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「お祝いの松の木」#虹のくじら

宇宙を落ちてゆくゆめを見た
たしかにわたしは手をつないで
あのひとと落ちてきた
まっくらな宇宙空間を
星がちいさく瞬くなか
わたしとあなたは
モモンガみたいに 両手両足をひろげて
手と手をとりあって
どんどん どんどん 落ちていく
眼下には 地球という おおきな惑星が見えた
もう時間はない でもスローモーションのように
星がちいさく瞬くのを
「きれい」
「きれいだね」
わたしたちはロマンチックに見つめあう
ぎゅっと手をにぎりあって 宇宙を落ちていく
「ねぇ、わたしたち、地球に着いたら 覚えてられるかな」
「覚えてられるよ」
「ほんと?」
「もちろんだよだってこんなになかよしなんだよ?」
「そうよね」
「そうだよ」
そうあなたは言ったのに
やっとあなたと出会ったら わたしのこと覚えていなかった
居酒屋でそんな話をしてみたら
あなたは「へぇ」と言って 否定をしなかった
いつもなら「またそんな、馬鹿話!」と そっぽを向くのに否定はしなかった
わたしたちは夜の松林を歩いた
宇宙のような松林を歩いた
冬の張り詰めた空気の松林は
宇宙そのものだった
手をつなごう
もうすぐ年が明ける



『虹のくじら(美術出版社)』に収録されている内容です。

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