用保証協会さま

伝えたかったのは、真面目で誠実でありながら、そのなかで個性を活かして働く社員がたくさんいるということ。青系統のいろいろな色を使うことで、協会の雰囲気を表現しました。
また、年齢や性別問わず和やかな雰囲気で働ける環境を伝えるために、若手・中堅・ベテラン社員男女5名の方にご協力いただき、座談会を実施しました。

デザインコンセプトは「あなたの色で、支える」。
長く安心して働ける環境であることを、現場の職員に語ってもらいました。


長野安全自動車さま

マッチする人物として挙がったのは「車好きな人、機械いじりが好きな人」。そこで、社員インタビューの際に「あなたのお気に入りのパーツ・作業」を聞き、そのシーンを記事に使用しました。機械好きな人が魅力を感じてくれるよう、工場の写真もふんだんに使用しています。

※後日、新たに二人の採用が決まったとうれしいご連絡がありました。

ニッチだけど、刺さる人には刺さるコンテンツ。
ロケハンに同行したハラも、少年のように目を輝かせていました


Raicho.incさま

採用課題のひとつ「移住のハードルを高く感じさせてしまう」を解決すべく、かなり具体的なQ&Aを掲載。質問内容は、事前にスタッフに「実際どんなことが不安だったか」「暮らすうえで知っておくべきことはなにか」をヒアリングして作成しました。スタッフの顔アイコンを使うことで、より安心感を感じてもらえるようにしています。

実際に乗鞍で取材。具体的な情報を載せて不安を払拭するとともに、
「なんとかなるから大丈夫だよ!」という温度感で背中を押します


エルの社内広報記事

これは採用サイトではないですが、エルに入社して間もないころに書いた日記です(初々しい!)。エルらしい雰囲気を現場目線で伝えることで、将来の採用につながればと思いました。定期的に「らしさ」と「リアル」を伝えていくことも、採用活動には大切です。


「らしさ」と「らしさ」をつなぐのが、エルの目指す採用サイトです

採用は「ご縁」だといいます。

いろいろな人、企業があるなかで、「あなたと出会えてよかった」と思える縁を得るのは、とても難しいことです。何を幸せと考えるかも、人や企業によって異なります。企業が掲げる条件や理念が、すべての人に合致するわけではありません。

でも、「らしさ」を正しく発信していればきっと、出会うべきタイミングで、出会うべき存在に出会えると信じています。

エルでは、「らしさ」と「らしさ」をつなぐ採用サイトを、これからもつくっていきたいと思います。いつかの素敵な出会いにつながるように、いいご縁が生まれるきっかけになるように。



【お知らせ】
エルでは、一緒に「らしさ」をデザインしてくれるデザイナー/アシスタントデザイナーを募集中です!お気軽にご応募ください。

デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするWeb制作会社です。
Webサイト制作やグラフィックデザインのご依頼やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。





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